今日は、8月23日の#257の続きです。選挙戦の流れの変化について考えてみたいと思います。23日のブログを読んでいない方は、そちらから読んでください。
「変化の兆し」
先見力を訓練する上で、流れの変化を察知することが重要なのはいうまでもありません。だいたい物事は、ある方向に進んでいるわけですが、突然潮目が変わり、流れの方向が変わることがあるわけです。そのタイミングをいち早く察知できるかどうかは、死活にかかわるときがあります。
選挙戦と言うのは、そういう感覚を訓練するうえで、非常によい現実進行型の、生きたテーマだと思います。
さて、流れが変わる場合、大きな要因には、ユーザー(この場合は有権者)の意識変化があげられます。
昨日の朝日新聞の世論調査を読むと、郵政民営化を選挙の唯一の争点とする考え方は、どうやら少数派になりつつあるように思われます。
おそらく、〝刺客〟のサプライズ効果が大分剥げてきて、有権者が事態を冷静に見て、考えるようになったと思われます。
ここで、重要になるのが戦略的に正しいポジションについているかどうかという判断と、それが期間内(投票日)までにどこまで浸透するかということです。
戦略的ポジションいついては、前回述べたので説明いたしませんが、私は民主党に理があると見ています。時間がたてばたつほど、理解は進みます。
拙著『先見力訓練法』では、それについての事例をいくつか挙げていますが、似た例としては、徳川幕府の開国政策に関する意思決定があるでしょう。
日米和親条約が締結されたのが1853年。この時点では、54藩のうち、開戦・攘夷の過激派は8藩ありました。しかし、有力な大名はほとんど幕府に同調しております。これは、西洋の情報が、彼らには十分広まっていたためだと考えられます。
和親条約から4年後の1858になると、いよいよ日米修好通商条約が締結されたわけですが、この段階においては、ほとんどの藩が幕府の方針に同調しました。反対したのは、尾張、水戸、一橋、鳥取、前橋の5藩のみです。尾張を除くと、すべて当主が水戸斉昭の子供です。
時間がたつほど、理のあるほうが有利ということですが、ただ、それが、あと2週間と区切られています。その期間内に、有権者にどこまで理解されるか、ということです。
「矛盾の顕在化」
システムに矛盾が含まれることは、珍しいことではありません。ただ、全体のバランスで、それがおさまっているものです。ところが、流れが変わるときには、それが顕在化しがちです。
八代英太議員の比例扱いがこれです。
八代氏は自公の選挙協力に配慮して、東京12区からの立候補を断念し、代わりに比例区名簿への登載を希望しました。しかし、八代氏は郵政民営化法案に反対したのですから、八代氏の特例扱いは、他の自民議員に示しがつきません。
一方、この選挙区には公明党の太田氏が立候補しております。太田氏は公明の「プリンス」と呼ばれている、次期党首クラスの人物です。自民としては、連立の相手である公明の援護をしないといけないわけです。
もし八代氏が出馬すれば、太田氏の票をかなり奪うことになり、民主党に漁夫の利がいく場合もありえます。公明党の方針では、太田氏は比例への重複立候補をしないことになっているそうです。したがって、公明党がプリンスを失う危険性が高まったといえます。
自民党としては、八代氏を比例候補に選べば、例外を認めてしまうことになり、有権者の理解を得られないと判断したようです。自民内部からも相当批判があったのではないでしょうか。
比例候補については、〝刺客〟たちが上位にランクされることが決まっています。政治的実力が定かでない、さつき氏、真紀子氏、ゆかり氏らが、比例票獲得にどれだけ効果があるか、私は疑問視していますが、前職の議員はおおいに不満でしょう。
そういう党外、党内の事情から、八代氏に対する決定を自民執行部はくだしたわけですが、今度は公明党との選挙協力が微妙になることは確実です。自民党は公明党の協力なしでは、第一党にはなれないのが現実なのです。
ということで、どちらの案を選ぼうが、自民党にとってデメリットは大きい。こういうように、どのように打っても大きな問題が生じるときは、流れが非常に悪いのです。
流れがいいときは、打つ手が打つ手がすべて、いい結果を招いていきます。逆に流れが悪いと、何をやってもダメという感じになります。負のサイクルですね。
今のところ、小泉総理以下自民幹部は、世論は自民党に有利と見ているようです。ただ、世耕広報本部長代理が、昨日、「刺客」という言葉は不適切であるから使わないようにと、報道各社に申し入れました。今頃こんなことを言い出だすのは、危機感が出てきたサインかもしれません。
「エラー」
あくまで私の感じですが、選挙戦はすでに民主に傾いていると思います。このまま2週間、何もなければ、民主が勝つ確率が高いと思います。例によって、異端の意見かもしれませんが。
仮に私の意見が正しいとしても、それで勝負が決まると言うわけではありません。ここからは、どちらが重大なエラーをするか、ということでしょう。
人間は神様でありませんから、完全な情報で動いているわけではない。手探りをしながら、ゴールまで行動を続けなければならないのです。当然、エラーをおかします。
しかも、それを行った時点では、それがエラーとわからないことが多い。後で振り返って、「ああ、あのとき間違えたんだ」と思うことが多いわけです。
しかも、エラーによって、事態はコロコロ変わります。
ですから、もし自民党が今はやや不利な戦況であると思えば、相手が間違いやすいような、紛らわしい手を打っていく必要があります。
逆に、自分たちが有利であると考えるなら、できるだけ簡明で、戦局を単純化する手段を取るべきです。
さらに、もし、自民党が非常に不利であると思っているならば、一発逆転の「サプライズ」を持ち出す必要があります。
これから、数日ぐらいの間に自民党がどんな手を打つかで、彼らが自分たちをどう評価しているかがわかるでしょう。
「変化の兆し」
先見力を訓練する上で、流れの変化を察知することが重要なのはいうまでもありません。だいたい物事は、ある方向に進んでいるわけですが、突然潮目が変わり、流れの方向が変わることがあるわけです。そのタイミングをいち早く察知できるかどうかは、死活にかかわるときがあります。
選挙戦と言うのは、そういう感覚を訓練するうえで、非常によい現実進行型の、生きたテーマだと思います。
さて、流れが変わる場合、大きな要因には、ユーザー(この場合は有権者)の意識変化があげられます。
昨日の朝日新聞の世論調査を読むと、郵政民営化を選挙の唯一の争点とする考え方は、どうやら少数派になりつつあるように思われます。
おそらく、〝刺客〟のサプライズ効果が大分剥げてきて、有権者が事態を冷静に見て、考えるようになったと思われます。
ここで、重要になるのが戦略的に正しいポジションについているかどうかという判断と、それが期間内(投票日)までにどこまで浸透するかということです。
戦略的ポジションいついては、前回述べたので説明いたしませんが、私は民主党に理があると見ています。時間がたてばたつほど、理解は進みます。
拙著『先見力訓練法』では、それについての事例をいくつか挙げていますが、似た例としては、徳川幕府の開国政策に関する意思決定があるでしょう。
日米和親条約が締結されたのが1853年。この時点では、54藩のうち、開戦・攘夷の過激派は8藩ありました。しかし、有力な大名はほとんど幕府に同調しております。これは、西洋の情報が、彼らには十分広まっていたためだと考えられます。
和親条約から4年後の1858になると、いよいよ日米修好通商条約が締結されたわけですが、この段階においては、ほとんどの藩が幕府の方針に同調しました。反対したのは、尾張、水戸、一橋、鳥取、前橋の5藩のみです。尾張を除くと、すべて当主が水戸斉昭の子供です。
時間がたつほど、理のあるほうが有利ということですが、ただ、それが、あと2週間と区切られています。その期間内に、有権者にどこまで理解されるか、ということです。
「矛盾の顕在化」
システムに矛盾が含まれることは、珍しいことではありません。ただ、全体のバランスで、それがおさまっているものです。ところが、流れが変わるときには、それが顕在化しがちです。
八代英太議員の比例扱いがこれです。
八代氏は自公の選挙協力に配慮して、東京12区からの立候補を断念し、代わりに比例区名簿への登載を希望しました。しかし、八代氏は郵政民営化法案に反対したのですから、八代氏の特例扱いは、他の自民議員に示しがつきません。
一方、この選挙区には公明党の太田氏が立候補しております。太田氏は公明の「プリンス」と呼ばれている、次期党首クラスの人物です。自民としては、連立の相手である公明の援護をしないといけないわけです。
もし八代氏が出馬すれば、太田氏の票をかなり奪うことになり、民主党に漁夫の利がいく場合もありえます。公明党の方針では、太田氏は比例への重複立候補をしないことになっているそうです。したがって、公明党がプリンスを失う危険性が高まったといえます。
自民党としては、八代氏を比例候補に選べば、例外を認めてしまうことになり、有権者の理解を得られないと判断したようです。自民内部からも相当批判があったのではないでしょうか。
比例候補については、〝刺客〟たちが上位にランクされることが決まっています。政治的実力が定かでない、さつき氏、真紀子氏、ゆかり氏らが、比例票獲得にどれだけ効果があるか、私は疑問視していますが、前職の議員はおおいに不満でしょう。
そういう党外、党内の事情から、八代氏に対する決定を自民執行部はくだしたわけですが、今度は公明党との選挙協力が微妙になることは確実です。自民党は公明党の協力なしでは、第一党にはなれないのが現実なのです。
ということで、どちらの案を選ぼうが、自民党にとってデメリットは大きい。こういうように、どのように打っても大きな問題が生じるときは、流れが非常に悪いのです。
流れがいいときは、打つ手が打つ手がすべて、いい結果を招いていきます。逆に流れが悪いと、何をやってもダメという感じになります。負のサイクルですね。
今のところ、小泉総理以下自民幹部は、世論は自民党に有利と見ているようです。ただ、世耕広報本部長代理が、昨日、「刺客」という言葉は不適切であるから使わないようにと、報道各社に申し入れました。今頃こんなことを言い出だすのは、危機感が出てきたサインかもしれません。
「エラー」
あくまで私の感じですが、選挙戦はすでに民主に傾いていると思います。このまま2週間、何もなければ、民主が勝つ確率が高いと思います。例によって、異端の意見かもしれませんが。
仮に私の意見が正しいとしても、それで勝負が決まると言うわけではありません。ここからは、どちらが重大なエラーをするか、ということでしょう。
人間は神様でありませんから、完全な情報で動いているわけではない。手探りをしながら、ゴールまで行動を続けなければならないのです。当然、エラーをおかします。
しかも、それを行った時点では、それがエラーとわからないことが多い。後で振り返って、「ああ、あのとき間違えたんだ」と思うことが多いわけです。
しかも、エラーによって、事態はコロコロ変わります。
ですから、もし自民党が今はやや不利な戦況であると思えば、相手が間違いやすいような、紛らわしい手を打っていく必要があります。
逆に、自分たちが有利であると考えるなら、できるだけ簡明で、戦局を単純化する手段を取るべきです。
さらに、もし、自民党が非常に不利であると思っているならば、一発逆転の「サプライズ」を持ち出す必要があります。
これから、数日ぐらいの間に自民党がどんな手を打つかで、彼らが自分たちをどう評価しているかがわかるでしょう。
刺客候補フィーバーがだいぶ収まったこと、八代氏の非公認の混乱、自民党マニフェストへの低評価に加えて、郵政民営化以外に語らない自民党に有権者が飽きてきて不安になってきたことから、自民党への追い風はだいぶ弱まってきたように感じております。マスメディアもちょっと冷静さを取り戻してきたようにも思います。自民党側に新たなタマがなければ、熱しやすく冷めやすい最近の日本人は、冷静な判断をもって投票しそうな気がしますが、もう暫く流れを観察したいと思っています。
あと気になっているのは、海外情勢です。
小泉人気だけで自民党は逃げ切ったような感じがありますが、解散時の追い風はだいぶ弱まり、風に乗せられることなく自ら考えようという意識が芽生えてきた感じはします。
TVは相変わらずどうしようもない報道を続けていましたが、新聞はかなり冷静さを取り戻したように思います。
郵政しか語らない(語れない)戦略のマイナス面が見えてしまったことが自民党の失点でした。郵政を語れば語るほど、その裏に隠れているより重要な課題がみんなに見えてしまったのではないかと思います。
私は、与党が過半数をギリギリとれない結果に終わるのではないかと推測します。小泉首相に万能的権力を渡すのはちょっと待とうという意志が生まれてきているのではないかという気がしています。
先見力訓練の場としてはあまりいい稽古ができなかったのが残念。今後も修行を続けます。