金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

相続税評価における鑑定評価の使い方

2013年04月23日 | 社会・経済

世の中には「関心のある人にはとても関心のある話だが、関心のない人には全く興味がわかない」というトピックがある。このブログのタイトル「相続税評価における鑑定評価の使い方」などというトピックはその最たるものだろう。

関心のある人は限られている。先祖代々の大きな土地を相続して相続税の支払いに頭を悩ませている人かそのような土地を相続しそうになっている人、あるいは税理士さんなどでそのような相談客を抱えている人だけである。大きな土地に縁のない一般の人には全く興味がわかない話である。

大きな土地の相続に縁のない私にも興味のわかない話なのだが、昨夜偶々私が専務理事を務めている相続学会のセミナーでこの話題がでた。講師は㈱東京アプレイザルの芳賀社長。不動産鑑定士である芳賀さんの話は声が大きく歯切れが良くて分りやすかった。

話のポイントは次のとおりだ。

・相続税の申告時の、土地評価額は路線価を基準とすることを原則としている。

・ただし路線価をベースに算定した価格が適正な時価を大幅に上回る場合は、不動産鑑定評価による価格でもかまわない。

一例をあげると間口が2m以下(車1台通れない広さ)の土地の場合、道路位置指定が取れないから建物を建てることができない(古い建物を建てなおすことができない)ので「時価は通常の土地に較べて大幅に低い」。路線価評価方式で評価額を計算すると1億円で、不動産鑑定評価で計算すると5千万円というケースもある。税額にすると数千万円の差がでる可能性がある。

これは一例であり、別荘地やリゾートマンション、面積が大きい土地(500㎡以上)なども路線価と鑑定評価額の間に大きな乖離がある場合が多いという話だった。

この話は関係のある人には即効性のありそうな話だが多くの人には関心もなければ効果もない話だろう。

それではここまでブログを読んで頂いた方(いらっしゃればだが)に恐縮なので、より一般的な話をして締めくくりたい。

昨日芳賀さんが配られたレジメの中に次のようなことが書いてあった。「今まで士業(弁護士、税理士など)の人は圧倒的な情報量と知識の差を利用した格差で仕事をしてきた。しかし情報劣位者(この場合は一般人)は、極端な場合、最適戦略として取引そのものに手を出さないという行動をとることが考えられる。士業の人も専門分野について日頃から丁寧に解説・説明する必要がある。」

☆   ☆   ☆

少し観点は違うは私も士業の人は専門性にあぐらをかいている時代は終わったと思っている。

弁護士さんや税理士さん、司法書士さんなど士業の人のビジネスチャンスはある面では減っている、と思う。一例をあげると昔は不動産抵当権の抹消登記(たとえば住宅ローン完済による銀行抵当権の抹消登記)などは司法書士に依頼していた。ところが今ではホームページに抹消申請のひな形があり、法務局にいくと相談窓口で細かいところまで指導してくれるので、誰でも自分で手続きすることが可能になった。このように比較的単純な事務処理は、どんどんコモディティになっていくのである(大昔は自動車免許の申請も行政書士が代行していたことがあったようだ)

だから士業の人は事務手続面のサービス提供だけでは顧客を獲得することができなくなってきた(確定申告もネットで行うと簡単になった)。何が必要か、というと「付加価値」である。例えば「税」という税理士の専門分野と「不動産鑑定」という鑑定士の専門分野を両睨みすることでクライアントに「過大な納税を防ぐ」という付加価値を提供することができる専門家が生き残ることができるという時代になったということだ。別の言い方をすると「専門家も一つの専門程度では飯が食えない時代になった」ということである。

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数カ月後に始まる日本のエネルギー価格上昇

2013年04月23日 | 社会・経済

FTにJapan's energy costs spiral higherというタイトルの記事が出ていた。Spiralというと普通飛行機がきりもみ状態で急降下することを指す。きりもみ状態で上昇、という表現は余り目にしないが、悪循環的な価格上昇に陥るというニュアンスだろう。

円安になると原油などドル建てのエネルギー価格が円ベースで見ると上昇することになる。昨年末から急速な円安が進んでいるが、生活実感としてはまだエネルギー価格の上昇を肌で感じるほどではない。たとえばガソリン価格。資源エネルギー庁が先週発表したデータによると、4月15日のレギュラーガソリン価格は1リッター辺り154.8円で6週間連続の値下がりということだ。

FTによると、昨年8月と今年の2月を比較すると、日本に輸入される全原油平均価格(JCC Japan Crude Cocktail)は円ベースで30%上昇した。ただし末端のガソリン価格を見ると昨年8月20日に1リッター143.8円だったレギュラーガソリンは、現在154.8円で11円、7.6%しか上昇していない。

どうしてガソリンの末端価格は原油価格の上昇ほどには上がらないのだろうか?理由は二つ考えられる。一つは過去の円高時に仕込んだ原価の安い原油のストックがあったこと、もう一つはガソリンスタンド間の競争が厳しく消費者への価格転嫁が進まないことだ。

個人的な生活実感からいうと「本当に車に乗らなくなったな」と思う。1,2ヶ月に1度の遠出(最近では三春の滝桜見物)以外はほとんど車を使わない。若い頃車で出かけていた吉祥寺、神代植物園、昭和記念公園などは総て自転車往復している。これは単に節約目的ではない。近郊では渋滞に巻き込まれないので自転車の方が早い場合が多いし、第一健康的だ。

話が脇道にそれたが、消費需要低迷からガソリン価格の上昇が抑えられていたことは実感できる。もしガソリン価格が上昇すると更に消費は落ち込むのではないか?

だがエネルギー資源全般では、消費削減には限界がある。LNGは一番、石炭は二番、原油は三番、これは何かというと世界の中で日本が輸入する資源量の順位だ。

FTは「エネルギー価格の上昇は日本経済にボディブローのように効いてくる。将来のある時点まで痛みを感じないが、その後大いに体を痛めつける」という住友商事の幹部の意見を紹介していた。

ボディブロー、つまり腹部へのパンチをうけると素人であれば直ぐに大きなダメージとなる。だが腹部を鍛えているプロボクサーの場合、直ぐにはダメージは現れず、じわじわと体力を奪っていく。エネルギー価格の上昇に対して、対応力のある日本経済だが、ボディブローは効くのである。

円安・株高で儲けた人は、「高級自転車を買う、省エネ家電に買い換える」などプロテクションを考えた方が良いだろう。それが生活レベルの円安対策である。

コメント (1)
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