金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

福井総裁、辞める必要はないが・・・・

2006年06月21日 | 社会・経済

朝、駅まで歩くと小雨が降ってきた。髪の毛が細くなっているので、細かい雨でも地肌に通る。年だなぁ・・・と感じる時だ。

小ぬか雨 地肌にしみて 梅一つ  (北の旅人)

梅雨空の様に世の中もぱっとしない。日銀福井総裁のファンド投資を巡る議論もぱっとしない。攻めるマスコミも受ける総裁もである。朝日新聞など大手新聞は「預金金利がこれだけ低い中で6年で2.2倍になる投資は驚くばかりだ」といった書き振りで、読者の共感を買おうとしているが、これは預金と株式・ファンド投資を混同したレベルの低い議論だ。元利保証のないファンドでは儲かることもあるが、損をすることもある。儲かった結果を確定利付商品の預金と比較してもしかたがない。物事の本質を議論しないで感情に訴えるというのは一流のマスコミがすることではないだろう。

ところで福井氏の村上ファンドに対する投資利回りはどれ位だったか?中途のキャッシュアウトを含めた正確な計算は面倒くさいので、当初預け入れ1,000百万円、6年後の元利合計2,200万円中途のキャッシュ・イン、アウトなしということで複利利回り(内部収益率)を計算すると約14%になる。14%という数字は殆どゼロの預金金利と較べると大変高い利回りだが、ファンドとしての利回りはどうだろうか?インサイダー取引など違法なことをやりながら稼いだ利回りとしてはそれ程高くはない様にも思われる。

ぱっとしないといえば福井氏の「投資のつもりではない」という答弁もぱっとしない。投資なら投資とはっきりいった方が良いのではないか?一民間人の立場で投資を行なうことは少しも悪いことではないし、長年金融マンとして活躍した人だからそこそこのリターンをあげられる様な投資を行なうことは当然である。逆にプアな投資結果しか上げられない様では、怖くて一国の金融政策を委ねることができないだろう。

福井総裁の辞任の可能性について、ウオール・ストリート・ジャーナルはみずほ証券の上田エコノミストの「総裁は(報酬返納などをもって)終わりにしようとしている。90%以上の可能性で彼が職に留まる可能性があると思う」という意見を紹介している。欧米の代表的経済紙が留任に肯定的な見方を示したことで(福井総裁が読んでいるかどうかしらないが)、総裁や日銀筋は少し安堵しているかもしれない。

日本のマスコミに私が期待することはこれを機会に「日本における個人のファンド投資の問題」といったことをもっと掘り下げて取上げて欲しいということだ。福井総裁はファンド投資時日銀を辞めていたとはいえ、著名人だから村上氏にファンド投資を誘われたはずだ。一般人なら1千万円の資金を持っていても誘われなかっただろう。これは勧誘や契約自由の社会だから別に問題はない。それにヘッジファンド等のファンドは元々米国の超富裕個人を対象に生まれたものだ。個人がファンドに投資して問題がある訳ではない。

しかし米国では主に投資家保護の観点から、証券取引委員会への登録を免除されるファンド(パートナーシップ)については、投資家の資格要件、投資家の数、勧誘方法等の制限がある。主な登録免除要件というのは「投資家が配偶者合算で30万ドル以上の所得があること」「家屋・自動車を除く純資産が100万ドル以上あること」などである。

この辺り日本はどうなっているのか?という疑問を持つ。詳しくはまだ調べていないが、どうも未整備ではないか?と思う。

日本は相当な勢いで間接投資から直接投資へ転換を進めているが、法や規制、内部ルールの整備が伴っていない。福井総裁のファンド投資問題はそのような中で持ち上がった話である。福井氏の問題の焦点をぼやかす積りはないが、もっと広い視点でファンド投資というものを考えることも必要だろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする