昼のガスパール・オカブ日記

閑人オカブの日常、つらつら思ったことなど。語るもせんなき繰り言を俳句を交えて独吟。

パリのカフェを日本でやったら

2015-04-04 20:30:05 | 日記・エッセイ・コラム

土曜の昼下がり、ダメ押しの花見をしようと、かーたんと北澤川に出かけたが、あまりの寒さに花見どころではなくなり、淡島通り沿いのイタリアン『カフェ・ピアノ・ピアノ』に飛び込んだ。初めて入る店である。
ランチを食べながら、日本で本格的なフレンチ・カフェ・ビジネスを始めたらそこそこ儲かるのではなどという想いつきが頭に浮かんだ。
「フレンチ・カフェ」とは、「カフェ」と「バー」と「ブラッセリー」と「レストラン」の看板を掛けた、要は喫茶店とバーとビア・ホールと大衆食堂を兼業した店を出すということであり、全く新しい業態を実現させることになる。
パリなら街の各所にこうした個人経営の店があってそこそこ経営している。昔はタバコ屋も兼ねていたが最近、フランスのカフェの喫煙が法で禁止されて以降どうなったかわからない。
日本でも部分的ながら先行事例がある。まず、『ドトール』。ここの創業者はフランスのカフェを日本でも、という意気込みで事業を始めたそうだが、日本にある『ドトール』はパリのカフェとは似ても似つかぬものである。
次に『プロント』。アルコールを出すという点では『ドトール』よりフレンチ・カフェに近いのかもしれないが、カフェ・タイムとバー・タイムがはっきりと区切られてしまっているのがいけない。
イタリア発祥だが世界的カフェ・チェーン『セガ...・フレット・カフェ』も見落とせないが、日本ではセルフ・サービスであること、本格的食事ができないことが画竜点睛を欠く。
今、最もフレンチ・カフェに近似したものは銀座と赤坂に店のある『オー・バカナル』や渋谷文化村に本拠を構えた『レ・ドゥー・マゴ』だろう。しかし、これらの店は「フレンチ・カフェ」をモデルにしたテーマ・パークであり、ちょっと庶民には手が出ない高級店である。コーヒーもビールもワインもカクテルもビフテック・フリットもサンドイッチもあるが、いわば朝の出勤途上、コントワールで新聞を読みながら「アン・キャッフェ!」「ルージュ!」とぶっきらぼうに注文して、一杯ひっかけて出ていくような日常的な店ではない。おめかしをして、気取って今日はそれなりの食事をするぞ、と気合を入れて出かけていくハイソなお店なのだ。
オカブが着想しているのはローカル・ビジネスとしてやっていけて、かつ庶民的な、さらには朝のカフェ、昼のプラ・ド・ジュール、夜のバーとレストランと、店舗というリソースをほぼ丸一日活用できるビジネス・モデルだ。
しかし、農産品輸入国の日本ではこうしたスタイルの店を庶民的なものにするには原価率がとてつもなく高くなってしまう。また立地条件の良い店舗物件は賃貸料が割に合わないほど高額になるのもネックだ。かーたんにこのアイデアを言ったら「あなたにはできないでしょ」と一蹴された。結局この一言で画期的ビジネス・プランはお流れとなった。
しかし『ブルー・ボトル・カフェ』の例もあるようにどこで瓢箪から駒が出るかもわからない。新しい商売のネタをあれこれ妄想するのも楽しいものだ。
ランチはかーたんが黒毛和牛のステーキ。オカブがキャベツとベーコンとアンチョビのスパゲティ、それにビール二杯。美味かった。ランチ・セットなのでこれにアンチ・パスタとプチ・フール、ドリンクがつく。それを考えるとお得な食事だ。
しかし、オカブの考えるカフェはこんな凝った食事を出す必要はない。身近な惣菜の食事を提供する店でいい。サンドウィッチとかクロック・ムッシューとかサラダとか。せいぜいビフテック・フリットまで・・・・・まだ諦めきれないところがある。

花冷えや浮世に夢見る愚かさよ   素閑