宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

『Cepheus Engine』で始めるロールプレイング・ゲーム入門(6)

2016-09-08 | Cepheus Engine
 宇宙船を動かすには何かとお金がかかります。今回は、自分で貿易商船を購入して運用する場合の支出(Starship Expenses)と収入(Starship Revenue)について解説していきます。


 まず支出の方から。前回紹介した200トン貿易商船の場合、購入金額は約35メガクレジットという大金がかかっています(というか「たった」35億円で恒星間宇宙船が買えるぐらいに「安くなった」と考えることもできますが)。一括購入できるような富豪でもなければローンを組むことになりますが、この場合でも購入金額の20%は頭金として支払わないといけません。34.929✕20%=6.9858ということで、約7メガクレジットは用意する必要があります。
 今回はこれはどうにかして払ったとして、残る返済額は船体価格の240分の1ずつを480ヶ月かけて払うことになります。つまり頭金と合わせて船体価格の220%が利息を含めた総支払額となるのです。
 前回解説した通り、商用宇宙船の運行は2週で1セットとなるため、精算も2週あたりで計算することにします。2週分の返済額は34.929÷240÷2=0.07276875、単位をメガクレジットからクレジットに直すとCr.72769となります。
(※頭金のくだりは『Cepheus Engine』では曖昧なのですが、総支払額が購入額の220%と明記されているので間違いなく頭金は20%です)


 続いて運行経費について。精製済燃料(Refined fuel)は1トンあたりCr.500ですので、満タンにするにはCr.500×24トン=Cr.1200かかります。ここをCr.100の非精製燃料(Unrefined fuel)にしたり無料の燃料スクープなどによって浮かすこともできますが、ここでは一応ちゃんと支払っておきます。
 船室の環境維持費(Life Support)は1室ごとに1月あたりCr.2000かかります。これは酸素供給や食料など、その船室で生きていくのに必要なコストが全て含まれます。一方冷凍寝台はそういったコストを抑えられるので、1月Cr.100で事足ります。この船の場合は、船室10・冷凍寝台20ですから((Cr.2000✕船室10)+(Cr.100✕寝台20))÷2=Cr.11000が2週間あたりのコストとなります。
 宇宙船の安全運行のためには、年1回の定期補修(Routine Maintenance)も欠かせません。それにかかる金額は購入額の0.1%で、造船所で行う必要があります(つまりAかBクラス宇宙港の星系に出向くのです)。(『Cepheus Engine』では明記がありませんが)作業には2週間かかり、当然その間の収入は全くなくなってしまいますが乗組員の給与などは支払わなくてはなりません(一応「月給」ですし…)。この定期整備を怠ると船がどんどん破損してしまうので、いざという時にお金がなくて困らないように積み立てておきましょう。船体価格Cr.34929000✕0.1%÷25(※1年=52週で整備に2週ですから動かすのは50週、計算は2週単位ですからさらに半分)≒Cr.1398が1回あたりの積立額となります。
 先程も出ましたが、乗組員への給与(Crew Salaries)も必要です。今回は自分が航法士を兼ねるとして、操縦士1名、機関士1名、接客係2名、船医1名を雇用することにします。砲手は諦めます(笑)(現実的に見て、商船の砲門ごときで海賊船に対抗できるとは思えません)。2週間あたりの支払額は(6000+4000+3000✕2+2000)÷2=Cr.9000です。
 宇宙港では停泊料(Port Fees)も必要です。これは6日間でCr.100、延長料は1日でCr.100です。今後どうなるにせよとりあえずCr.100は払います。

 この時点で総コストは72769+1200+11000+1398+9000+100=Cr.95467。損益分岐点は10万クレジット弱ということになりますので、それを目指してこれから商売に励みましょう。


 続いて収入について。商業宇宙船の収入源は、主に旅客(Passengers)、貨物(Bulk Cargo)、郵便(Mail)の各輸送業務が柱となります。旅客と貨物は、現在停泊中の宇宙港の規模に応じてサイコロを振って船荷・乗客表(Table: Available Freight And Passengers)を参照し、船に積めることのできる分だけの運賃収入(貨物は1トンでCr.1000、旅客はチケット通りの価格)が得られます。
 一方、郵便輸送業務は恒星間政府や自治体との契約によって行われるもので、契約した場合は船倉を常に5トン空けておくことが義務付けられ、代わりに1ジャンプ運ぶごとにCr.25000を受け取ります(実際に運ぶ郵便物は1D-1トンです)。ただし郵便物を運ぶには船が武装しており、一定の通商路を行き来することが条件です。
 他に、私的な(えてして秘密の)郵便物や小荷物を預かって目的地で引き渡す(謝礼はCr.20~Cr.120が相場)、船の貸し切り(Charter)を引き受ける(非恒星間宇宙船なら船体1トンにつき1時間でCr.1(最低12時間)、恒星間宇宙船なら満杯にした際の収入の9割(2週間契約))ことで収入を得ることもあります。

 では実際に乗客や貨物を募ってみましょう。今、Aクラス宇宙港に停泊しているとして、表を参照しながら期待値通りの反応があったとすると、貨物が100トン、特等船客が10人、一等船客も10人、二等船客が30人集まります。船の輸送能力は貨物が85トンと船室が7、冷凍寝台が20ですから満杯どころか溢れます。ということは、貨物からの収入がCr.85000、特等船客からCr.70000(そして一等船客は全員断る)、二等船客からCr.20000が得られます。合計でCr.175000ですから、約8万クレジットが1ジャンプの儲けとなります。

 しかし飛んだ先がCクラス宇宙港で、そこで募集をかけたらどうなるでしょう。同じく期待値通りなら貨物が20トン、特等船客が2人、一等船客が7人、二等船客が10人しか集まりません。貨物収入がCr.20000、旅客収入が一等船客4人に2人部屋に入ってもらっても、特等Cr.20000+一等Cr.16000+一等2人部屋Cr.26000+二等Cr.10000=Cr.82000です。総計Cr.102000ですからかろうじて黒字といったところでしょうか。ちょっと募集が振るわないと赤字もありえます。その際には再募集をかける(サイコロを振り直す)手もありますが、1回の募集で3日が経過するので注意してください。

(※『Cepheus Engine』の貨物・旅客募集ルールは、出発星や到着星の人口や宇宙港やTLの差、旅行安全情報の有無、乗組員の技能レベルが一切考慮されない単純なものとなっています。また、2人部屋でいいかどうかはレフリーの裁量次第のようです。基本的にはNPCが夫婦や家族である場合のみに2人部屋を認めるか、始めから船室を2人部屋仕様に設計した場合だけでいいのではないでしょうか)


 このように、Aクラス宇宙港同士をずっと飛んでいればだいたい儲かりそうな気もするのですが(プレイヤーに悪用されそうだ…)、そればっかりとはいかないでしょう。やはりリターンが欲しければリスクを負わないといけません。そこで投機貿易(Speculative Trading)です。
 投機貿易とは、自分で商品を仕入れて自分で運び、自分で売って差額を利益で得る商売方法で、うまく当てられれば大儲けも可能というのが魅力です。

 では実際にやってみましょう。まず売り手を探すところから始めます。これは本来〈ブローカー〉(や、闇市場の商品なら〈交渉〉)を使って1D日かかる行為なのですが、TL8+の世界にいるのならネットで〈コンピュータ〉を使って1D時間でささっと見つけてしまうこともできます(笑)。難易度は並(±0)ですが、宇宙港の規模に応じてプラスDMが入るので、だいたい見つかるでしょう。

 続いて売り手が何を売りたがっているか、『Cepheus Engine』116頁の一般商品表(Table: Common Goods)か貿易商品表(Table: Trade Goods)でサイコロを振って決めます。前者か後者のどちらの表を振るかはレフリーの裁量だそうですが、前者は宇宙のどこでも産出されてどこでも需要のある安定した商品、後者は星々によって価値の変わってくる商品が並んでいます。

 貿易商品表で一番注目すべきなのは、購入(Purchase)と売却(Sale)にかかるDMです。これはその星の貿易分類によって支払い時の判定に掛けられるDMが記されているのですが、例えば26番の「反重力機器(Grav Vehicles)」だと基本価格は16万クレジット、トン数は1D、購入DMは「高人(Hi)+3、富裕(Ri)+2」、売却DMは「非工(Ni)+2、貧困(Po)+1」と書いてあります。購入・売却のDMはプラスの分だけ安く購入/高く売却できる可能性が増えるので、高人口や富裕世界で買い付けて非工業や貧困世界に持って行けば儲けられそうな商品だ、ということがわかります。
(※『Cepheus Engine』ではマイナスDM、つまり農業世界で農産物を売ろうとすると買い叩かれる、ようなことはなくなりました)

 では実際に買い付けてみます。〈ブローカー〉技能による判定を行い、その結果で価格修正表(Table: Modified Price Table)を見るのですが、先程の貿易分類によるDMに該当していたらそれも加えられます(複数該当する場合は一番高いDMのみが適用)。そして簡単に言えば結果が8+なら基本価格よりも割り引いて仕入れることができます。価格に不満なら断ってもいいのですが、再交渉は1週間後になってしまいます。

 そして商品を別の星に運んで今度は買い手を探し(判定は売り手を探すのと同じです)、売却金額を先程と同様に価格修正表で決めて実際に売るかどうかを考慮します。
 反重力機器の例だと、〈ブローカー-1〉を持つ船長なら期待値的には高人口世界から非工業世界に運ぶだけで8万クレジットの儲けが期待できます(70%で買えて120%で売れそうなため)。しかもたった3~4トン程度の商品を運ぶだけで、です! そううまくいかないのが世の中ではありますが。

 また、買う際売る際に地元の仲買人(Local Brokers)を雇うこともできます。これなら自分が〈ブローカー〉を持たなくても仲買人の〈ブローカー〉技能レベルで判定を行うことができますが、当然高い技量を持つ仲買人の手数料は高額です。しかも、その地の宇宙港クラスで〈ブローカー〉技能レベルの最大値が決められます(例えば4レベルの仲買人はAクラス宇宙港にしかいません)。
 仲買人の手数料は最終価格の(技能レベル✕5)%で、その分が直ちに持って行かれますが、DMと表の兼ね合いで損をすることはありません。自分の目利きに自信がないのなら絶対に雇いましょう(ただし価格に不満があっても手数料は払わなくてはなりません)。もちろん腕利きの仲買人をレフリーが素直に出してくれるかどうかは別ですが…。
(※『Cepheus Engine』では、地元の仲買人を介さない取り引きは御法度、という設定は紹介されていません)

 このように旨味も大きい投機貿易ですが、買い手が見つからなければいつまでも船倉に置かれて場所を食うだけになってしまいますし、シナリオ進行の過程で商品が破損してしまう可能性もあります。臨検で書類の不備を見咎められて没収、なんてことはレフリーのよく使う手口です(笑)。
 そもそも売り手の登場がランダムである以上、商品を狙って安く買えるチャンスは意外と少ないのです。それでも狙って高く売ることは可能ですから、やってみる価値は十分にあります。

 他のRPGでは類を見ないこの「貿易ゲーム」は、一人遊びにも向いています。貿易分類を参照することから自然とUWPの読み方も身につきますし、無味乾燥な星域図に経済の流れを感じ取ることができるようになります。貿易産品からその星の産業をイメージしたりと、UWPに「命を吹き込む」にはもってこいです。
 この貿易を中心にキャンペーンを組み、うまく情報を流したり小荷物で目的地へ誘導したりするのが王道中の王道の遊び方ではあるのですが、プレイヤーが金儲けに夢中になり過ぎないようにレフリーは気をつけてください。冒険そっちのけでは本末転倒ですし、あまり懐が豊かすぎると、人間、危ない橋は渡ってくれませんしね(笑)。


 次回はようやく個人戦闘について。

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