宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

宙域散歩(23) リーヴァーズ・ディープ宙域

2014-06-04 | Traveller
 これまで紹介してきたのは、帝国(第三帝国)という安定した巨大国家の領内、逆に268地域星域やアウトリム・ヴォイドといった独立星系群でした。今回紹介するリーヴァーズ・ディープ宙域はその中間、俗に「小帝国(Pocket Empire)」と呼ばれる中小国家が林立し、その周囲を帝国、ソロマニ連合、アスランといった「列強」が取り囲む、というこれまた違った趣きのある宙域です。
 この宙域はまず1981年にMarischal Adventures社から「スコティアン・ハントレス号」シリーズのシナリオが発売され、続いて1982年からFASA社の『Far Traveller』誌で関連記事の掲載が始まり、本家GDWからもハントレス号シリーズのシナリオ『侵略の夜(Night of Conquest)』が出ました。Gamelords社からは1983年から84年にかけて設定やシナリオが数々出版され、その後はSword of the Knight Publications社の『Traveller Chronicle』誌で設定の連載が行われたり、1999年にCargonaut Press社から幻のサプリメント・シナリオなどをまとめた『Lost Supplements Collection』が出るなど、息の長い(というかKeith兄弟の情熱とも執念とも言える)サポートが続いていました。他にも『Travellers' Digest』誌のグランドツアー第16話の舞台となったり、JTAS誌やGURPSやT20でも異星種族設定が紹介されるなど、和訳資料は少ないですがその設定量はかなりのものになっています。
 今回からは、そんなリーヴァーズ・ディープ宙域のディープな魅力を少しでもお伝えできたら、と思います。ただ、この宙域に関してはシナリオ等で本格的に動き出すのが1108年以降、多くの設定は1115年視点のものとなっています。いつものように1105年設定に変えるのは不可能ではないですが、国境線やトラベルゾーン指定の変更問題に加え、シナリオのネタになりそうな美味しい事件が減ってしまうこともあり、あえて「1115年設定」で記述しています。ただし1108年以降判明したいくつかの新事実については、意図的に伏せています。


 大裂溝に面したリーヴァーズ・ディープ宙域は帝国の最辺境の一つであり、アスランやソロマニ連合との緩衝地帯でもあります。これら列強国の狭間には様々な独立中小国家や中立星系が存在し、様々な勢力の思惑がうごめく、魅力と危険が背中合わせの宙域です。
 宙域のその名前は、暗黒時代に様々な《略奪者》たち(Reavers)がこの宙域、そして周辺宙域を荒らし回っていたことから付けられました。《略奪者》たちは暗黒時代の終わりとともに拡大を始めた第三帝国やアスランによって歴史の中に封じられていきましたが、現在でもこの宙域に多数ある中立世界は海賊や犯罪者の隠れ家であることは否めません。


【宙域史】
 リーヴァーズ・ディープ宙域の古代史はほとんど判明していませんが、少なくとも他の宙域と同じく、30万年前には太古種族が活動していたと考えられています。その痕跡は各地の遺跡や遺物、最終戦争の傷跡、テラから持ち込まれた群小人類たち、そして彼ら太古種族の末裔であるドロインの存在に見ることができます。
 太古種族が去り、再びこの宙域が動き始めたのは-2600年頃でした。衰退と腐敗の過程にあった第一帝国の辺境の総督は自らの覇権を維持拡大するために、内密に国境外世界から「蛮族」の傭兵を雇い入れ始めました。現在のダイベイ宙域にあたるランキシダム属州の総督も例外ではなく、将来の謀反を企図してディープ方面へ探検隊を送り込みました。そこでヴィラニ人は、当時TL7に達していた知的種族サイエと接触したのです。
 目的に適ったサイエ文明に対しては極秘裏に技術供与が行われ、武器や宇宙船を作る能力を彼らは得ました。しかし総督の野心は露見し、罷免された上で処刑されました。その結果、サイエの存在は帝国内では闇へと消えてしまいました。一方、サイエ文明に送られた派遣団は帰国することができなくなり、そのまま留まって彼らに技術供与を続けました。
 攻撃的で拡張主義的なサイエは、得た技術を用いてカレドン、リフトリム、ナイトリムの各星域に広がる小帝国を一時は築きましたが、やがて拡大し過ぎた彼らは大規模な内戦に突入し、滅亡しました。各地に広がったサイエ文化は跡形もなく消え、サイエの存在は彼らが征服した種族の神話伝承の中に封じられました。
 次にディープに人類が足を踏み入れたのは、ヴィラニ人と「地球人」が衝突した恒星間戦争の末期から「人類の支配」(第二帝国)の時代にかけてで、ディープはソロマニ人によって探査され、いくつかの世界に植民が行われましたが、多くの世界は無人のままでした。やがて第一帝国の負の遺産を抱えた第二帝国も崩壊して暗黒時代が始まると、孤立したわずかな最先端地域を除き、恒星間政府と通商は失われました。
 《略奪者》がこの宙域に現れたのは、そんな時代でした。彼らは初めは数隻の宇宙船をかき集めた小規模な海賊団に過ぎませんでしたが、やがて後進世界の略奪などを繰り返すことで小帝国化していきました。最盛期にはダークネビュラ、マジャール、ソロマニ・リム、アルファ・クルーシスの各宙域にまで襲撃範囲を広げていた《略奪者》たちでしたが、-1118年のヤロスラフの戦いを境に衰退に転じ、アスラン国境戦争(-1120年~380年)の開戦によって強大なアスランとの交戦リスクを避けるようになったこともあり、周辺宙域に数々の伝説を残した彼らは次第に消えていきました。「ブラックジャック」デュケイン("Blackjack" Duquesne)、「淡紫の」ウー・ルー(Orchid Wu Lu)、「乱暴者」アリソン・マードック(Alison "Hellion" Murdoch)といった著名な《略奪者》たちは、後に多くの(史実より美化された)書籍やホロドラマを生み出しました。
 暗黒時代が終わりに近づくにつれてスピンワード方面からアスランが、100年頃にはトレイリング方面から第三帝国がこの宙域に進出してきました。両者の船は探査と征服を繰り返し、380年のフトホルの和約によって緩衝地帯が設けられるまで衝突を続けました。
 現在のディープはいくつもの勢力に分断された宙域となっています。アスラン、およびアスランの従属国は宙域のスピンワード/リムワード方面の端に存在します。帝国は緩衝地帯を挟んでコアワード/トレイリング方面にあります。ソロマニ連合に属する星系はファールナー星域の一部に広がっています。しかしディープの中心部は独立しているか、もしくは宙域の2大国家であるカレドン公王国かカーリル合集国の影響下にあります。ディープを取り囲む列強国の影響はなくはないですが、この辺境宙域には外部干渉からの自由を謳歌する、面白くも危険な伝統が染み付いています。


【知的種族(人類)】
アヤンシュイ人 Ayansh'i
母星:ゴースト(3115)
 太古種族によって樹林溢れるゴースト星系に持ち込まれた彼らは、第二帝国期に他の人類との「接触」を果たしています。そしてその後の暗黒時代を経ても彼らの文化はほとんど変化せず、87年に帝国偵察局が再接触した際には来訪を歓迎した、と記録されています。
 平均体重70kg程度と痩せ型の彼らは、目の95%を虹彩が覆っているので、母星の照らすわずかな光の中でも良好な視界を得ることができます。また彼らはヴィラニ人以上の250年の寿命を持ち、双子出産は普通のことです。これらの特徴は自然進化によるものではなく、太古種族による遺伝子操作の可能性が考えられ、実際彼らは他の人類と交配することができません(ただし彼らはこれらを「我らの先祖が選んだこと」と主張し、現在も学術調査を許可していません)。
 彼らは独自の言語を保有していますが、それは他の人種の前ではめったに話されません。彼らは自分たちの言語の秘密を守るために、他の言語を非常によく学びます。そのため訪問客に対しては、訛りのない訪問客の自国語で応対しています。
 アヤンシュイ人の美術は帝国では非常に高く評価されており、ダイベイ宙域を通じて帝国中に輸出されています。彼らはめったに母星の外には出ませんが、顧客の熱心な説得に折れて星系外で作品制作をすることもあります。有名なものでは、ワリニア(ダイベイ宙域 0507)の公爵庭園の造園や、ソル大公所有の『季々の笏(The Scepter of Seasons)』、キャピタル(コア宙域 2118)の皇宮の『クシウム・マタリ(K'sium Matari)』を手がけています。なお作品が完成し次第、必ず彼らは速やかにゴーストに戻ります。
 アヤンシュイ人の遊牧社会には、アヤタ(Ayata, 生活界)とインチャタ(In'chata, 精神界)の2つの概念が存在します。アヤタの全てはインチャタの現れとみなされ、女性の預言者(Oracle)とパツァイター(Patza'itah, 預言者の弟子)のみがインチャタを解釈することができます。一人のパツァイターにはイノシャン(Inoshan)と呼ばれる非常に訓練された護衛が一人付けられ、共に中央の儀礼用の建物に住むのですが、この一組が全てにおいて双子の兄妹(や姉弟)であるのは興味深い点です。
 各部族では自治がなされ、先祖から受け継いだそれぞれの猟場を支配します。部族は十数家以上の家族からなり、最上位家の最高齢の双子が部族を統治します。部族は伝統的に狩人かつ採集人で、いくつかの仮小屋を猟場に散在させています。これらの仮小屋はサジターティウス樹の上に大枝などで居住空間を築かれ、世界の大型生物から身を守っています。また、部屋の「壁」には部族の記録として彫刻が施されています。
 預言者が部族間のどのような問題でも解決するため、アヤンシュイ人の間には戦争どころか部族対立すらありません。猟場を巡る狩人同士のいさかいは起きますが、これは部族の長によって速やかに止められ、預言者に仲裁が委ねられます。そのような文化のため、アヤンシュイ人には狩人以上の「軍人」はいません。

ハッピルーヴァ人 Happirhva
母星:レジャップール(1218)
 太古種族によって30万年前に、乾燥気候のため居住にはあまり適さないレジャップールに移住させられたハッピルーヴァ人は、生き残りのための絶え間ない戦いを強いられました(※さらに言えば、レジャップールは太古種族の最終戦争の際に隕石爆撃の標的となっています)。その教訓から彼らは、科学技術や文明を開発しないようにする風習を築きました。実際、彼らが約250年前にカレドンの影響下に入った頃でも、その文明はTL3に留まっていました。
 外世界からレジャップールへの入植が始まった頃、ハッピルーヴァ人には2つの集団が形成されていました。「大地の民」を意味するハップラーニ族(Happrhani)と、「草原の民」を意味するハッピジョム族(Happijhom)です。前者は後者より人口こそ少なかったのですが、より文化的でした。
 ハップラーニ族は惑星の肥沃な地域で数々の農業集落を形成し、砂漠のオアシスや湖の周辺にも井戸を掘って入植していました。TL3の文明は繁栄していて、平和的な生活様式をしています。
 一方、ハッピジョム族は惑星の広大な草原地帯や砂漠地帯に住む遊牧民です。一年のほとんどにおいて、大草原は騎乗獣ジェダーハイ(jhederhai)や食用草食動物ハージャンキ(herjhanki)を容易に養うことができます。しかし、最大100日間の冬季には大草原は不毛となるため、遊牧民は他の土地に餌を求めて移動しなくてはなりません。それは時として、ハップラーニ族の住む肥沃な土地も対象となります。この季節性の「移動」は対立を定期的に引き起こしてはいますが、ほとんどの場合において両者は共存できています。時折起こる事件や衝突を除けば、「移動の季節」は交易の、祭典の、そして異部族間結婚の季節であり、文化や友情の交流を図る時期です。
 レジャップール出身者の宗教的信条は様々で、変化に富みます。一部の遊牧民は「空の神」に対する畏敬と不信を持っていますが、この「神」は異星人類学者によれば太古種族の隠喩ではないかと考えられています。また彼らは水面を病気と死を呼ぶ不浄のものと考えていて(実際この星のわずかな水界は淀んでいます)、「空の凶神」である外世界人による灌漑を「自然の摂理に反する邪悪な魔術」と見て反発しています。
 一方でレジャップールのどんな人々も、人生に対する考え方は類似しています。野蛮ではありますが、外部との競争に際しては協力し、勇気と名誉を美徳とし、良き家族や民衆や種族への献身を重んじます。彼らは冷酷な殺害をせず、死刑囚にすら自らの潔白を証明する戦いの機会を与えます。
 ハップラーニ族は独特の口語および書き言葉を発達させました。この言語は遊牧民たちとの公用語にもなっていますが、遊牧民は部族ごとに相互理解のできない方言を使用しています。また、多くのハップラーニ族(特に兵士や農園に雇用された者)はカレドン訛りの銀河公用語を解します。
 一方で外世界人はいくつかの単語を俗語として取り入れた以外には、わざわざ地元言語を学びませんでした。地方港ではハップラーニ語に対応した翻訳機が利用可能ですが、様々な遊牧民方言に対応したデータはわずかか、全くありません。

イルサラ人 Iltharan
母星:ドレシルサー(1826)

「諸君がイルサラ文化を知っているのなら、『イルサラ人』という単語が多くの方言で『海賊』と同義語になっていった事に驚きはしないであろう。そしてそれが当のイルサラ人にとっては誇りの表現である事にも驚かないであろう」
ダフィド・ジュガシヴィリ教授による、シレア大学の比較知的種族学講義より

 母星の名を取って「ドレシルサー人」とも呼ばれるイルサラ人は、地表の9割が海に覆われたドレシルサーのわずかな土地をめぐる争いから、活発で好戦的な種族となりました。惑星上の3つの孤立した小さな大陸でそれぞれ別の民族集団が文明を築き、お互いに争いと混乱の長い歴史を持ちました。そもそも「イルサラ」というのは、他の2大陸をも制した民族(そして国家)の名前なのです(※人類系種族としてのイルサラ人と一民族としてのイルサラ族を区別しやすくするため、民族名としては「高イルサラ族」(High Iltharans)という表記も使われます)。
 一方、征服されたアカカード族(Akakhad)とトリング族(Tring)はイルサラ帝国(Iltharan Empire)に吸収されましたが、民族としての独自性は完全には失われませんでした。ちなみに、-850年頃にイルサラ帝国の軍艦がガージパジェ(1124)に不時着しましたが、この時の生存者の子孫がクトリング族(K'tring)です。生存者の大多数がトリング族であったことから、現地語でこの名が付きました。
 太古種族によって人類が持ち込まれたドレシルサーは、他所から離れていたためにヴィラニ帝国、人類の支配(第二帝国)、アスラン氏族に取り込まれることはありませんでした。3つの民族に分かれたドレシルサーの人類は互いに戦争を続け、銀河の歴史に関わることはありませんでした。
 第二帝国の衰亡によって始まった暗黒時代、リーヴァーズ・ディープ宙域には《略奪者》が横行しました。そのような中、ドレシルサーに不時着した《略奪王》イザナク大提督から核融合とジャンプ技術を手に入れたイルサラ族は、得た知識をドレシルサーの征服に用い、-1000年までにアカカード族とトリング族を「イルサラ帝国」に取り込むと、ジャンプ-1宇宙船を発進させました。
 その後のイルサラ帝国は、自分たちより遅れた文明の星々を素早く征服し、征服するには人口の多すぎる世界には略奪に向かいました。無人世界は、例え環境が良くても無視されました。-890年から-100年までイルサラ帝国は無敵を誇りましたが、やがてソロマニ人系国家であるカレドン公王国や、この宙域にやって来た第三帝国との戦いの果てに滅亡しました。
 現在イルサラ人は、リーヴァーズ・ディープ宙域内に点在しています。多くの世界ではソロマニ人や他の種族と比べて少数派ではありますが、旧帝国の中心部だったいくつかの星系では今でも多数派です。彼らの攻撃性は今も衰えることはなく、中には祖国を滅ぼした者たちへの復讐のためにテロリズムや海賊行為に走る者もいます。
 成人のイルサラ人男性は身長約2メートル、体重95キログラムが平均的な体格です。大部分の人類と同様に、女性は男性より背が低く、軽いです。皮膚の色は薄い青銅色から乳青白色(milk-pale)で、眼の色は一般的に青、灰色、榛色(アカカード族は茶色の眼が多い)です。髪の色は茶褐色か黒で、体毛は濃い傾向があるので成人男性は常に顎髭を伸ばします。またイルサラ人はドレシルサーの低重力(0.5G)と寒冷気候(平均気温マイナス2度)に適応しています。
 イルサラ人は人類の根源種にかなり近く、特に問題なく他の人類(特にソロマニ人)と交配することができます。ただし一番の違いはこの生殖に関することで、イルサラ人は基本的に不妊症ですが、代わりに長い寿命を持ちます。イルサラ人は誕生から18標準年ほどで成熟しますが、100歳頃までは老化を感じさせません。そして適切な医療を受けていれば150標準年程度は生きます。そのためイルサラ人の数は、理想的な状況下でもゆっくりと増加する傾向があります。母星ドレシルサーの人口は最盛期でも1億人に過ぎず、イルサラ帝国の滅亡による荒廃期から現在までも、惑星人口はほとんど変化がありません(※現在の人口は930万人ですから、爆撃によって人口は1割以下になったようです。そして皮肉なことに、ガージパジェのクトリング族の人口は母星よりも多い3700万人にまで達しています)。
 イルサラ人の出生率の低さと寿命の長さ、そして特殊な老化曲線は、他の人類との精神面での違いも生み出しました。イルサラ社会は年功序列で、50歳未満の「若者」は見習い、単純労働者、従卒といった扱いです。若者は厳しい鍛錬の対象であり、彼らの意見は通常無視されます。75歳ぐらいになるとようやく指導的な立場になれます。
 この影響で、イルサラ社会は非常に保守的となりました。前星間技術時代のドレシルサーの歴史の中で社会が破綻するような事態はほとんど起こりませんでしたが、同時に文明の歩みは非常に遅かったのです。科学的発見、技術革新、芸術や建築の新様式、といった全てにおいて、発達するのに長い時間が掛かりました。考古学者はドレシルサーの農耕文明が5万年前に誕生したと考えていますが、イザナク大提督がドレシルサーを発見した時でも最先端文明はかろうじて無線と電気を開発した程度でした。
 宇宙に出て「接触時代」を迎えたイルサラ人は、他の文明から物品だけでなく芸術家や科学者や技術の専門家も略奪するようになりました。以後1000年間に渡ってイルサラ帝国は「寄生文明」でしかなく、自分自身の社会を維持するためにいくつもの他の文明を食い物にしていました。イルサラ人が他文明を虐待こそしていても、虐殺に至らなかったのはこうした理由があったようです。当然のことながらこの手法は効率が悪く、イルサラ帝国がより優れた文明と接触すると、変化を拒んだ彼らは滅亡に向かって落ちていくしかありませんでした。
 イルサラ社会は非常に軍国主義的です。高イルサラ族が「軟弱で平和主義的」だと捉えているアカカード族やトリング族ですら、大部分のソロマニ人やヴィラニ人よりは攻撃的で、厳しく統制されています。また、若者はより好戦的な傾向があります。
 多くの人類とは異なり、イルサラ人は父権的社会ではありませんでした。産業化前の時代でも女性には男性と同等の社会的・政治的権利がありました。これはイルサラ人の不妊症の影響で女性の人生において出産育児に費やす時間が少なく、その分だけ社会活動に回すことができたからです。
 イルサラ社会の中核にあるのは職業ギルドです。子供たちは国によって一般教育が与えられ、成人すると見習いとしてギルドの一つに所属します(通常は親の片方もしくは両親が所属していたギルドに属します)。ギルドは訓練と仕事を提供し、同時に構成員としての規律を求めます。またギルドは男女を引き合わせ、育児を手伝い、他の社会福祉事業も担います。こういったギルドの存在により、イルサラ人には企業の概念は発達しませんでした。
 また、軍隊も一つの「最も大きく最も由緒ある」ギルドでした。イルサラ社会は伝統的に軍隊が統治していましたが、その軍隊は代々上級将校を輩出する特定の家系によって導かれていました。しかしイルサラ帝国が没落してからは、軍隊は富や栄光を得る機会を失い、実権は官僚機構に移りました。今や最上級将校からなる「支配階層」は表看板に過ぎません。


【知的種族(非人類)】
ダーフィガッサク Derfi'gassak
母星:オークニー(2919)?
 オークニー(2919)及びメイデン(2920)に住む群小種族ですが、彼らがオークニーを母星として進化したのか偵察局は未だに断定しきれていません。それだけ、彼らについてはわずかしか判っていないのです。
 偵察局による帝国暦110年の第一期探査では彼らは発見されず、ようやく180年に偵察局の船が接触しました。その後、隣接するメイデン星系に彼らの植民地が発見され、これは世代間宇宙船によって植民されたことが判明しました。
 ダーフィガッサクは平均全長150cm未満の小柄な種族で、黒い肌と白い髪を持ちます。6本の手足が身体から出ていて、そのうち4本が長くなっています。彼らは道具を使う際はどの「腕」でも使うことができます。彼らには目がないように見えますが、「腕」にはとても敏感な感覚器官を備えていて、周囲全ての動き、匂い、音を感じることができます。また、彼らの「口」は身体の下部にあります。男性は筋肉質で、女性は痩せている傾向があります。
 オークニーの熱帯雨林環境に適応したため、彼らは何も着用しない狩猟文化を持ちます。また彼らの平均寿命は短いのですが、これはオークニー土着の巨大捕食生物によるものです。乳幼児死亡率の高さから来る「短命」が、彼らに早い性的成熟を促したと偵察局は考えています。
 彼らの言語は音楽に似ていて、喉頭音と舌打ち音から成り、これがオークニーの濃い大気と密林に響き渡っています。しかし偵察局は彼らの言語の翻訳に成功していません。

フオスキーキール H'Oskhikhil
母星:ストーム(1404)
 惑星ストームの偏心軌道は、フオスキーキールの生涯を「貪欲に捕食する幼体」と「文化的だが捕食される成体」に分けました。このことは、彼らが比較的最近まで永続的な技術社会を構築できなくしていました。
 成体が幼体に捕食されないように「防護住居」を築くようになったことで、彼らの文明は始まりました。フオスキーキールの成体の一部は、暑い近日点季の間は極地の涼しい洞穴に移り住み、出産期を生き残ることができていました。このことから学んだ彼らは、防護住居に空調を施しました。文字は数百年前に開発され、彼らは口伝されていた歴史と業績を住居の壁に忙しく書き記しています。
 フオスキーキールの成体の身体は直径1.5m、高さ0.5mの膨体で毛皮に覆われ、周囲に様々な大きさの12肢の触手が並んでいます。これらは全て足の働きもします。
 一方幼体は高さ1mの管状体で、そこから茎状に飛び出た2つの目と掴むための4本の触手と4本のしっかりとした足が突き出ています。幼体には毛皮はありませんが、単純な道具を使う程度の知性があります。幼体も成体もストームの通常より高濃度のオゾン大気に適応しています。
 近日点季による気温上昇は幼体の出産を引き起こすため、成体は涼しい環境にいることでその工程を先送りすることを望みます。なぜなら出産は成体の死を伴うからです(そして親の死骸は生まれた幼体の最初の食料となります)。
 彼らは声を発していないように見えますが、実際には超音波域で複雑な会話を交わしています。また可聴域は人類の音声の領域まであるので、彼らの一部は銀河公用語を学び、外世界からの訪問客との通訳になっています。
 幼体のフオスキーキールは動くものは何でも攻撃して捕食しようとします(幼体は群れで行動するので仲間は例外です)。それが成体であろうと、動物であろうと、人類であろうと。そして彼らには、獲物を殺す武器として道具を使用する以外には知性は見られません。
 一方、成体は友好的で平和的です。初めて出会う者に対しては用心深くなりますが、訪問者が自身や生息地への脅威ではないことがわかれば、彼らは友人になろうとします。
 成体のフオスキーキールは本能的に好奇心が旺盛で、新たな技術を素早く吸収します。このことにより彼らはこの300~400年ほどで急速に技術水準を向上させることができました。そしてあと数十年もすれば、彼らは自力で宇宙に飛び出していくことでしょう。
 フオスキーキールの成体は要塞と霊廟を兼ねたような大きな石の建物に住んでいます。これらの建造物は彼らが次世代に文化と技術を受け渡すための、守りが固く空調の効いた避難所です。ストームの各地には何百万ものこういった建物が点在し、全て合わせて80億人の成体が現在住んでいます。
 それぞれの建物の中で一番知的な者が指導者に選ばれるため、フオスキーキールの社会は封建的技術主義に分類されます。最も技術的に進んだ建物の指導者がその地域の指導者となり、地域の建物同士は互いに協力し合います。そして地域指導者は惑星全体の問題を話し合うために会合を持ちます。会合を主導する者は、出席者の中から最も知的な者が選ばれますが、その指導力はその会合の間のみで発揮されます。
 成体のフオスキーキール同士で争うことがなかったので、彼らは軍隊を持ったことはありません。幼体から身を守るために唯一有効な手段が防護住居の建設だったこともあり(それは幼体と戦うよりも効果的でした)、最大の脅威を退けた彼らにはそれ以上の力は必要なかったのです。

ジアージェ J'aadje
母星:ガージパジェ(1124)
 ジアージェは小柄(平均身長1.5m、平均体重60kg)で機敏な、大きな目と金色の皮膚を持つ二足歩行知的種族です。ジアージェは互いに友好的で、外世界人に対しても親切に応対します。ジアージェのTL4文明は技術発展をあまり重視せず、代わりに詩や舞踏といった芸術を重んじています。上品で繊細な芸術とそれを支える技量には高い商業的価値があり、外世界でも高値で取引されています。
 ただしガージパジェには長い闘争の歴史があり、彼らをひ弱な種族と決めつけるのは早計です。

ラングルジゲー Languljigee
母星:ラジャンジガル(1721)
 母星の塩素環境で進化した三本足の知的種族である彼らは、行動的で活力にあふれています。環境は技術を進歩させるには向いていませんが、それでも彼らは知的で賢いです。TL3の文明を持つ彼らと交易する人類の貿易商人はあまり多くはありません。
 1080年に彼らはダカール・コーポレーション(Dakaar Corporation)の支配下に入り、地元の様々な希土類や放射性物質の採掘作業における奴隷的な労働力として使用されています。

ルーシャナ Lhshana
母星:ルーシャミ(2111)
 雑食採集生物から進化したルーシャナは、身長1.2mほどの三角体型に優れた操作能力を持つ触手が付属しています。触手にはそれぞれ感覚器が付いており、聴覚、嗅覚、味覚に加え、赤外線域の視覚にも対応しています。口は腹部に位置して食物摂取のみに使用され、呼吸は触手の根本にある開口部から行われます。
 非攻撃的で静かな種族である彼らは、カレドン公王国の商業探査隊(merchant explorers)と598年に接触した頃には2000年の歴史を持つTL9の文明を築いていました。まず前文明期のルーシャナはサイエの支配下に置かれ(サイエの活動や風習の記録はルーシャナの民間伝承や神話の中に遺されています)、そして暗黒時代には人類の《略奪者》の接触も受けています。これらの要因により彼らの技術進歩は後押しを受けましたが、一方で彼らは宇宙には関心を持たず、宇宙飛行技術は開発していませんでした。

ポリフェミー Polyphemes
母星:フタリェア(1226)
 ポリフェミーは原始的な狩猟採集社会を形成しています。飛び出た耳と大きな一つ目、屈強な体を持つ、大きな体格の二足歩行種族です。彼らは最近になって人類の貿易商人と接触したため、まだ詳しいことはわかっていません。

サイエ Saie
母星:リフトディープ星域かリフトリム星域のどこかの赤色矮星星系?
 3700年前に滅亡した非人類種族サイエの文明については、ほとんどわかっていません。彼らが残した痕跡は極わずかで、グレンシエル(1912)にある「ジュラの墜落痕(Crash Jura)」、ヴィラニ人による記録、イン=ツァイやルーシャナの神話伝承から得られる程度のものしかありません。
 集められた数少ない証拠から、サイエは肉食の捕食動物から進化した直立二足歩行種族だと考えられていますが、彼らの母星どころか、姿形がどうだったかすら判明していません。彼らは謀反を企んだヴィラニ総督から極秘裏にジャンプ技術を入手し、現在のカレドン星域あたりを中心にして小帝国を築いたようです。彼らは好戦的で内部のいざこざも多く、征服惑星には数百名程度の統治者や兵士しか置いていなかったと思われます。そして最終的にサイエの小帝国は、破滅的な内戦の末に自分たちもろとも消え去りました。
 カレドン公王国の者に限らず考古学者たちは、この謎めいた種族の詳細を追い求めていますが、これまで誰も決定的な証拠を手に入れられていません。

トリェトライ Tlyetrai
母星:ホア(0310)
(※非人類の群小種族であること以外には資料が存在しません)

ヴィルシ Virushi
母星:ヴィルシャシュ(2724)
 「戦車の血を引くケンタウロス」「考えるブルドーザー」などと仇名されるヴィルシですが、実際は穏やかな巨人です。彼らはとても礼儀正しく、柔らかな声で話します(※ヴィルシは高圧大気に適応した発声をするので、人類には弱く静かに聞こえるのです)。彼らは母星でも最大の生命体だったので他の動物は脅威とならず、群れを作らずに生きていくことができました。彼らの社会は家族を中心とした「協力体(cooperative)」以上には発達せず、結果的に個々の自由を重んじた牧歌的なものとなりました(※よって彼らは帝国にコンピュータや経済学を教わるまで高度な文明を築けませんでした)。ヴィルシは納得さえすればどのような仕事でも喜んで協力してくれますが、反面、彼らに命令して仕事をさせるのはほぼ不可能です。
 ヴィルシは確かに個人主義的ですが、これは我が儘だからではなく、お互いの違いを尊重しあう礼儀正しさから来ているものです。しかしその静かで穏やかな性格にも関わらず、彼らは友人や家族を守るためなら戦いを厭いません。とはいえ大抵は理性的に非暴力的な解決法を探して交渉を試み、戦いになっても敵が引き下がってくれれば争いの拡大は好みませんが。また、ヴィルシは痛みに対して無関心と言っていいほど非常に強く、身体を傷つけた程度で彼らを怒らせるのはまず無理です。
 地球人の目には「サイとケンタウロスの混血」に見えたヴィルシは、全長3メートル、肩までの高さが1.8メートル、体重は1トンもある、これまで遭遇した知的種族の中で最大級の体格を持ちます。彼らの母星の高重力・高圧大気・伴星からの重度の放射線が、彼らをこのように進化させたのです。硬い皮に覆われた身体には、樹木のように太い4本の足と、人類ほどの大きさで驚くほどに器用な一対の上腕と、かなり屈強な一対の下腕が付いています(つまり腕は4本です)。さらに彼らの体重を支え、身を守る強力な武器となる長く太い尾が付属します。ヴィルシの目は眩しい日光下の環境に適応したので、薄暗い環境を苦手とします。また、聴力は高濃度大気に適応しているので、一般的な大気下ではうまく機能しません(人類の声は彼らの可聴範囲ぎりぎりに入っています)。彼らは草食で、基本的に人類の倍以上の量を摂取します。
 ヴィルシは母語としてヴィルシ語を話しますが、大部分のヴィルシは銀河公用語を話せます(ただし気を抜くと人類の可聴域を下回る聞き取りづらい声を出してしまいます)。ヴィルシは母星以外でもよく見られる種族で、他者に奉仕するような職業に就くことが多いです。特にその器用さから医者としては優秀で、ヴィルシの外科医の腕前は既知宙域各地で有名です。ストレフォン皇帝の侍医団にヴィルシの外科医が含まれていることからも、その優秀さはわかるでしょう。一方でその大きさと強さがありながら命令と争いを嫌う性格から、軍隊の中にはいられません。

イン=ツァイ Yn-tsai
母星:不明(少なくともツァネシ(1711)ではない)
 イン=ツァイは七本指で二足歩行の知的生命です。彼らは身長およそ1.9メートルで、白か灰色か金色の柔らかい毛で覆われています。髪は長く伸ばされ、自身の社会的地位を表すために精巧に編まれます。肉食動物から進化したと思われる彼らは、低い気圧を好みます。
 563年にカレドンの探検隊がツァネシでイン=ツァイと初めて接触した時点では、彼らはTL3の封建的で(肉食動物らしからぬ)極端に平和主義的な社会を構築し、「空の向こうから来た訪問者」を非常に恐れていました。これはサイエによる悲惨な内戦の影響と考えられ、彼らの不信と恐怖を解きほぐすのに数十年を要しました。
 カレドン公王国の商人や科学者や探検家が(渋々)受け入れられた結果、彼らの技術水準はこの数世紀で向上しましたが、戦争や宇宙旅行に関連する技術の受け入れは未だに避ける傾向があります。
 現在の一般的な説では、イン=ツァイはサイエに隷属していたどこかの種族の末裔と考えられていますが、太古種族によって別の星から持ち込まれたとする説を唱える学者もいます。

ヰスライ Yslai
母星:イスライアト(0221)
 群小種族のヰスライは、身長1メートル、体重40キログラムほどの小柄な体型をしています。外見はテラ原産のキュウリのようで、同様に緑色をしています。彼らは手を兼ねた3本指の4本足で器用に歩くことができます。
 彼らは性を持たず、数年に一度、自分自身を「発芽」させることで繁殖します。ただしこの発芽は、周辺の食物や資源が十分に豊富である時のみ起こります。発生した「芽」は数週間で独立し、6~8年後には発芽が可能となる成熟期を迎えます。
 彼らの唯一の食べ物は、イスライアトのみで育つ特別な植物を発酵させた泥水のようなもので、アスランには匂いがきついものの食べられないことはありませんが、人類には吐き気を催す上に有毒です。
 ちなみに、星図に記されたイスライアト領内全ての星系名はアスラン語によるものです。ヰスライの言語はアスランにも人類にも表記や発声が不可能であり、高級翻訳機なしでは意思疎通が困難です。
(※これは非公式設定です。現時点で公式にはイスライアトの群小種族は何も設定されていません)

(この宙域の国家・企業等についてはこちらを、ライブラリ・データについてはこちらを参照してください)
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宙域散歩(23.5) リーヴァーズ・ディープ宙域(国家・企業・団体)

2014-06-04 | Traveller
【国家(主要国)】
カーリル合集国 Carrillian Assembly
 カーリル合集国はリーヴァーズ・ディープ宙域で2番目に大きい人類統治の独立国です。正規加盟星系に加えてヤルーファール(2228)を属領として持ちますが、ここへ対しては直接統治は行っていません。
 合集国は519年、当時ドレシルラー星域とファールナー星域のいくつかの世界の衝突が大規模な戦争に拡大する恐れがあった際に、帝国がこの地域をアスランとの緩衝地帯として維持しようと対立の平和解決を「望んだ」ことから、その歴史は始まりました。和平会議はカーリル(2330)のブレア・ロックという小惑星で行われ、各星系間の通商や防衛に関する取り決めが調印されました。首都をカーリルとする新国家が誕生し、中央議会はそのままブレア・ロックに置かれました。その後、後進世界だったカーリル・ベルトは合集国で最も人口が多く、活力ある世界に発展しました。
 合集国は500年間に渡ってディープ宙域のトレイリング方面の安定に貢献してきました。その間彼らは領内の通商と発展の促進に専念し、勢力圏の拡大はしようとはしませんでした。しかし1090年代に、領土拡大を訴える排他主義的な急進改革勢力である進歩党の勢力が増し、1103年には若手海軍士官によるクーデター未遂事件で当時のコリン大統領が暗殺されました。ジュザーク提督(Admiral Juzark)は戒厳令を宣言し、首都を管理下に置きました。
 この危機の間に海軍、保守党、進歩党による譲歩合意がなされ、ジュザーク提督の退任と同時に、合集国最高裁判所(Assembly Supreme Court)の首席裁判官(Chief Justice)であるダルドリーム氏を大統領に据えることとなりました。
 ダルドリーム「大統領」には議会制民主主義への復帰が期待されていましたが、実際にはそうなりませんでした。ダルドリーム大判官(High Justice Daldreem)は憲法条文を様々な口実として戒厳令を続けた、カリスマ的ではありますが冷酷な指導者であったのです。彼は進歩党が掲げる拡張政策と、保守党が掲げる中央集権政策に同時に乗り出し、現在ダルドリームとその取り巻きは完全に議会を掌握しています。
 1109年、イルドリサール(2326)で発生した暴動は、悪名高き「宇宙港の虐殺」にまで拡大しました。それ以来この星は騒乱状態に陥っています。
 1110年、自由党の党首ハーレイ・リビドン(Halley Libidon)は合集国議会においてダルドリーム大判官に「信任投票」を求めました。それに対しダルドリーム大判官は議会を解散し、代議員を「イルドリサールのテロリストから保護する」ことを目的として自宅軟禁しました。リビドン党首はそれ以降、合集国の民主主義回復を訴えて遊説を続けていましたが、1113年に欠席裁判でイルドリサール叛徒への支援の罪で有罪判決を受けました。彼は逮捕を逃れ続けていますが、同時に彼の首にかけられた賞金額も増え続けています。
 1114年、報道機関は公共情報局(Office of Public Information)の統制下に置かれ、カーリルの3つの報道機関を除いて全て公式に閉鎖されました。

イスライアト支配圏 Islaiat Dominate
 非人類群小種族ヰスライは、リーヴァーズ・ディープ宙域とエアリーアシーウ宙域に跨って31の世界を統治しています。
 彼らは拡大初期のアスランから-1227年にジャンプドライブを入手し、速やかに自らの国家を拡張していきました。しかし《略奪者》の領域と接触した彼らはエアリーアシーウ宙域方面への拡張に転じました。現在はアスランの属国として、リーヴァーズ・ディープ宙域に大きな影響力を保持しています。
 なお、領域内の星系は意図的に技術水準が低く抑えられています(※と、資料にありますが、宙域内の他星系と比べて極端に低いわけでもないので、首都イスライアト(TL13)との技術格差が固定するように新技術の開発が抑制されているのかもしれません)。

カレドン公王国 Principality of Caledon
 カレドン星域及びスコティアン・ディープ星域の大部分を支配するカレドン公王国は、リーヴァーズ・ディープ宙域で最も大きな(人類統治の)独立国家です。しばしば「商業王国」と呼ばれ、その貿易規模と富で有名な公王国は、カレドン(1815)の貴族ジェミスン・ダンダス(Jamieson Dundas)によって-102年に建国され、公王国内戦(309年~328年)と王朝危機(1024年)の時代を除けば、比較的安定していました。
 現在の公王国がある地域は、恒星間戦争の末期に入植が始まりました。主に西ヨーロッパ系の地球人移民たちは、ヴィラニ帝国の「吸収」を続けて膨張していく地球連合に危惧を抱いた、政治的な一団でした。彼らは、衰退する第一帝国が抱えていた「重荷」を地球連合が支えきることはできない、と思っていたのです(そしてその正しさは後に証明されます)。
 著名な銀行家であったチャールズ・スチュアート・スコットに導かれ、彼らは両勢力から遠く離れた新天地を求めて探検を行い、やがてカレドンと周辺の数星系に入植しました。しかし植民星の荒々しい環境下で苦闘を続ける日々の中で、やがてジャンプドライブ技術は失われていきました。
 暗黒時代末期、とあるシレア人貿易商人と接触したことにより技術水準は回復し、それからまもなくして、いわゆる《略奪者》の海賊行為や無法を阻止する存在として公王国は興りました。
 高度技術時代を迎えたカレドンは、封建的社会への回帰を選択しました。世襲貴族は指導者として個人の忠誠を集める存在ですが、貴族は普通の一市民から全く手の届かないほどではありません。国家に顕著な貢献をした個人には、王権者たる公王から貴族の称号(士爵(ナイト)、男爵(ロード)、辺境伯、子爵、伯爵)が与えられます。世襲の公王は専制君主ではなく立憲君主として統治し、その権力は3つの立法府(貴族院、上院、下院)によって監視されます。各星系政府には地方法を制定する権限が持たされ、公王国政府は主に恒星間の外交、戦争、通商を担います。
 近頃の公王国では、貴族の間にある程度の派閥争いが起こっています。目下であるはずの男爵が玉座を求めて目上の伯爵を打倒した、という前例がある関係で、貴族たちはより安定した支持基盤を得る方向に走り、時として対立貴族家との暴力抗争にまで発展します。それによる治安の悪化は私兵の増強を招き、政治工作や扇動が増えたことにより、それほど遠くない将来に新たな危機を迎えるかもしれません。

和諧同盟 Union of Harmony
 人類国家である和諧同盟は、リーヴァーズ・ディープ宙域とダークネビュラ宙域に跨って21の世界を統治しています。この国は暗黒時代から続いた旧「天的聯盟(Celestial League)」の星系が再結集して、856年に結成されました。歴史的経緯によって和諧同盟はソロマニ連合と強い関係を持ち、ここ160年間に渡ってアスランとの紛争を最小限に抑え込めた理由となっています。
 和諧同盟は首都ギュスターブ(0737)に強力な中央政府を置き、そこから直接に加盟世界を統治しています。現在和諧同盟は、トレイリングおよびリムワード方面への進出を狙っていると噂されています。
 ちなみに、和諧同盟はしばしば「非人類種族ウレーンの治める神聖ウレーン国(Ulane Hierate)」と誤ってライブラリに記載されています。これは俗に『ウレーンの偽情報(Ulane Hoax)』と呼ばれる悪戯によるものです。1108年091日、ワリニア(ダイベイ宙域 0507)のダイベイ大学でコンピュータを学んでいた学生の小集団がXボート網に侵入し、偽のデータをXボートで帝国中に広めたのです。これにより各地のライブラリ上でアスランの首星クズの座標が書き換えられるなどされましたが、彼らを最も有名にしたのが「神聖ウレーン国」に関する詳細で巧妙な偽の記述でした。
(※なお、犯行に加担した学生たちは1117年までに全員が逮捕され、後に重い実刑判決を受けました。帝国当局は公式に偽情報を全て除去したと発表しましたが、頻度は減ったとはいえ誤ったデータを目にしてしまう可能性は残っています)


【国家(中小国)】
カーター技官国 Carter Technocracy
 カーター(1839)は元々植民地としてジェファーソン(1840)を領有していましたが、1027年に隣接するグリフィン(1839)が宇宙船建造技術を回復したことから両政府は交渉の機会を持ち、技術と通商における共有の合意に達しました。そして5年後、「カーター技官国」の旗の下にこれらの協定を正式に調印しました。
 現在のこの国は、加盟3星系で最も聡明と見られているカーターのカルヴァン・トマージュ大統領(President Calvin Tomage)によって導かれています。また、ソロマニ連合とは通商と技術提携の面においてのみ国交を維持しています。
 カーター技官国は、国境を拡大することには現在のところほとんど関心を持っていません。

ダンキニー連合 Confederacy of Duncinae
 ダンキニー連合は、公王国内戦(309年~328年)による避難民によって結成されました。そのため現在でも「母国」とは経済や文化交流で密接な関係を持っています。
 首都をダンキニー(1624)に置く連合は、各加盟星系の地方自治権が強い、ゆるやかな統治を行っています。なお、ダンキニー連合は刑務所星系のコベントリー(1723)を管理していますが、正式な加盟星系には数えていません。
 1108年にトーマス・バーナム提督(Admiral Thomas Birnham)を中心として海軍の一部が決起した、俗に言う「08年反乱(Rebellion of '08)」が発生しましたが、政権は短命に終わり、失脚した彼はコベントリーに追放されました。
 現在連合は「マクベス号事件」によってマールハイム大公国との緊張が増しています。事件後の1114年038日に行われた連合評議会議長(President of the Confederacy Council)選挙は、強硬派のロジャー・ヴェイン前マールハイム大使(Roger Vane, the former ambassador to Marlheim)が当選し、大公国に対して厳しい姿勢を採っているからです。

ディエンバッハ管理区 Dienbach Grÿpen
 帝国暦200年代にリーヴァーズ・ディープ宙域に進出した第三帝国は、ナイトリム星域の大部分の星系を併合しました。しかしオークニー(2919)及びその植民地であるメイデン(2920)に住む知的種族ダーフィガッサク(Derfi'gassak)は極度の外世界人嫌いのため、帝国への併合どころか接触すら拒みました。
 その時点から両星系は帝国偵察局によって進入禁止星系として隔離され、カギシュ(3019)の偵察局基地から見守られています。ダーフィガッサクは、これ以上の領土の拡大も帝国加盟も望んではいないようです。

オケアヌス領 Domain of Oceanus
 オケアヌス(3130)の政府は893年、拡大する人口に対応する農産物供給源を求めてメッカ(3129)に入植を行いました。その後、1063年に地殻が不安定となったオケアヌスで大災害が発生してほとんどの産業は壊滅し、世界は荒廃しました。
 現在、帝国は領内に安定を取り戻すために両世界で援助活動を行っています。

グラリン政府 Gralyn Assembly
 ドリンサール・ループ上にあるこの国には、グラリン(1735)、その衛星アスコアポイ、ボタニー・ベイ(1734)、そしてクテアリー(1733)にあるグラリン入植地が加盟しています。同時にこの国は、農業世界のアイキー(1634)を運営するアイキー開発信託社(Aikhiy Development Trust)をヴェニス(1534)と共同経営しています。
 -2000年頃、第二帝国の探検隊はアスコアポイにて原住民のドロインと接触し、両者には友好関係が結ばれました。その後-1893年までにアスコアポイには大使館や研究施設や交易所を兼ねた小さな入植地が建設され、-1780年には人類の人口は1000人になっていました。しかし第二帝国の崩壊により入植地は孤立し、退避命令を嘆願しに中央へ向かった偵察艦すら帰ってきませんでした。
 この頃からドロインにとって人類の存在は、収益源だったものが資源を浪費するだけの厄介者となってしまいました。さらには自分たちに牙を剥いて入植地を拡大し続けるのではないか、とも疑われました。解決策として選ばれたのは、衛星アスコアポイが周回する惑星クラルン(人類の発音ではグラリンと訛ります)への移住でした。クラルンはドロインには寒すぎる惑星ですが、人類には許容範囲内でした。かくして人類はグラリンに移り住み、定期便が両星を結び、ドロインの技術支援で人類は入植地を拡大していきました。
 暗黒時代の終わり頃、グラリンとアスコアポイは《略奪者》たちに対抗するために共同で惑星防衛艦網を構築しました。これは非常に効果的で、《略奪者》を迂回させるだけでなく、アスランの入植も阻みました。
 第三帝国時代のグラリンは、帝国とアスランの緩衝地帯であることを活かし、両勢力間の交易で利益を得ています(※同時にドリンサール・ループは帝国とソロマニ連合間の密輸ルートでもあります)。
 ボタニー・ベイにはグラリンの流刑植民地が693年に建設されましたが、その300年後にはグラリン本星の人口密度を低減させるために移民が始まりました。アスランの入植星系でもあるクテアリーには727年に入植が始まっています。アイキーを巡ってはヴェニスとの対立が先鋭化したので、両政府は1073年に開発信託会社を共同で設立して紛争を回避しました。
(※国名を「Gralyn Union」とする資料もありますが、それは『Traveller: The New Era』の帝国暦1200年の世界の話です)

ダグラス大公国 Grand Duchy of Douglass
 ダグラス大公国を代々治めているダグラス家は、公王国成立以前はカレドンの支配貴族でしたが、ダンダス家との権力闘争に敗れて現在のダグラスに亡命しました。その後、帝国暦103年に公王国との間に協定が結ばれて周辺2星系とともに独立国となりました。そういった経緯から、隣接するカレドン公王国とは緊密な政治面・経済面での協力関係を持ちます。ただいかに大公国が自治を喧伝していても、実際には属国として公王国の制御下にあることは否めません。通貨こそ独自のものを使用していますが、ダグラス軍はカレドン軍との一体化が進んでいて、実質的にカレドン軍の指揮下にあります。

マールハイム大公国 Grand Duchy of Marlheim
 マールハイム大公国は拡張主義的な全体主義国家です。首都はマールハイム(1230)に置かれ、現在の元首はユパール・ユガルド・ズダーラク女大公(Grand Dutchess, Yparu Ygald Zdarlaku)です。
 -300年頃にマールハイムとその植民地ペンダン(1231)のみで建国された大公国でしたが、次第に貴族が《略奪者》たちと癒着を始め、《略奪者》の時代が終わった400年代後半には元《略奪者》が貴族となっている有様でした。最後の「大公」が538年に後継者を遺さずに亡くなると、元《略奪者》の貴族たちが国を五分割して「縄張り争い」を続けました。
 932年、ユセフ・ズダーラク(Ysef Zdarlak)主任中尉が「自国」の元首を暗殺し、その後は権力と陰謀と金銭を駆使してマールハイムを統一しました。937年005日に自ら「マールハイム大公」に即位すると、出身の治安部隊を動かしてズダーラク家の独裁体制を固め、戦時体制を続けるために近隣星系を次々と征服していきました。最近では1101年にレストロウ(0926)を併合し、1114年にはエマリーン(1133)に侵攻しています。
 外交関係では、亡命した政敵を匿ったとして帝国やカレドン公王国やダンキニー連合を強く非難し、特に1113年にミラク(1127)で発生した「マクベス号事件(MacBeth Affair)」以来、大公国はダンキニー連合と断交し、連合からの全ての通商を封鎖しています(※また政敵にでっち上げた罪状の中に「アスランとの密通」を挙げ、国内に居た少数のアスランに対して弾圧も行ったので、反アスラン的な政策も採っていると思われます)。
 暗黒時代が明けた頃のマールハイムでは、銀河公用語の文法や《略奪者》の俗語だけでなく古代サイエやアスランの単語をも取り込んだ「カダール語(Kdaar)」が話されていました。しかしズダーラク家の独裁体制が確立すると、大公国政府は言語局(Linguistic Bureau)を設置して、新たに「マールダール語(Marldaar)」の普及を促進しました。これはカダール語を統治の都合に良いように改変したもので、「個性」や「異議」といった単語は存在せず、「反体制派」や「改革者」といった単語には侮蔑的な意味が付加されました。ただし大公国の支配階層は銀河公用語を流暢に話せます。

カーン世界連盟 Khan World League
 連盟はカーン(0817)から厳しく統治される《略奪者国家》の生き残りの一つです。隣接するイェディダー(0616)も連盟の一部でしたが、1031年に反乱を起こして離脱しました。また連盟は、ヘルンネ(0917)の帝国偵察局基地から監視されています。
 ちなみに連盟では《略奪者》の俗語から派生した独特な言語(言わば「カーン語」)を公用語としているので、銀河公用語での意思疎通に支障が出る可能性があります。

コラス統治領 Kolan Hegemony
 コラス(2313)を中心として、クラット(2315)、ロック(2214)の3星系は、実質上帝国の一部ではありますが、ナイトリム星域の帝国当局(※カレドン星域の帝国領はナイトリム星域から統治されています)からは行政的に独立しています。これはアスラン国境戦争末期からの長年の取り決めです。
 コラスはその当時《略奪者国家》の生き残りの一つで、現領土に加えてガッシュ(2116)、ジェリム(2416)、メル(2414)も傘下に収めていました。帝国はコラス領を宙域進出のための優れた橋頭堡として利用し、コラス領に自治権をもたせる形で条約が調印されました。時は流れて、ガッシュは統治領からも帝国からも離れ、ジェリムとメルは帝国が直接統治するようになりました。また、最近ではロックも統治領から離れようとしている模様です。それでもコラスは伝統に則って自治を強調し、領地を支配しています。
 なお、コラス出身の帝国軍人は優れた兵士としての高い評判を得ています。

ランヤード入植地 Lanyard Colonies
 この入植地はソロマニ連合市民によって995年に入植された星系群で、彼らは農産物や水産物の輸出のために連合の支援を受けていました。それぞれの星系には、その星を治めた最初の知事の名が付けられています。
 星系統治は、1008年まではそれぞれの世界の知事に任されていましたが、以後ソロマニ連合はこの星団をリーヴァーズ・ディープ宙域進出の前哨拠点と捉え、干渉を強めていきました。それは1096年に頂点に達しましたが、現在では連合の影響力は象徴的なものに落ち着いています。

清浄派同盟 Purity Union
 ピューリティ(2440)に入植が行われたのは、827年にソロマニ連合内の厳格な宗教集団「清浄派修道会(Order of Purity)」によってでした。当時彼らは隣接するアクウシル星域(ダークネビュラ宙域)でソロマニ当局の弾圧に遭っており、当時タラシスと呼ばれていた新天地に逃げ延び、星系名を今のものに変えました。
 883年、信仰を巡る議論の末、当時の修道会の長は異端信徒を極寒の世界であるアカスタス(2239)に追放しました。同時にこの流刑星の名をパーガトリィ(煉獄)と変え、人々を信仰に忠実にさせるために「煉獄」への恐怖心を利用するようになりました。
(※ソロマニ連合は宗教を否定はしていないので、弾圧に遭ったのは教義がソロマニ主義と相容れなかったか、治安維持上の理由が考えられます)

トリェトライ政府 Tlyetrai Assembly
 -75年に群小種族トリェトライは、母星ホア(0310)から亜光速船でルイワイウアー(0209)とトゥリン(0409)に入植を果たしました。以来何世紀もの間、植民地との交流は亜光速船のみによって細々と行われ、植民星は自治を謳歌していましたが、1086年にホアのトリェトライはようやくジャンプ能力を持つ宇宙船を入手し、技術水準で劣るルイワイウアー植民地の「再統合」を行いました。しかし「統一国家」を維持するその宇宙船は既に壊れ始めており、この国の先行きは不透明です。
(※一方、ホアとTLが同じであるトゥリン植民地は抵抗に成功して独立を守りました。現在トゥリン政府は防衛力を強化しており、その一環で外世界からの宇宙船は地表への直接着陸は許可されないため、必ず軌道宇宙港に停泊しなくてはなりません)


【企業・団体】
カレドン・ベンチャーズ Caledon Ventures, Ltd.
 カレドン(1815)に本社を置くカレドン系貿易会社の同社は、若い企業ながらもリーヴァーズ・ディープ宙域各地に積極的に交易を拡大していきました。アスラン系企業(特にトラサヤーラヘル)が独占しているエア星域各地の市場に風穴を開けるべく交易所を設置し、またその一方で数隻のA2型自由貿易商船による探査・通商任務を実施して、新市場の開拓によって会社を発展させています。

カーリル運輸 Carellines Ltd.
 冷徹で活発な貿易企業として知られるカーリル運輸はカーリル(2330)を本社とする国営企業で、利益のためなら「経費」を度外視する社風です。彼らの活動は海賊行為すれすれでありますが、リーヴァーズ・ディープ宙域独特の「緩い」統治情勢が彼らの業績向上を助けています。

ダカール・コーポレーション Dakaar Corporation
 ダカール(1821)に本社を置く同社は、ダカール星系自体の所有者でもあります。傘下企業には、ダカールのランサナム鉱山や他星系の鉱物資源開発を担う「ダカール・ミネラルズ」、小船団を運用して貿易を行う「ダカール・トレーディング」、リーヴァーズ・ディープ宙域の多くの世界で貨物の買い手と売り手を結びつけている「ダカール・ブローカーズ」、自社探査組織である「ダカール・サーベイズ」があります。
 ディープの独立星系に本拠を置く大企業にありがちなことですが、同社は業績向上のために非倫理的で不道徳な、明らかに非合法な活動にも手を染めています。「逮捕されそうにないなら、試す価値はある」という経営方針を持つ、かつての《略奪者》にも匹敵する悪辣な企業なのです。

スコティアン・ディープ貿易社 Scotian Deep Trading Company
 スターリング(1415)に拠点を置いていた貿易企業であるSDTCは、874年に交易所を建設したレジャップール(1218)でのジャイヘ貿易により急速に拡大し、1024年の王朝危機の際にはキャンベル卿(後のエドワード公王)を支援することによってスコティアン・ディープ星域内における権力と名声(経営者のロバート・アームストロングは、この功績により男爵位を授けられています)を得ました。
 しかし1108年のレジャップールでの反乱をきっかけに業績は傾き、1113年末にカレドン・ベンチャーズによる買収を受けて同社は吸収合併されました。

メデル・メガマート Medel's Mega Mart
 ジェリム(2416)に本社を置く帝国企業のメデル・メガマートは、リーヴァーズ・ディープ宙域とダイベイ宙域に展開する大型倉庫店の安売りチェーン店です。同社はシェイマス・メデルによって815年に創業され、帝国領内の大部分のA・B・Cクラス宇宙港世界、および非帝国の人口1億以上のAクラス宇宙港世界に合計約300店舗を出店しています(※創業300周年の1115年に300店目をカイスネス(リーヴァーズ・ディープ宙域 1217)に出店する見込みです)。
 同社の仕入先は基本的に地元世界からですが、星系外の高TL商品も一部取り扱っています。地元企業がないような世界では貨物船を借りて外部から商品を仕入れ、複数の宇宙港があるような世界では複数店舗を出店していることもあります。

ヴィルヘルム工業 Vilhelm Industries
 916年創業のヴィルヘルム工業は5世代に渡る家族経営企業で、現在の取締役会長兼最高経営責任者はウィリアム・モーガン・ヴィルヘルム2世(William Morgan Vilhelm II)です。彼はジェリム(2416)経済界の重鎮でもあります。
 同社はTL10~13の宇宙船の製造を主とし、同時に各地の不動産も多く取得しています。同社の活動範囲はリーヴァーズ・ディープ宙域とダイベイ宙域ですが、帝国領内だけでなく独立星系やソロマニ領も含まれています。
 この50年で同社は経営を多角化させ、数々の有望な中小企業を買収しています。また最近では、海軍武官のウィリアム・モーガン・ヴィルヘルム3世伯爵(※2世の末子ですが、海軍への功績により伯爵号を授与されています)とのパイプを通じて、帝国海軍から多くの契約を受注しています。
(※伯爵になるには皇帝の決裁が必要なので(男爵までなら大公の権限で授与できる)、よほど大きな功績を挙げた可能性もありますが、おそらくは知らずに設定を盛り過ぎたのでしょう。海軍の頂点ともいえる宙域艦隊提督も貴族界では男爵級の人事に過ぎないので、武官として勤続20年程度のウィリアム3世氏には士爵あたりが適切ではないかと思われます)

カレドン・ハイランダーズ Caledon Highlanders
 公王国海兵隊大佐だったウィリアム・フレーザー卿(Colonel Sir William Fraser)が退役直後の1098年に結成したこの傭兵部隊は、リーヴァーズ・ディープ宙域に加えて隣接する帝国やソロマニ領内でも、高い戦闘技術を持つ部隊という評判を得ています。
 しかし財政面に不安を抱える彼らは、現代戦に向いた装備(特に砲門や機甲車両)を十分に整える事が難しく、交戦相手が自分たちより技術面で劣るような勢力と多く契約しています。ただ幸運にも、ディープ宙域ではそういった状況は一般的です(※彼らはTL13で武装しています)。彼らは地元軍の最先鋒として戦う傍ら、徴兵された新兵や地元民兵の訓練も担当しています。
 ちなみに部隊の礼服は古代地球のスコットランド連隊(Black Watch)の流れを受け継ぎ、伝統的なキルト装束となっています。一方、野戦服は一般的な迷彩模様です。

テアーレイコイ Teahleikhoi
 リーヴァーズ・ディープ宙域で名高いアスラン傭兵部隊であるテアーレイコイ(「夕暮れの兵士団」などの意味)は、ウータア星域に本拠を置いています。約150年前に結成されたこの傭兵部隊は、イヤールア氏族(Iyhlua clan)の未婚女性が経営する企業の下にあります。
 同社の活動範囲はダークネビュラ宙域とリーヴァーズ・ディープ宙域で、アスラン氏族同士の戦争だけでなく、アスラン以外の恒星間政府とも契約していますが、これにより同社は氏族の影響力を広げているのです。
 テアーレイコイはラーレアフテア・ハリャワオウャ製の宇宙船を13隻保有しており、この高性能な船によって恒星間に展開する部隊の柔軟な機動性や制宙権や補給が支えられています。
(※名をTehleikhoiとする資料も存在します)

ラーレアフテア・ハリャワオウャ Larleaftea Hryawaowya
 最良のアスラン系造船会社としてリーヴァーズ・ディープ宙域中で有名な同社は、ロアア(0736)に造船所を構えており、その造船所には数々のアスラン氏族や企業が様々な用途(通商、探査、軍事など)の宇宙船を求めて訪れています。

トラサヤーラヘル Tlasayerlahel
 アスラン四大メガコーポレーションの中でも最大手であるトラサヤーラヘル(直訳すると「恒星間商社」)はイェーリャルイホ氏族の影響下にあり、同社の経営はイェーリャルイホ氏族の女性に委ねられています。氏族男性は経営方針を会社に示しはしますが、日々の管理はより適正のある女性によって行われています。
 トラサヤーラヘルは当初、イェーリャルイホ氏族領内の運輸を担うために設立されましたが、氏族の拡大に伴って同社も成長しました。現在ではアスラン領内全宙域の主要世界間の貨物や旅客の輸送を担っています。
 リーヴァーズ・ディープ宙域の成熟市場を求める同社は、カレドン系企業と激しく競争しています。


【参考文献】
・Ascent to Anekthor (Gamelords)
・Pilots Guide to the Drexilthar Subsector (Gamelords)
・Book 7: Merchant Prince (Game Designers' Workshop)
・Double Adventure 6: Night of Conquest (Game Designers' Workshop)
・Journal of the Travellers' Aid Society #12 (Game Designers' Workshop)
・Travellers' Digest #16 (Digest Group Publications)
・GURPS Traveller: Alien Race Vol.4 (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Humaniti (Steve Jackson Games)
・Traveller20: The Traveller's Handbook (QuickLink Interactive)
・Into the Deep #1,#2,#3,#4 (Brett Kruger)
・TAS-Net Library Data
・Traveller Wiki
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リーヴァーズ・ディープ宙域 ライブラリ・データ

2014-06-04 | Traveller
イザナク大提督 Grand Admiral Izanak
 ドレシルサー(1826)の群小種族イルサラ人の歴史の中で、最も重要な役割を担った《略奪王》(Reaver warlord)です。
 -1030年、強力な敵との戦いに敗れたイザナクは逃亡先のドレシルサー(1826)に着陸しました。彼はドレシルサーの3民族の中で当時最も遅れていた(といっても初期工業文明に達していた)イルサラ族を選んで、技術提供と引き換えに船の修理を手伝わせました。
 8年後、修復を済ませて星々の世界へ帰っていったイザナクのその後は、誰も知りません。

イルサラ帝国 Iltharan Empire
 群小種族イルサラ人は、-1030年に母星ドレシルサーに逃亡してきた《略奪王》イザナク大提督の船から核融合炉とジャンプドライブの技術を入手し、当時TL4~5程度だった技術水準を飛躍させました。その20年後には彼らは宇宙に飛び出し、そして彼ら自身の拡張主義的志向も手伝って、ドレシルサー周辺の星系を次々と併合していきました。
 しかし、誕生したばかりのカレドン公王国と遭遇・交戦したことで拡大の勢いは止まり、続く300年間は宙域に進出してきたアスランと第三帝国の狭間で没落していきました。それでも彼らは好戦姿勢を捨てず、暗黒時代の終わりとともに増加していった星間物流への襲撃をやめなかったので、イルサラ帝国と第三帝国は直接対峙することとなりました。
 最終的に、250年には当時イルサラ帝国領だったダンキネー(1624)、ラナルド(1526)、フルトン(1524)の反乱を公王国政府が支援し(※この3星系は元々カレドンからの植民星でした)、帝国軍の支援を受けたカレドン軍がイルサラ軍を次々と破って星々を解放していきました。そして268年、帝国海軍によるドレシルサー爆撃によってイルサラ帝国は終焉を迎えました。

ヴィルシャシュ Virshash 2724 DA86954-6 S 高人・肥沃 G Im
 群小種族ヴィルシの母星であるヴィルシャシュは、連星の片方から強力な放射線が降り注ぐ高重力惑星です。これらの影響で、ヴィルシは屈強な体に進化しました。
 ここはかつての第一帝国の勢力圏からは遠く離れていたので、ヴィラニ人の接触は受けませんでした。第三帝国加盟後に赤道の大きな島に宇宙港が建設されたのを除いては、ヴィルシャシュの風景は恒星間戦争末期の地球人探検隊が最初に見たものとあまり変わっていません。
 宇宙港は当然ながら帝国当局の管轄内にありますが、それ以外の土地は典型的なヴィルシ気質の「無秩序」の中にあります。非ヴィルシの訪問客に関する諸問題を解決するものを除けば、ここには法律制度は存在しません。しかしながら偵察局は小さな保安捜査部局を運営し、独立裁判所を経て、犯罪者を帝国の刑務所に送り込んでいます。これは帝国によるヴィルシへの親善の証で、大切な市民であるヴィルシを苛立たせないことは費用をかけるに値すると考えているからです。

宇宙港の虐殺 Starport Massacre
 イルドリサール(2326)で1109年に発生した事件のことです。
 この星は200年以上前からカーリル合集国の鉱業植民星として繁栄してきましたが、ダルドリーム大判官が合集国の実権を握って以降、新関税法施行による重税や基幹産業の国有化など抑圧的な政策が採られ、人々の不満は高まっていきました。
 そして1109年148日、宇宙港周辺で抗議活動を行っていたイルドリサール市民に対して合集国平和維持軍(Assembly Peacekeepers)が発砲して、デモ参加者314名が死亡しました。これをきっかけにイルドリサール全体で反乱の火の手が上がりました。
 ダルドリーム大判官はアスラン傭兵のテアーレイコイをも動員してイルドリサールに侵攻し、宇宙港といくつかの都市を制御下に置きましたが、惑星の大部分は傭兵部隊カレドン・ハイランダーズと契約した「イルドリサール愛郷戦線(Ildrissarian Patriotic Front)」の勢力下にあって、情勢は未だ流動的です。
(※「平和維持軍」とはカーリル合集国軍の総称のようです)

王朝危機 Dynastic Crisis of 1024
 カレドン公王国のコリン公王(Prince Colin)が後継者なく死去したことに伴い、1024年に発生した内戦のことです。第二次公王国内戦とも呼ばれます。
 王座を巡ってエドワード・キャンベル男爵(Edward, Lord Campbell)とデイビッド・マクスウェル伯爵提督(Admiral David, Earl Maxwell)の両派に分かれて戦いが始まり、財界の支援を受けたキャンベル卿が最終的にはダンバートンの戦い(Battle of Dunbarton)で勝利して、1025年004日にエドワード公王として即位しました。一方、敗れたマクスウェル伯は公王国領外のジェルメーヌ(2019)に逃れました。

ガージパジェ Gaajpadje 1124 E667874-4 低技・肥沃・富裕 G Na
 群小種族ジアージェの故郷であるガージパジェには、遠く離れた東大陸と西大陸、そしていくつかの群島や孤島が浮かんでいます。雑食の狩猟・採取動物から西大陸で進化したジアージェは、やがてガージパジェ中に広がって文明を築きました。
 彼らはクデンシャール(Ku'densharll)と呼ばれる芸術に秀でた指導者を中心とした社会を構成しましたが、その影響範囲は1都市程度に限られたために都市国家が分立しました。そして戦いと和平の繰り返しの末に、西大陸の港町リジュジャ(Rijudjya)を形式上の首都とする都市国家連合の条約が調印されました。
 ガージパジェのあるエア星域は歴史的に星間交流が乏しい地域でした。ジアージェの伝承の中には第一帝国期のヴィラニ人探検隊との接触を示唆するものも含まれますが、継続した交流は行われませんでした。ヴィラニ人に続いてリーヴァーズ・ディープ宙域に足を踏み入れた地球人は、いくつかの入植地を宙域内に築きましたが、ガージパジェを訪れることはありませんでした。暗黒時代のこの宙域には《略奪者》が横行しましたが、ガージパジェの周辺はアスランの勢力圏が近かったので、避けて通られました(後に台頭してきた第三帝国も同じ理由で近寄りませんでした)。
 しかし-850年頃、一隻の軍艦が東大陸の山岳に不時着しました。乗組員はイルサラ人の兵士で、交戦後のミスジャンプでガージパジェに墜落してしまったのです。艦を修復する技術が失われて故郷への帰還を断念した彼らでしたが、定住するには十分な知識は残っており、男女比の面でも人口拡大に支障はありませんでした。
 やがてクトリング(K'tring)と呼ばれるようになった彼らは、無慈悲で軍国主義的な文明を築き、軟弱で下等とみなした東大陸のジアージェ都市を1000年以上かけて征服し尽くしました。しかしジアージェより上とはいえ彼らの当時の技術では、ガージパジェの広大な海を横断して西大陸に攻め込むことはできませんでした(ただし一部のクトリング族は海を渡って、西大陸のジアージェ都市にスラム街(ゲットー)を構築しています)。
 状況が一変したのは1050年頃です。人類国家のカレドン公王国系企業であるカレドン・ベンチャーズ社は、新たな市場を求めてガージパジェの調査を始めました。過去の伝承や記録になかった人類文明クトリングの存在には衝撃が走りましたが、彼らには商売先としての魅力が乏しく、一方でジアージェの美術品は人類世界のどこに持って行っても高値が付くことが期待できました。
 1108年にカレドン・ベンチャーズ社は商業使節をリジュジャに送り込み、貿易協定の調印に成功しました。ところが調印を祝う宴が催されていたその夜、東大陸のクトリングは(ガージパジェでは新技術の)滑空輸送機による奇襲をリジュジャにかけました。彼らは、西大陸のジアージェが外世界との交易で新たな資源と武力を手に入れる前に征服を試みたのです。しかしこの攻撃は、商業使節の乗組員が宇宙船を自力で奪還したことで失敗に終わりました(※TL6の軍隊ではA2型商船一隻でも歯が立ちません)。
 現在、リジュジャにはCタイプ宇宙港の建設が進んでおり(※1120年までには完成しているようです)、今後の交易の拡大が期待されます。また、クトリングの方もソロマニ連合(もしくはアスラン)と接触したと噂されています。ジアージェとクトリングの両者が宇宙に目を向けたことで、この惑星は新たな時代を迎えたと言えるでしょう。
(※ガージパジェがTL4評価なのは、帝国の第二期探査でクトリング文明の存在が見落とされたからのようです)

コベントリー Coventry 1723 X565733-2 低技・農業・肥沃 R G Cd 刑務所
 コベントリーは、隣接するダンキニー連合が管理する刑務所星系です。約350年前に収容が始まって以来、ここは政治犯や刑法犯といった「好ましからざる者」を人道的に扱う場として効果的に運営されています。
 地軸の傾きによって季節変動が極端であるのを除けば、コベントリーはかなり過ごしやすい惑星です。よってここに収監されること自体が重罰というわけではありません。しかし連合海軍はガスジャイアントの衛星に監視所と2隻の10000トン駆逐艦を配備し、厳重な監視体制を敷いています。ガスジャイアントに立ち寄っての燃料補給は許可されていますが、速やかに星系外に出ることが求められます。当然コベントリー自体への着陸は禁止されていて、無許可で接近すると発砲されます。
 「08年反乱」の首謀者であるトーマス・バーナム提督が1110年に収監されて以降、監視所は戦闘機や小艇の発着能力が増強され、人員も増やされるなど、保安体制が強化されています。バーナム提督の奪還計画の噂はいくつもあり、それらが結実しないようにするためです。

ジャイヘ Jaihe
 レジャップール(1218)原産のジャイヘ(現地語でジャイヘブレク(Jaiheblek))は、人気のある温かい飲み物に加工される植物です。846年からSDTC社によって現地からの輸出が始まったジャイヘですが、1108年のハッピルーヴァ人蜂起(revolt of the Happirhva)以降は入手が困難となっています。

ジュラの墜落痕 Crash Jura
 グレンシエル(1912)のジュラ高地(high plateau of Jura)にある墜落痕は、初期ジャンプ技術で造られたサイエの宇宙船の残骸と考えられています。推定で約3700年前からあるこの遺構は、サイエに関心を持つ多くの考古学者や歴史家を惹きつけ、カレドン公王国と帝国の研究者同士が遺構への接触を巡って論争する事態にもなりました。結局宇宙船は、最終的にカレドン(1815)の研究所に移されました。
 宇宙船の中からは、サイエの従属種族(イン=ツァイやルーシャナなど)の美術品の他、破損こそしていましたがサイエの軍事基地で用いられたと思われる水晶の鍵(crystal key)が見つかっており、注目を集めています。

ストラスモア伯爵ジェームス・リード提督 Admiral James Reed, Earl of Strathmore
 -136年生、-56年没。出身はカレドン(リーヴァーズ・ディープ宙域 1815)。
 ストラスモア伯爵提督は、初期のカレドン海軍の偉大な提督です。イルサラ帝国に対する彼の勝利は、誕生したばかりのカレドン公王国がリーヴァーズ・ディープ宙域の勢力図を塗り替えるきっかけとなりました。
 金物屋の息子として生まれ、青年士官時代に《略奪者》討伐において数々の功績を挙げた彼は、-90年に艦隊提督に就任すると-86年の「ヴィクトリーの戦い」にて大勝利を収めました。この輝かしい勝利の後、-64年に退役するまで彼は艦隊を指揮して公王国に貢献しました。今では「公王国海軍の父」の一人として尊敬されています。
(※この設定だと、彼が「ストラスモア伯爵」の称号を得たのはヴィクトリーの戦いの後と考えるのが自然でしょう)

デイビッド・マクスウェル伯爵提督 Admiral David, Earl Maxwell
 マクスウェル伯爵提督はコリン公王の死後、エドワード・キャンベル男爵とともにカレドンの玉座を求めました。1024年に内戦が始まるとマクスウェル軍は戦闘において優位に立ち、そしてマクスウェルは自身を「デイビッド5世」の地位に就かせました。
 しかし同年後半のダンバートンの戦いで彼の艦隊は破られ、彼を支持する最後の砦であるロブ・ロイ(1917)にて敗北が決定的となるまで指揮を執りました。その後の彼は逃亡生活を送り、スカイー(2018)を経てジェルメーヌ(2019)に亡命しました。
 そして彼の子孫は今も、自分こそが公王国の正当な統治者であると主張し続けています。

天的聯盟 Celestial League
 現在の和諧同盟の前身である天的聯盟は、-2000年代に築かれた中国系ソロマニ人入植地を起源に持つウータア星域とエアコイ星域のいくつかの世界から構成されていました。暗黒時代の間もジャンプ技術を維持し、時折《略奪者》の艦船の供給源ともなりました。
 フトホルの和約が締結されるまではアスランとの絶え間ない紛争が聯盟を強く結びつけていましたが、その後まもなく内部抗争によって分裂しました。856年に和諧同盟として再結集するまで、かつての加盟世界は何世紀もの間、戦争によって苦しみ続けました。

ドリンサール・ループ Drinsaar Loop
 リーヴァーズ・ディープ宙域の3星域(エアコイ、ドリンサール、ドレシルサー)に跨るドリンサール・ループには、23の星系が含まれています。この星団のトレイリング端にあるドリンサール(2032)は、人類がこの近辺を探査する際に玄関口となった星系で、現在ではかつてほどの重要世界ではないものの、その名前は星団の名称に残されています。

ドレシルサー Drexilthar 1826 B46969D-7 S 非工・富裕 A G Cs
 ドレシルサーは奇妙な惑星です。水界の量はその低重力に対してあまりに多く、古代期の大規模な惑星改造が疑われています。海にしか生息していない土着の生命体は原始的で、大部分の生命は既知宙域各地から太古種族によって持ち込まれたものです。
 主要な3大陸は回帰線帯に位置し、全体的に寒冷なこの惑星の中でも一年中快適に過ごせます。しかし赤道地域でも氷山が流れ込んでくるため、遠洋航海は非常に危険です。
 ここを故郷とするイルサラ人が近代化する前の陸地の多くは密生した樹林に覆われ、そこはオーロクス(※家畜牛の祖先)やマストドン(※象の一種)や剣歯虎が支配していました。その後のイルサラ人の文明の進歩は生態系に多少の影響を与えましたが、それ以上に帝国による286年の核攻撃は生態系に深刻な影響を与えました。
 ドレシルサーの住民は極端に軍国主義的で、攻撃的で、政権に従順で、弱者への同情や慈悲の心を持ち合わせていません。この文化は、政府が実施する厳しい軍事訓練によるものです。ドレシルサーの人々こそが銀河で最も優秀な人類であると教えられ、外世界人は弱虫だと軽蔑されます。地元の過大な治安警察と外世界人への差別により、トラベラー協会はこの星系にアンバー・トラベルゾーン指定をしています。しかしこの星の宙域史における存在感もあってか、少なくはない訪問客は監視付きで惑星内を歩き回ることが許されています。
 ドレシルサーは先進技術の入手に非常に関心を持っていますが、技術移転はダンキニー連合、カレドン公王国、帝国、カーリル合集国の間の暗黙の了解によって禁じられています。
 この星系の帝国偵察局基地はガスジャイアントの衛星に建設され、専門家がドレシルサー社会を詳しく調査しています。また小惑星帯がドレシルサーのすぐ外側の軌道にある関係で、この惑星は流星が落下しやすい環境にあります(年1回の頻度で直径2~3メートル程度の物が落ちてきますし、古代イルサラ文明の一つが隕石激突で滅んでいることも確認されています)。よって偵察局基地は、ドレシルサーに警告を発するための「全天監視」の機能も兼ね備えているのです。

風霊獣 Windstalkers
 グレンシエル(1912)のアネクトール山を訪れる狩人や登山者の間で語られる話として、到達できないような高い岩棚の上から獰猛な「風霊獣」が吠えて、登山者の死を予告するというものがあります。話に出てくる四足獣はグレンシエルの生物形態である六足獣とは異なるため、一般的には虚構と退けられています。
 しかしそれでも、何人かの者は間違いなく何かを見たと確信しています。

フタリェア Htalrea 1226 E767610-0 低技・農業・肥沃・非工 Na
 未開発の原始世界であるこの星は、貴重な香水の元となるリッス(risth)(体重200kgほどの獰猛な襲撃型動物)の原産地です。この香水はアスラン商人の大きな興味を惹き、フタリェアの主要な輸出品となりました。
 1109年にカレドン・ベンチャーズ社は交易目的で原住種族ポリフェミーに接触し、1113年にはトラサヤーラヘルの独占市場を崩すためにこの地に交易所を建設しましたが、その翌年、トラサヤーラヘルの報復に遭って交易所は破壊されました。

「ブラックジャック」デュケイン "Blackjack" Duquesne
 彼は-1120年から-1100年頃に存在したとされる悪名高い《略奪者》です。多くの民話や伝承が彼と宇宙船スカイラーク・デュケイン号について伝えていますが、彼についての歴史資料は驚くほど少ないのが実情です。

ブルーレ Bruhre
 ブルーレはダイベイ宙域を起源とする非人類知的種族です。彼らはがっしりとした六本足生物で、硫黄分を多く含む大気を苦にしません。例えばローレン(2311)の汚染大気でも呼吸可能で、むしろ「故郷に比べたら無味無臭」程度にしか感じていません。人類には有毒なローレン原産の動植物も、彼らには美味となります。
 ブルーレの生活に深く結びついた儀式や作法は、複雑で不可解に見えます。彼らは生涯のあらゆる面において、一つ一つの発言や行動にすら厳しい戒律と習慣の下で生きています。
 彼らはとても偏狭な種族でもあり、部外者にも自分たちを同じやり方を求めます。よって、ブルーレは一般的に他の主流帝国文化からは外れた存在です。
(※ブルーレの母星の場所についての公式設定はこれまで存在しませんでした。T5設定でコルヴェ(ダイベイ宙域 1729)であることになりましたが、他の設定との兼ね合いを考えると問題があるように思います)

マクベス号事件 MacBeth Affair
 1113年187日にマールハイム大公国領のミラク(1127)で発生した暴動の後、ダンキニー連合籍の商船マクベス号の乗組員が、関税法違反、無許可通商、大衆扇動、大公国治安維持局員(Ducal Security officers)への襲撃など17件の容疑で逮捕されました。
 大公国当局の公式見解では、マクベス号の乗組員が現地法に反して暴動を誘発したとしています。一方で企業側の調査員は、暴動がマクベス号への嫌がらせに対する現地市民の反発から起きたものだ、とする証拠を発見したと主張しています。

マット草 Matweed
 マット草は、スカイー(2018)の海上に厚く絡み合って浮かぶ植物です。適切に処理されれば優秀な食品となりますが、残念なことにその花粉は人類の8割に危険なアレルギー反応を起こさせます。

ヤリザメ Lanceshark
 ヤリザメはメル(2414)原産の、小さな雑食性水棲生物です。その味の良さは発見後すぐに知れ渡りました。
 ヤリザメは回遊性生物で、彼らの移動距離はその生涯でメルの半球ほどにもなります。繁殖率は高く、現地の「筏集落」が群れのそばで捕獲を続けていても群れ自体に全く影響を与えないほどです。

ヤロスラフの戦い Attack on Jarslav
 多くの歴史家が《略奪者》の衰退のきっかけと指摘するのがこの戦いです。-1118年、《略奪者》たちとオピリョク防衛連盟(Opljiok Defense League)がヤロスラフ(ソロマニ・リム宙域 0123)で激突し、《略奪者》たちは全軍の3分の2を失う大敗を喫しました。
(※オピリョク防衛連盟の実態については長らく公式設定が存在しなかったのですが、マングース版『The Solomani Rim』ではその名前こそ直接出てこなかったものの、「略奪者と戦ったのは『テラ商業共同体の支援を受けたディンジール連盟』」と記述されたため、恒星間共同防衛条約の類ではないかと思われます)

ラジャンジガル Lajanjigal 1721 DAB6583-3 低技・非工・非水 G Na
 不気味な黄緑色のもやに覆われたラジャンジガルは、人類にはとても厳しい環境です。防護措置なしでは大気の腐食性塩素によって、あっという間に死んでしまいます。しかしこの星は腐食性大気に適応した多彩な生物の宝庫であり、知的種族ラングルジゲーの故郷でもあります。
 知的生物学者以外には特に興味を持たれなかったラジャンジガルでしたが、30年ほど前にダカール・コーポレーションの調査によって、様々な希土類や放射性元素が豊富な世界であることが明らかになりました。しかし従来の鉱業技術では、惑星の大気の影響で法外な費用がかかることもわかりました。
 そこでダカール社は、腐食性大気の中でも問題なく働ける原住民ラングルジゲーの「雇用」を実施しました。一方的な宣言にラングルジゲー側が抗議した際に、2つの集落を艦載艇でミサイル爆撃するという、とても穏やかとは言えない手法によってでしたが。
 降伏したラングルジゲーは事実上の奴隷労働力となり、過大な生産目標と厳しい処罰が与えられました。外世界のいくつもの団体がダカール社の高圧的なやり方に抗議しましたが、ラングルジゲーがダカール社に抱く恐怖心と外世界人に対する不信感から、支援はうまくいっていません。
 ダカール社が所有するDクラス宇宙港相当の小さな軌道施設には、武装小艇、異種大気戦訓練を受けた傭兵小隊、技術者や現場監督などの職員が詰めています。運送業者は定期的に鉱石を運ぶためにこの星を訪れますが、それ以外の来訪者はほとんどありません。

「乱暴者」アリソン・マードック Alison "Hellion" Murdoch
 「乱暴者」マードックはフトホルの和約(380年)以降の有名な《略奪者》です。様々な創作物で知られる彼は、393年にチャニング准将(Commodore Channing)が指揮するカレドン軍によってブラックウィドウ号と共に撃破されました。
 彼が奪い取った財宝の多くは、今も見つかっていません。噂では一部は愛船と共に失われたが、多くは彼だけが知る秘密の隠れ家に残されている、とのことです。そして財宝の存在は、えてして詐欺師たちが撒く餌の材料にもなっています。
(※ちなみに、かつて出版されたシナリオ『Hellion's Hoard』(今はJTAS Onlineで読めるそうです)はデーンロウ(1136)を舞台にしていて、そこに秘宝があったりなかったりするのかもしれません)

リッスセント Risthscent
 フタリェア(1226)原産の動物であるリッス(Risth)の香腺から採れるこの香水は、人類やアスランだけでなくジアージェなど様々な種族の間で高い需要があります。
 なおリッスは森林地帯の洞窟や岩地を住処とするので、狩猟するには徒歩で捜索するのが最適となります。
(※シナリオ『Trading Team』の表紙に描かれているのがこのリッスだと思います)

レヴィー肉 Leviemeat
 レヴィー肉はスカイー(2018)のレヴィーから加工される、人気のある食品です。レヴィー(「レヴァイアサン」の略)は深海に生きる巨大生物で、体重は最大100トンにもなります。
 狩りは6隻一組の小さな潜水艇によって行われ、仕留めた後に潜水夫によって装着される空気袋によって地表まで引き上げられます。それはとても危険な仕事で、レヴィーの尾の一撃で潜水艇ごと作業員がバラバラにされるだけでなく、仕留めた後でも大型の清掃生物と肉を争うこともあるのです。

レジャップール Rejhappur 1218 B651613-A 非工・貧困 A Na
 800年から875年にかけてのカレドン公王国における商業探査の拡大や、アスラン系企業との取引の開放は、エア星域やフリャロアア星域方面への通商路や通信網の整備を促しました。特に833年にダンマーロウ(0921)に公王国の属領地が設立されたことで、その必要性は強まりました。
 846年に惑星レジャップールの衛星クラシュラマル(Krashlamar)にあった小惑星鉱夫用のDクラス宇宙港がCクラスに拡張されると、レジャップール星系ではダンマーロウ方面と公王国間の流通量が増していきました。その頃カレドン系企業のSDTC社(Scotian Deep Trading Company)は宇宙港の管理権を獲得し、レジャップール本星の開発を見据えて探査をはじめました。そこで彼らは、原住種族ハッピルーヴァ人(のハップラーニ族)が時折収穫して飲料に加工していた自生植物ジャイヘ(ジャイヘブレク)に目をつけました。
 874年に交易所がカルダナウィの町(town of Kaludnawi)に建設され、当時の経営者ジェームズ・ダンバー(James Dunbar)は外世界人とハップラーニ族との友好関係を維持するために、地元民といくつかの貿易協定に調印しました。その後住民たちはジャイヘの耕作を続けました。ダンバーや彼の後継者たちの下でレジャップールにおける同社の存在は不動のものとなり、この世界はSDTCの主要な収入源となると共に、次第に発展していきました。
 1024年の王朝危機の際に勝者となったキャンベル卿を支援したことからSDTC社は宮廷内でも発言力を増し、男爵位を与えられたロバート・アームストロング最高責任経営者は、この権力をレジャップールでの社の影響力拡大に利用しました。アームストロング卿の管理下で、同社のジャイヘ農園(プランテーション)がハップラーニ族の耕作地に取って代わり、大規模な灌漑や最新農業技術の導入でジャイヘの収穫量は以前の20倍になりました。ハップラーニ族にとっても農園は良い「就職先」となり、賃金を受け取ると同時にハイテク装置の運用などから技術と知識を得ていきました。
 しかし農園は不幸ももたらしました。教育と技能を得ていったハップラーニ族でしたが、依然として自分たちが外世界人の雇い主の下に置かれたままであることに気付きました。さらに、人口を増やしていた外世界人たちは地元民を無知で野蛮だと見下し、地元の文化や宗教的伝統を蔑ろにしたので、これは両者の摩擦に繋がりました。
 本当の問題は、ハップラーニ族の居住地域だけでは手狭になったジャイヘ農園を、遊牧民ハッピジョム族が住む草原の方まで拡張していったことでした。土地を奪われた遊牧民の抗議活動は激化しましたが、1059年の「シンブラの戦い(Battle of Simbula)」でSDTCの傭兵部隊が10倍の遊牧民連合を破り、入植地の安全を確保しました。
 その後、ハップラーニ族で構成される「ルヴァッカ(現地語で「支援」の意)部隊」が設立され、外世界人将校の指揮下で通常任務に割り当てられました。同時に傭兵部隊への依存度も減らすことができましたが、いくつかの外世界人部隊はカルダナウィやダンバー地上港(Dunbar Shuttleport)といった重要施設に残されました。
 シンブラの戦いを経て、SDTCの拡大はたがが外れたようになりました。ハッピジョム族は肥沃な土地からますます追い出され、農園で安定した仕事を得るのと引き換えに遊牧生活をやめるよう推奨されました。しかしそれに従ったのは少数の人々だけでした。
 破滅のきっかけは、1098年に草原地方のナハワイジョム(Nahawaijohm)に建設された新入植地でした。1103年までここには遊牧民の襲撃が相次ぎ、傭兵やルヴァッカ部隊を回したもののナハワイジョムは4度も炎に包まれました。
 SDTCの数々の失策により、1105年にはレジャップールはもはや制御不能に陥っていました。それでもSDTCの新経営者のパーシバル・ジャメイスン卿(Sir Percival Jameison)は、尊大にも「遊牧民共を再び支配下に収める」と決心していました。彼は武力によって更なる土地収用を進めようとしましたが、これは彼自身の死刑執行状に自分で署名したようなものでした。
 彼らはなぜ地元民が激怒しているのか理解できていませんでした。ハッピジョム族はおろか、SDTCの支配下に組み込まれたハップラーニ族ですら、外世界人が持ち込んだ「何もない所から水が湧き出す」灌漑装置は「邪悪な魔術」に見えていて、決して納得はしていなかったのです。それに外世界人が地元民を軽んじていたことも加わり、次第に地元民の心情は遊牧民寄りに傾いていきました。
 1108年、パジナウィ(Pajnawi)の農園を視察に訪れたジャメイスン卿は、カルジャキ(Kaludjaki)の草原居住者に対する容赦無い焦土化作戦に抗議する群衆に直面しました。暴徒に苛立った彼は駐屯部隊に鎮圧を命じましたが、これが大きな誤算でした。ルヴァッカで構成されていた部隊は反旗を翻し、56時間後にはジャメイスン卿一行を含めたパジナウィの外世界人は全員殺されていました。そしてその情報は燎原の火のようにレジャップール中に広まり、ルヴァッカ部隊はほとんど反乱を起こしました。地元民はルヴァッカを支持し、パジナウィと同等の虐殺が各地の集落で繰り返されました。傭兵と企業側の残り少ないルヴァッカ部隊だけでは、防御拠点に逃げ込んだ外世界人が救出されるまで持ちこたえることは極めて難しいことでした。
 結局、この1108年の反乱とその後のカレドン公王国による介入は、SDTC社の没落に直結しました。現在では公王国軍の撤退と併せて、星系の新たな統治者となったカレドン・ベンチャーズ社の守備隊が置かれ、ジャイヘ輸出の再開が検討されています。

ロジャー・マクスウェル Roger Maxwell
 ジェルメーヌ(2019)に亡命中であるマクスウェル家の現在の当主で、「公王ロジャー1世」を僭称している人物です。中年の彼はアルコールや薬物の中毒者で、己の快楽のために玉座を求めていると一般には知られています。


【参考文献】
・Pilots Guide to the Drexilthar Subsector (Gamelords)
・Double Adventure 6: Night of Conquest (Game Designers' Workshop)
・Travellers' Digest #16 (Digest Group Publications)
・GURPS Traveller: Alien Race Vol.4 (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Humaniti (Steve Jackson Games)
・Third Imperium: The Solomani Rim (Mongoose Publishing)
・Into the Deep #1,#2,#3,#4 (Brett Kruger)
・Candles Against The Night (Keven R. Pittsinger)
・TAS-Net Library Data
・Traveller Wiki
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