本日(6月13日)のウオール・ストリート・ジャーナル紙は、5月は外国勢はネットベースで株の売り手だったと報じた。これは昨日財務省が発表した「対外および対内証券売買契約等の状況」(以下「状況」)を受けたものだ。
記事と「報告」を解説を加えると次のようなことだ。
- 外国勢は日本株を4月はネットベースで3,421億円買い越したが、5月は5,039億円売り越した。外国勢が売り越したのは、財務省が2005年1月に「報告」を発表して以来初めてのこと。5月中で日本株の処分が多かったのは中旬で6,729億円の売り越しになっている。これはインド株等新興国株式相場の下落の時期と一致している。
- 5月に日経平均は8.5%下落したが、ウオール・ストリート・ジャーナルによれば何人かのトレーダーは「年初の急速な株高の調整」だと言う。しかし他の者は予想される世界的な景気のスローダウンに対する懸念が株価を下げていると言う。
- クレディスイスの市川株式ストラテジストは「株がボトムアウトしたかどうか決めるのは恐らく早過ぎる。我々は米国経済がソフトランディングするかどうか見る必要がある。」「日銀の金融政策も株式市場の方向を決める助けとなる」と言う。
- 外国勢は日本株を売ったが、債券を購入した。5月の中長期債のネット買い越し額は2兆6,226億円になった。これは記録が始まって以来最大の買い越し額。しかしこれだけの資金流入があったにもかかわらず、債券市場はびくついていた。これは株価がどれ位下落するのかということと株価のボラティリティがどれ位金融政策に影響を与えるかはっきりしなかったからである。
外国勢の日本株売り越しは5月の株安の最大の原因だが、そのこと自体は余り説明になっていないだろう。つまり株が売られれば株価が下がるのは自明の理だからだ。ではどうして経済パフォーマンスが良い時期に株が売られるのか?
それに対する一つの答は「株は予想で買って事実で売る」ものということなのだろう。つまり日本経済の今後のパフォーマンスの良さまである程度株価は織り込んでいたということで、これから株価が伸びるには新しい「ビジョン」が必要なのだろう。小泉政権の評価はさて置き、小泉改革には方向感があった。今政権交替期に来てその方向感が見えにくくなっている。実際のところ安倍氏が後継者になろうと、福田氏が後継者になろうと改革路線は大きく変わらないだろうが、漠然とした不安は残っている。
世界を見回しても、バーナンキ連銀議長と市場の対話にも一抹の不安がある。米国の中東政策も手詰まりな感じだ。中間選挙に向けてブッシュ大統領はどうするつもりなのか?こういった漠然とした手詰まり感が不安感につながり、株式市場のボラティリティが高まっている。今年後半の株式相場予想は政治の要素のウエイトが高まるかもしれない。