ロシアが先週出した動員令は、プーチンにとって墓穴以外のなにものでもない。なぜかというと徴兵と徴兵逃れで出国する人が増えることで、経済的なダメージが広がるからだ。
総力戦において、武器弾薬の製造はもとより、経済基盤の維持は非常に重要だ。今ロシアから逃げ出している人たちは、経済力や職業的スキルの高い人たちだ。彼らがロシアから逃げ出すということは、生産活動や経済活動面で大きなマイナスになり、中長期的にはロシアの国力つまり戦力を一層低下させることは間違いない。経済予想を先取りするロシアの株式市場は、動員令の発表後急落した。ロシアの株式市場は現在ロシア人だけが参加している市場だが、ロシア人投資家も動員令に失望したことが分かる。
今年2月のウクライナ侵攻で急騰したエネルギー価格が低下していることもロシア経済には痛手だ。つまりこのまま行くとロシアが経済的に行き詰ることは明白だ。
そこで前倒しで行われたのが、ドネツク州・ルガンスク州などウクライナ4州での「ロシア編入を問う住民投票」だ。
出来レースの住民投票の結果を持って、4州がロシア領に編入される見込みは高い。アナリストたちは4州をロシア領に編入すると、ウクライナの奪取地を奪い返そうとする反撃はロシア領土に対する侵略とロシアはみなし、戦術核利用の口実を得ると分析している。
何を考えているか予想がつかないプーチンが相手なので、次の一手を読むことは不可能だが、もし彼が冷静であれば、私は4州を併呑したところで停戦を持ちかける可能性があると考えている。
だが反撃でポイントを稼いでいるとウクライナが4州をロシアに割譲するような条件では停戦に応じることはないだろう。ウクライナを支援するアメリカも不利な条件での停戦より戦闘継続を望むかもしれない。
冬になるとウクライナ東部は泥地化して重車両の移動は不可能になり、大規模な作戦遂行はできなくなる。冬がどちかに有利に働くかも大きな問題だ。
ロシアが経済的に疲弊して自滅するか?あるいは冬将軍を前にして天然ガス不足におびえる西欧諸国の足並みが乱れるか?