金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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景気回復で金持ちはより金持ちに~とりあえず米国の話だが

2013年04月24日 | 社会・経済

ピューリサーチが昨日(4月23日)発表したレポートによると、2009年から2011年にかけての景気回復でお金持ちはよりお金持ちになり、それ以下の人の純資産は減少していることが分かった。

「とりあえず」米国の話とタイトルしたが、その意味は安倍政権がアメリカと同じ(経済規模に対する倍率では日本の方が大きい)金融緩和政策を続けると富の格差の面でも日本でも同じことが起きるということである。

さて米国では09-11年の2年間の間で、上位7%の富裕層の純資産の中央値は247.6万ドルから317.4万ドルへと28%上昇した。一方残り93%の人の純資産の中央値は14万ドルから13.4万ドルへと4%減少した。

米国全体ではその2年間で家計の純資産は35.2兆ドルから40.2兆ドルへ5兆ドル(14%)増加した。また富裕層上位7%が保有する純資産の割合は、56%から63%に上昇した。

富裕層の資産が増えた理由は、富裕層の株式保有比率が高いことである。その2年間でS&P500の価値は34%上昇した。一方残りの人の資産では住宅の占める割合が高いが、住宅価格(ケース・シラー指数)はその2年間で5%低下した。これがお金持ちがよりお金持ちになった最大の理由だ。

日本でも同じことが起きるか?デフレ脱却ムードで株価上昇が続くとすれば、富裕層とそれ以外の人の資産格差は拡大する。(というようなことを書くと「資産格差を是認するのか?」というような批判がでそうだが、私はここでは是認も否認もする積もりはない。ただ当然の帰結としてそのようなことが起きると述べるだけである。)

「日本の家計はリスク回避的で米国に較べると有価証券保有比率が低い」と言われている。統計的には日本の家計の有価証券比率は15%弱、米国は40%弱なのでその通りなのだが、富裕層に限って資産構成を見ると、日米間でそれ程の格差はない。

ということは日本でもアベノミックス効果で株価が上昇すると、資産格差は一層拡大するのである。株価の上昇(そして株価には追いつけないにしても住宅価格も多少上昇)が続くということは、円安の持続やデフレ脱却が同時進行することを意味する。つまりお金持ちにとっては資産増加のチャンスが拡大するが、一般の家計にとっては支出増になるということである。無論勤労世帯については給与が上昇する可能性がある。だが恐らく給与の上昇にも格差が伴う可能性が高い。給与上乗せファンドを能力給に回すということだ。

つまりアベノミクスは資産格差を拡大するとともに、それに較べると割合は小さいが所得格差も拡大するのである。繰り返しになるが、そのことの是非を論じるつもりはない。それは国民の多くの人が安倍政権を選んだ当然の帰結に過ぎない。もっともそのことを当然の帰結の考えた人が多かったかどうかは知らないが。

このことを蓋然性の高い近未来の出来事ととらえて行動するか否かで家計の格差は拡大するだろう。

コメント
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