金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

インフレと円安は登山愛好者を直撃する!

2022年09月09日 | うんちく・小ネタ
 テレビを見ると生鮮食料品や外食チェーン店の値上げのニュースがあふれています。総務省の消費者物価統計では、7月の物価は前年同月比2.7%の上昇です。アベノミクスの頃から政府や日銀はデフレ脱却を政策目標とし、物価上昇率2%を目指していましたから、2%台の物価上昇に大慌てをすることはないのかもしれません。
 しかし統計の数値と個人の感じ方は別物です。つまり自分がよく買うものの値段が上がったり、利用するサービスが上がる場合強く物価の上昇を感じ、そうでない場合はそれほど感じないということが起こります。
 さて今登山愛好家、特に山小屋に泊まる人は一部の山小屋の宿泊料金の値上げにため息をついていると思います。私が経験したところでは、北アルプスの人気の山小屋では宿泊料金はコロナ前の1.5倍程度になっています。感染防止のために山小屋は宿泊人数を2/3程度に減らしていますから、この程度の値上げを行わないと採算が維持できないので止むを得ない値上げといえるでしょう。
 さて山小屋の宿泊料金は物価統計の対象に入っていませんが、仮に入っていたとして50%の値上げがそのまま50%の値上げとして物価上昇率にカウントされるか?というとそうはなりません。何故なら物価やサービスの比較は、同じ機能やサービスレベルを前提としているからです。山小屋の場合、宿泊料金は1.5倍になりましたが、一人当たりの寝るスペースが増え、快適度が向上していますので、サービスレベルが向上した訳です。その分は統計上値上げと相殺して計算されますので、物価上昇率としては1.1~1.2倍程度かもしれません。
 登山愛好家としても、50%の値上げは財布にこたえるが、快適さが増したので容認できると思っている人は多いと思います。
 先々のことは断言できませんが、私はコロナが終息しても、おそらく山小屋が昔のすし詰め状態に戻ることはないと思います。
 このような変化は構造的で不可逆的な変化ということができるでしょう。
 つまり登山愛好者としては、人気の山小屋では宿泊料金は高止まりするということを前提に長期的な登山プランを立てていく必要があります。若い人であれば、テント泊中心に切り替えて山小屋泊を減らすという対応もあるでしょう。テントや寝袋を担ぐ体力のないシニア登山者は、他の贅沢を切り詰めるなどして山小屋代をねん出しないといけないかもしれませんね。
 さてもう一つ登山愛好者の私を直撃しているのが、海外渡航費用の値上りです。来月ネパールにトレッキングに出かける予定ですが、急速なドル高円安に悲鳴をあげそうな状態です。
 ただ今円安だからしばらく待って円高になってから行こう、という見方が当たるという保証はありません。しばらく待っていると円高に戻るというのは、循環的な見方です。確かに購買力平価などから見ると円は割安ですから、もう少し円高に戻るという見方はできます。しかし私は少なくとも私が海外トレッキングを続けられる間にびっくりするほどの円高はもうやってこないと確信しています。理由をあげると話が長くなるので詳しくは説明しませんが、「財政赤字の拡大」と「経常赤字の定着」が最大の理由です。原発停止による化石燃料の輸入拡大とその価格の高止まりが貿易収支を悪化させ、経常赤字が定着するリスクがあります。財政赤字と経常赤字の二つが重なると双子の赤字となり円の信頼度はますます低下する可能性があります。
 ということで今は登山愛好家受難の時代。
 そもそも登山とは何らかの危険~不確実性~を伴うもので、それにどう対処するかが登山技術なのです。山登りの不確実性がインフレや円安にまで影響される時代には、それなりのリスクヘッジ技術が必要な時代といえるでしょうね。
コメント
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