金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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総連・民団の和解から考える

2006年06月06日 | 国際・政治

エコノミスト誌が日本国内の南北朝鮮人の団体が和解に至ったという記事を発表している。それ自体日本のマスコミで取上げられた話で新鮮味もないが、この際「外国のメディアは日本・コリアの問題をどうみているのか?」ということを調べておきたかったこと、および最近読んでいる「マオ 誰も書かなかった毛沢東」(ユン・チアン)との関係で書きたかったことがあるのでブログにしてみた。

エコノミスト誌のポイントは次のとおりだ。なお適宜解説を加えている。

  • 2000年の平壌サミット(記事ではサンシャイン・サミットと言っているが、日本ではあまりこの言葉は使われていない)から6年経って約60万人の在日コリアンの2つのグループは和解に至った。

在日コリアンについて原文はZainichi という日本語そのまま使っている。在日コリアンは在日韓国人と在日朝鮮人で構成されるが、名前だけで争いの種になるので、最近は英語を訳した在日コリアンという言い方が増えている。因みに記事では総連はthe Soren, 民団はthe Mindanと表現されている。総連は在日本朝鮮人総連合会の略で、民団は在日本大韓民国民団の略である。ここでも現在朝鮮半島に住む人を語る時はコリアンとし、歴史的なコリアンを語る時はその時代の国名に即した名称を使う。

  • 大部分の在日コリアンは1910年の日韓併合の後、経済的な移民または戦争のために徴用・強制連行されたコリアンの子孫である。進駐軍の支配が終わった1952年に日本は在日コリアンの日本国籍を廃止した。

この文章は二つの重要なことを含んでいる。一つは日韓併合である。これは英語でJapan's annexation of Koreaという。Annexationは併合ということ。日韓併合条約の正当性について日本とコリア側で意見が正面から対立いていることは周知のことだ。インターネット上の百科事典Wikipediaの英語版は、コリア側が条約の無効をとする理由について「国王のサインがなかった」「国を裏切った総理大臣李完用によりサインがされている」と説明している。一方日本については「日本は正当性を主張している」しか記述がない。誰が書いたのか知らないが、コリア寄りの記述だ。私自身百科事典を書き換えたいのだが、もう少し歴史を原典にあたって勉強する必要があるので、専門家の方が補足・訂正して頂けるとありがたいのだが・・・

私は日韓併合は有効であったという考えを取るが、その根拠は実態的に当時最大級の朝鮮の政治団体・一進会が併合に賛成であった等多くの朝鮮人が賛成だったという実態面および形式面から見て有効と判断するものである。これに対してコリア側の主張は「国王の署名がない・日本に脅かされて締結した条約だから無効」という主張だが、これは当時の国際法の慣行から見れば残念ながら成り立たない主張なのである。つまり当時(それのことの良し悪しは別として)国際公法上、国は「自主の国」「半自主の国」「未開人」に分けられ、自主の国の間では条約における批准と署名、侵略禁止などが認められた。当時日本は自主の国と認められていたが、朝鮮は半自主の国であり、条約の批准・署名手続きは必要がなかったのである。

この問題を論じると長くなるので、次に進む。次のポイントは在日コリアンの源泉には、日本での経済活動を求めて移民してきたコリアンが相当いると明言していることである。

  • 1980年代の市民権運動等を経て日本は大部分の差別的な法律を廃止し、現在は以前ほど在日コリアンを冷遇しなくなっている。若い在日コリアンで日本人と結婚する者が増えている。現在年間約1万人が日本国籍に転換しているが、日本の姓をなのる必要はなくなっている。在日コリアンは今や自活する必要がある。多くの在日コリアンにとって総連と民団の和解は遅すぎた。

以上が記事の概要だが、これを離れて日本人がコリアンに与えた犠牲ということを現代コリアン史の中で考えてみよう。第二次大戦時の朝鮮人の戦死者は一説で20万人(これは中国の1,000万人やフィリピンの100万人に較べて相当少ない)である。これに較べて朝鮮戦争で戦死した兵士は韓国20万人、北朝鮮50万人、市民の犠牲は100万人から200万人と言われている。つまりコリアンにとって第二次世界大戦の犠牲者より朝鮮戦争の犠牲者の方がはるかに大きいのだ。この様な事実を朝鮮半島に住む人々や在日コリアンはきちんと理解しているのだろうか?そしてこの様に大きな犠牲者を出した朝鮮戦争が誰によって引き起こされたか理解しているのか?

話が飛んでしまうが、朝鮮戦争が誰によって引き起こされたかということについて、詳しく述べているのが、今読んでいる「マオ 誰も知らなかった毛沢東」である。この本によれば、ロシアから近代兵器の援助を受けたかった毛沢東がスターリンをそそのかし朝鮮戦争を始めたということになる。スターリンは欧州の制圧を密かに望んでいたので、米国が朝鮮半島で戦力を消耗することは大歓迎だったのだ。そこに地域的な野望者金日成が絡み朝鮮戦争が勃発したのである。この戦争で毛沢東は数十万人の中国人とそれに倍するコリアンを殺して戦闘機等近代兵器を手に入れたのである。

これが事実だとすれば、韓国にとって北朝鮮や中国にもっと歴史的な怒りをぶつけても良いと思うのだが、怒りの矛先を日本にばかり向けているのはどうしてであろうか?かっての宗主国には頭があがらないということなのだろうか?それともコリアンには歴史的事実を謙虚に受け止めるという姿勢がないということなのだろうか?

コメント
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