宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

『Cepheus Engine』で始めるロールプレイング・ゲーム入門(1)

2016-08-02 | Cepheus Engine
Take a science fiction odyssey to distant worlds of the galaxy...

 「入門」などと仰々しいタイトルがついていますが、日本のRPGの幕開けを告げた『タクテクス』誌の連載記事「ロールプレイング・ゲーム入門」への単なるオマージュで、特に深い意味はありません。
 改めて、この企画は『Cepheus Engine』を初心者向けに解説するふりをして自分もルールへの理解を高めようと、二兎を追うものです(汗)。早い話が詳細レビュー記事です。長期間かつ不定期の掲載となると思いますが、お付き合いよろしくお願いいたします。


 『Cepheus Engine』とは、副題の「A Classic Era Science Fiction 2D6-Based Open Gaming System」が示す通り「古典SF宇宙」を舞台にした2D6系のRPGです。この「古典SF」が何を指すかは設定次第ではあるのですが、共通認識としては「超光速航法が実用化された未来」を舞台としていると捉えてください。数十、数百、数千もの星々を治める恒星間国家が存在し、人類以外の異星知的種族と共存したり敵対したりしているわけです。イメージが難しければ映画『スターウォーズ』みたいなもの、と考えてください(あんなに派手ではありませんが)。そしてプレイヤー・キャラクターは宇宙各地を旅して、他の星にはない素晴らしい体験をしたり、金儲けに勤しんだり、迷宮のような官僚機構に振り回されたり、様々なトラブルに巻き込まれたりするのです。冒険のネタは、それこそ星の数ほどあります。

 ここで注意すべきなのは、他のゲームと違ってプレイヤー・キャラクターは普通の人だということです。無防備に銃で撃たれれば大怪我をしますし、傷は簡単には治りません。いざという時にダイス目を操作するルールもありませんから、最後の最後の失敗で今までの苦労が水の泡になることもあります。でも、それが普通の人の人生ってものです(笑)。
 だからこそ、プレイヤーは必死になるしかないのです。戦闘に勝ちたければ事前に装備を整え、味方を増やし、敵の弱点を探り、地形を読み、隙を突き……と、戦う前に勝てる条件を全て満たしておくのです。というより、そもそも死にたくなければ極力戦いを回避する方向に知恵を絞るべきなのです。
 キャラクターにしても、20代の若造の拙い技能だけで渡っていけるほど宇宙は甘くありません。30代40代の、社会の苦さも酸っぱさも知った『大人の』世界なのです(あえて「不利な」キャラクターを演じるのも楽しみの一つですが)。
 冒険を成し遂げたからといって経験点を貰って成長することもありません。じゃあ何が楽しみなのかと問われれば、金銭報酬もありますけど、結局は冒険の成功も失敗も全てひっくるめて「体験すること」が楽しみであり、人生の上での成長なのです。理不尽ではない失敗を受け入れられる『大人』かどうかが、このゲームを楽しめる鍵でしょう(そりゃ社会は厳しいので、理不尽な目にも多々遭いますが(汗))。

 『Cepheus Engine』には専用の背景設定は用意されておらず、自作するか別の所(ルール互換性のある『The Third Imperium』や『Clement Sector』など)から借りてくる必要があります。今では背景設定と一体となったゲームシステムは当たり前ですが、『Cepheus Engine』の精神的源流である1970年代は各自が自分だけの背景設定を築き上げていくのが当たり前でした。また、『Cepheus Engine』にはそれを支援するルール(星系作成ルール)が用意されているので、後は想像力次第で無限の可能性を秘めているのです(とは言うものの、凝り過ぎるとあっという間に挫折してしまいますけどね…(大汗))。

 あともう一つ。「Open Gaming System」とあるように、このゲームシステムは全ての人に開放されています。『Cepheus Engine』にはPDF版だけでなく、英語とはいえdocx版(Microsoft Word形式)も用意されていて、遊ぶ際に気に入らない点があれば変えてしまえばいいのです。もちろん独りよがりではいけませんが。


 ここで、『Cepheus Engine』で多用される独特の用語について予め解説しておきます。

レフリー(Referee)
一般的なRPGで言うところの「ゲームマスター(GM)」のこと。
2D
サイコロ(Dice)を2個振ってその合計値を求めること。このゲームでの判定は全てこの2Dで行う。「2」の部分はサイコロの数を指すため、1なら1個、3なら3個を意味する。なお、『Cepheus Engine』では6面体サイコロしか使わないため、ここでは一般的な表記の「2D6」から「6」を省略して「2D」と書くものとする。

計算式なら「足す」だが、文脈によっては「(左の数字)以上」という意味を持つことがある。例えば「2Dで5+」とだけ書かれていたら「サイコロを2個振って合計値で5以上を出す」という意味。逆に「-」は「以下」の意味で用いられる。
DM
サイコロの修正値(Dice Modifier)のこと。「DM+2」なら「サイコロの出目に2を加える」、「DM-3」なら「出目から3を引く」という意味。


 では、実際に宇宙に旅立つキャラクターを作っていきましょう。『Cepheus Engine』では前述した通りの「社会のままならなさ」を存分に体感できるキャラクター作成システムが採られています(汗)。

■キャラクターの能力値(Characteristics)
 『Cepheus Engine』におけるキャラクターは、以下の6つの能力値で表されます。

 筋力(Strength):腕っ節の強さを表す。
 敏捷力(Dexterity):身のこなしの素早さ、手先の器用さを表す。
 耐久力(Endurance):体の頑強さ、辛抱強さを表す。
 知力(Intelligence):頭の回転の速さを表す。
 教育度(Education):これまでの教育で得られた知識量を表す。
 社会身分度(Social Standing):現在の社会階層や育ちの良さを表す。

 当然ながら、数値の高い方が優れていることになります。人類の最高値はF(15)、並の人は7、最低値は1です。男女の差によって能力値に補正がかかることはありません。人類以外の種族を作成する場合には補正がかかる場合がありますが、今は考えないことにします。
 ちなみに、筋力・敏捷力・耐久力の3つを合わせて「肉体系能力値(physical characteristic)」、知力と教育度を合わせて「頭脳系能力値(mental characteristic)」と言うこともあります。
 なお第7の能力値として「超能力評価(Psionic Strength)」というものがあるにはありますが、普通の人には関係ありません。超能力はごく一握りの才能ある人がたまたま開花させる機会を得られた時のみに発現するものだからです(そうではない設定にするなら別ですが)。

 先ほど15のことを「F」と書きましたが、『Cepheus Engine』では「擬似16進数表記(Pseudo-Hexadecimal Notation)」で数値を書き表します。0から9まで来て、次の10はA、11がB、12がC、13がD、14がE、15がFとなるわけです。16進数だとその次は位が変わるのですが、あくまで「擬似16進数」なのでG、H、J…(I(アイ)とO(オー)は誤認防止のために使用しません)と33を意味するZまで続いていきます。もっとも、16以上を表すことはあまりないので、Fまでをすぐに換算できるようになれば十分です。

 能力値は2Dを振ってその合計値を筋力、次の2Dは敏捷力…と順に当てはめていきます。とルールには書いてあります。選択ルールとして「2Dを6回振って、それぞれの出目を任意の能力値に割り振っていく」という形式も紹介されていますが、いずれにせよたまたま2とか3が出てしまった場合は『Cepheus Engine』ではかなり不利になるため、以下のハウスルールを提案します。合議の上でどれか1つを選択ルールと組み合わせて採用してみてください。

  1. 2Dを7回振って最も悪い出目1回分を捨てる。
  2. 「3Dを振って一番低い目を捨てる」ことを2Dの代わりにして6回振る。
  3. サイコロの「1」の目を「3」と読み替える。例えば出目が1と4なら合計は5ではなく7となる。
  4. 5以下の能力値は振り直しを1回認める。振り直しても結果が元の数値以下だった場合は「元の数値+1」とする。

 そして能力値が決まれば、自動的に「能力値DM(Characteristic Modifiers)」が決定されます。能力値DMは「能力値を3で割って小数点を切り捨てて2を引いた」数値となるので、早い話が12が+2、11~9が+1、8~6が0、5~3が-1、2が-2となるわけです。この能力値DMはゲーム中の技能判定の他に、キャラクター作成でも用いられます。


■生い立ちによる技能(Background Skills)
 続いて、(選択ルールではありますが)そのキャラクターの出身星を決めます。レフリーが事前に用意したリストから選択したり、プレイヤーが自己申告したり、星系作成ルールに従ってその場ででっち上げたりしてください。どのような星で育ったかによって、予め貰える技能が変わってきます(海洋惑星なら〈船舶〉、砂漠惑星なら〈生存〉など)。
 この項目では「3+教育度DM」個だけ「0レベル技能」を得られます(「0レベル」の意味合いについては後述しますが、今は「1レベルの1個下の段階」とでも考えてください)。まず先に2個を出身星によって決まる技能(Homeworld Skills)から得て、不足分を基礎教育技能表(Primary Education Skills)から選んで習得します。
(※出身星を決めない場合は、基礎教育技能表の中から「3+教育度DM」個を選んで取得すればいいでしょう)


■経歴部門の選択(Careers)
 これでキャラクターはやっと18歳になりました。ここから社会の荒波に揉まれていくわけです(笑)。就職先となる「経歴部門」を以下から選びましょう(『Cepheus Engine』では大学や士官学校への進学は便宜上経歴に内包されていると考えてください)。

【軍隊系経歴部門】
海軍(Navy):宇宙艦艇に乗り込み、恒星間政府の安定のために宇宙空間を守り、時として敵国に攻め入る軍隊の一員。
海兵隊(Marine):主に海軍の艦艇に乗り込み、敵惑星への侵攻の役割を担う軍隊の一員。
空軍(Aerospace System Defense):惑星の大気圏内および亜宇宙軌道を防衛する軍隊の一員。
水軍(Maritime System Defense):惑星上の海洋を防衛する軍隊の一員。
地上軍(Surface System Defense): 惑星上の海洋以外の地表を防衛する軍隊の一員。ちなみに、水軍・空軍・地上軍をまとめて「陸軍(Army)」と呼ぶ場合もある。
偵察局(Scout): 惑星探査や住民との渉外、航路情報の調査、恒星間通信網の確保など、その仕事は多岐に渡る。厳密には軍隊ではない。

【その他の経歴部門】
工作員(Agent):政府や企業の敵となる者の情報収集などを担う、俗に言うスパイ。
運動選手(Athlete):何らかのスポーツで成功を収めた者。
官僚(Bureaucrat):政府機関の下で働く者。書類操作に強い。
外交官(Diplomat):政府を代表して他勢力との外交・経済交渉を担当する者。
芸能人(Entertainer):自らの一芸で有名人の地位を得た者。
狩猟者(Hunter):野生動物の捕獲・捕殺を生業とする者。
傭兵(Mercenary):軍事行動の為に金銭で雇われる、もしくはそういった組織に所属する者。
商船(Merchant):恒星間交易を担う個人/企業に従事する者。
貴族(Noble):政治的地位を持つ社会の特権階級に属する者、もしくはその子弟。
医師(Physician):医学を学び、研修を受け、病気や怪我に苦しむ人々を助ける免許を得た者。
海賊(Pirate):恒星間商船などを襲撃して物資を強奪する者。
科学者(Scientist):ある分野の科学に精通した専門家。
技術者(Technician):機械や産業の分野で技術を身につけた者。

未開人(Barbarian):工業化文明以前の「原始的な」文化で生きてきた者。
宇宙鉱夫(Belter):小惑星帯に眠る鉱脈(と報酬)を求めて、腕一本で宇宙を渡り歩く(もしくは代々定住している)者。
入植者(Colonist):開発途上の植民星で生きる者。
放浪者(Drifter):一所に定住せずに宇宙各地を転々と渡り歩く者。
悪党(Rogue):違法な手段で生計を立てている者。


 これだけあると選ぶのが大変そうですが、まずキャラクターの能力値で向き不向きを判断し(実社会と同じで、向いてない仕事は長続きしないのです)、どういった技能が欲しいかで絞り込んでいくと良いでしょう。少なくとも軍隊系経歴か商船を選んでおけばハズレはありません(他の部門は一定方向に「尖った」キャラクターが出来やすい)。

 それぞれの経歴部門には、応募(Qualifying)するための条件が課されています。「Int 4+」と書かれていれば、合格には「知力DMを加味して2Dで4以上を出す」必要があります。成功すれば良いのですが、仮に失敗して不合格となってしまった場合は2つの道が残されています。
 まず「徴募(Draft)」を受ける場合。この場合は1Dの結果次第で定められた軍隊に放り込まれます。もう一つは徴募を受けずに「放浪者」となる場合。こちらは4年間浪人した後に希望する職場に再度挑戦するのですが、応募の判定にDM-2が課されるという茨の道です。
(※『Cepheus Engine』では未開人や貴族の「道に進む」制約が存在しないのですが、これらは安易に許可すると場を荒らされる恐れのある経歴なので注意してください。未開人には「出身星が「低技術」であること」、貴族には「社会身分度がA+であること」を最低付加するべきで、更に、この条件を満たしていれば応募は自動成功させるべきです。また、放浪者への応募が自動成功しないのも謎です)

 好むと好まざるとに関わらず、進路は決まりました。次回は年齢を重ねて技能を習得していくことについて。旅立つまでにはまだまだ時間がかかりますよ(笑)。

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