この「永遠のゼロ」映画の観客動員数が最多、その現象がどのような意味を持つかとの考察は注意する必要があると思います。
以下は、ある掲示板での意見です。この意見がすべてではありませんが、このような雰囲気、主張がなんとなく勇ましく飛び交うところにこの記事で指摘する日本社会の右傾化、危険性があると感じます。
「平和主義者ってのは、よーわ死にたくない、それだけのことだんだね、
犬や猫も死ぬのは嫌だろうってことは想像出来るわけだが・・・
よーするに動物的感性で生きてるのが平和主義者。
国家の為には死も恐れず、この覚悟なくては「国民」とわ言えないわけだが。
平和主義者ってのは、国家の外にいるのだね、精神的に。
戦後教育がこんな非国民を大量に生産したのだな。
兵役拒否は牢屋行きと決まってる。」
20,30歳代の多くの青年層は、正規雇用が絞られています。正規で働きたくても、その道がない。非正規労働、派遣労働しかない。その多くは低賃金、老後の年金などもまともに支払うことができない。健康保険料、年金、所得税、消費税などを徴収され、自分が使える収入は微々たる金しかない。将来に対する希望、展望が持てない。その結果、右翼が叫ぶような単純で、二者択一的な白黒論争に何か、自分の存在価値を見出し、同調する風潮が生まれていると感じます。
安倍、自民党の極右グループは、自らが政治経済の仕組み、構造の中で、このような青年、若者の貧困を意図(規制緩和として非正規労働の無原則的な緩和、拡大)して大量に作り出しています。そのことを隠し、詐称しながら、老人たちが医療費、社会保障費をほとんど使っているのが悪いのだ。彼らは豊かな時代に働き、老後の保障(年金、医療費など)を現在の20、30歳代の若者に使いまわしていると宣伝を行い、青年たちと、高齢者の対立を意識的に作り出しています。本来であれば、一緒に手を携えて、安倍、自民党政権、大手企業の政治経済支配を悪政を批判し、改善をさせなければならない99%国民、貧しい労働者が分断されています。対立により安倍、自民党政権、極右は喜び、自らの責任追及から開放されるところが99%国民の不幸であり、彼らの本当の狙いです。
<フィナンシャルタイムズ>
神風特攻隊のパイロットを題材とした映画は、不安になるほど国家主義者たちを勢いづかせている。
東京のある若い映画ファンは、自分がなぜ3度目の「永遠の0(ゼロ)」鑑賞のために行列に並んでいるか、はっきり分かっていた。第2次世界大戦末期に米国の戦艦を攻撃した「カミカゼ」パイロットの集団に関する映画から彼が感じ取ったメッセージは、当時の若い男性は今日の「草食」男子とは大違いで、男らしく、目的を持っていたということだ。
「特攻隊」として知られるパイロットらは長年、物議を醸してきたが、彼らの物語が国内でこれほど人気を博したことはなかった。「永遠の0」(神風特攻隊が操縦していた零式戦闘機にちなんで名付けられたもの)は、邦画としては過去最多の観客動員数を誇る映画の1つになりそうだ。
やはり「永遠の0」を鑑賞した安倍晋三首相は、映画に「感動した」と述べた。映画の原作となったベストセラー小説の著者である百田尚樹氏は、安倍氏と親しい。安倍氏は昨年、日本の公共放送局、日本放送協会(NHK)の経営委員に百田氏を任命した。
百田氏の意見は保守派にしても右寄りで、2月の東京都知事選でやはり右派の田母神俊雄氏の選挙応援に駆け付けた際、1973年に日本兵が中国民間人を殺した南京大虐殺は「なかった」と言い放った。
「永遠の0」が映画館を埋め尽くしている頃、南九州市も近隣諸国を苛立たせることに一役買っていた。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界記憶遺産」への登録を目指し、神風特攻隊に関する文書を提出したのだ。
世界記憶遺産は重要な文書や原稿を登録するもので、マグナカルタや人権宣言が含まれている。市が提出した遺物の中には、特攻隊パイロットの別れの手紙や日記、詩などが含まれている。いずれも、何百人もの特攻隊員が出撃した旧帝国陸軍基地の跡地に建つ市立知覧特攻平和会館に所蔵されているものだ。
だが、映画も一連の文書も、神風特攻隊員の姿を正しく伝えていない。右派は彼らのことを、お国のため雄々しく死んでいった意欲的な戦士として描こうとする。「永遠の0」では、最初の方はメッセージがはっきりしない。エリートパイロットの主人公が生き延びようとして軍の名誉を傷つける。ところが、そんな彼が任務を受け入れ、人の言う輝かしい栄光に包まれて死んだ時に本物の英雄になるのだ。
知覧特攻平和会館とその所蔵文書も概ね、この解釈を裏付けている。だが、歴史家の大貫恵美子氏は、大半の兵士は強制的に志願させられたと言う。同氏は南九州市が提出した特攻隊員の手紙は、書かれた時点で上官の検閲を受けたり、強制的に書かされたりしたのではないかと疑問に思っている。
韓国はこうした動きに反発しており、中国も予想通りの怒りを見せている。南京市当局は、ユネスコ世界記憶遺産への登録を目指し、1937年の大虐殺を裏付ける証拠を再度提出すると表明している。
また、中国が百田氏の歴史観を注視するのには、もっともな理由がある。「永遠の0」が映画興行成績にとどまらず、大きな成功を収めているからだ。百田氏の支援を受け、やはり日本の歴史上の侵略を否定する田母神氏は都知事選で思いのほか健闘し、当選者の3分の1近くの票を獲得したのだ。
朝日新聞は、20代の若者の4人に1人――特に若い男性――が田母神氏に投票したと報じている。