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月刊「光陽」編集部ー岩槻・光陽書道

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王羲之「蘭亭序」全文

2020年05月07日 | 便覧

蘭 亭 序                王 羲 之

 


永和九年歳在癸丑暮春之初會于會稽山陰

 

 

 

之蘭亭脩禊事也群賢畢至少長咸集此地有 

 

 

 

崇山峻領茂林脩竹又有清流激湍暎帶左右

 

〇「領」は、古く「嶺」と通じて用いられた。

 

引以爲流觴曲水列坐其次雖無絲竹管弦之

 

 

 

盛一觴一詠亦足以暢叙幽情是日也天朗氣

 

 

 

淸惠風和暢仰觀宇宙之大俯察品類之盛所

 

 

 

以遊目騁懷足以極視聽之娯信可樂也夫人

 

 

 

之相與俯仰一世或取諸懷抱悟言一室之内

 

 

 

或因寄所託放浪形骸之外雖趣舎萬殊靜躁

 

 

 

不同當其欣於所遇蹔得於己怏然自足不知

 

〇「怏然」は「快然」が正しいとされる。

 

老之將至及其所之既惓情隨事遷感慨係之

 

 

 

矣向之所欣俛仰之閒以爲陳迹猶不能不以

 

 

 

之興懷況脩短隨化終期於盡古人云死生亦

 

 

 

大矣豈不痛哉毎攬昔人興感之由若合一契

 

 

 

未甞不臨文嗟悼不能喩之於懷固知一死生

 

 

 

爲虚誕齊彭殤爲妄作後之視今亦由今之視

 

〇「由」は「猶」と通用。

 

昔悲夫故列叙時人録其所述雖世殊事異所

 

 

 

以興懷其致一也後之攬者亦將有感於斯文

 

 

 



《蘭亭序(らんていじょ)書き下し文》
永和九年、歳(とし)は癸丑(きちう)に在り。暮春の初め、会稽山陰の蘭亭に会す。禊事(けいじ)を脩(をさ)むるなり。

群賢(ぐんけん)畢(ことごと)く至り、少長(せうちやう)咸(みな)集まる。此の地に、崇山(すうざん)峻領(しゆんれい)、茂林(もりん)脩竹(しうちく)有り。

又、清流(せいりう)激湍(げきたん)有りて、左右に暎帯(えいたい)す。引きて以て流觴(りうしやう)の曲水と為(な)し、其の次(じ)に列坐す。糸竹管弦の盛(せい)無しと雖(いへど)も、一觴一詠、亦以て幽情を暢叙(ちやうじよ)するに足る。

是の日や、天朗(ほが)らかに気清く、恵風(けいふう)和暢(わちやう)せり。仰いでは宇宙の大を観(み)、俯しては品類の盛んなるを察す。目を遊ばしめ(おも)ひを騁(は)する所以(ゆゑん)にして、以て視聴の娯しみを極むるに足れり。信(まこと)に楽しむべきなり。

(そ)れ人の相与(あひとも)一世(いつせい)に俯仰(ふぎやう)するや、或いは諸(これ)を懐(くわいはう)に取りて一室の内に悟言(ごげん)し、或いは託する所に因寄(いんき)して、形骸の外(ほか)に放浪す。

趣舎(しゆしや)万殊(ばんしゆ)にして、静躁(せいさう)同じからずと雖も、其の遇ふ所を欣び、蹔(しばら)く己(おのれ)に得るに当たりては、怏然(あうぜん)として自(みづか)ら足り、老(おい)の将(まさ)に至らんとするを知らず。

其の之(ゆ)く所既に惓(う)み、情(じやう)事(こと)に随ひて遷(うつ)るに及んでは、感慨(かんがい)之(これ)に係(かか)れり。

向(さき)の欣ぶ所は、俛仰(ふぎやう)の閒(かん)に、以(すで)に陳迹(ちんせき)と為(な)る。猶(な)ほ之(これ)を以て懐(おも)ひを興(おこ)さざる能はず。況んや脩短(しうたん)化(か)に随ひ、終(つひ)に尽くるに期(き)するをや。

古人云へり、死生も亦(また)大なりと。豈(あ)に痛ましからずや。毎(つね)に昔人(せきじん)感を興(おこ)すの由(よし)を攬(み)るに、一契(いつけい)を合(あは)せたるが若(ごと)し。未(いま)だ甞(かつ)て文に臨んで嗟悼(さたう)せずんばあらず。之(これ)を懐(こころ)に喩(さと)ること能はず。

(まこと)に死生を一(いつ)にするは虚誕(きよたん)たり、彭殤(はうしやう)を斉(ひと)しくするは妄作(まうさく)たるを知る。後(のち)の今を視るも、亦(また)(な)ほ今の昔を視るがごとくならん。悲しいかな。

故に時人(じじん)を列叙し、其の述ぶる所を録す。世(よ)殊に事(こと)異(こと)なりと雖も、懐(おも)ひを興(おこ)す所以(ゆゑん)は、其の致(むね)(いつ)なり。後(のち)攬(み)る者も、亦(また)将(まさ)に斯(こ)の文に感ずる有らんとす。


屈原「離騒経」(文選・文章篇)書き下し文

2020年05月07日 | 便覧

■「離騒経」(文選・文章篇)■

帝高陽の苗裔、朕が皇考を伯庸と曰う。

摂堤孟陬に貞しく、惟れ庚寅に吾以て降れり。

皇覧て余を初度に揆り、肇めて余に錫うに嘉名を以てす。

余を名づけて正則と曰い、余を字して零均と曰う。

紛として吾既に此の内美有り、又之を重ぬるに脩態を以てせり。

江離と辟芷とを扈り、秋蘭を紉いで以て佩と為す。

汨として余将に及ばざらんとするが如く、年歳の吾と与にせざるを恐る。

朝には「阝+比」の木蘭を搴り、夕べには洲の宿莽を攬る。

日月は忽として其れ淹まらず、春と秋と其れ代序す。

草木の零落するを惟い、美人の遅暮ならんことを恐る。

壮を撫して穢を棄てず、何ぞ其れ此の度を改めざる。

騏驥に乗りて以て馳騁し、来れ吾夫の先路を導かん。

昔三后の純粋なる、固に衆芳の在りし所なり。

申椒と菌桂とを雑う、豈維だ夫の茝を紉ぐのみならんや。

彼の尭舜の耿介なる、既に道に遵いて路を得たり。

何ぞ桀紂の昌披なる、夫れ唯だ捷径以て窘歩せり。

惟うに党人の偸楽せる、路は幽昧にして以て険隘なり。

豈余が身の殃を憚るならんや、皇輿の敗績せんことを恐るるなり。

忽として奔走して以て先後し、前王の踵武に及ばんとす。

荃 余の中情を察せず、反って讒を信じて斉怒す。

余 固より謇謇の患いを為すを知るも、忍んで舎むこと能わざるなり。

九天を指して以て正と為す、夫れ唯だ霊脩の故なり。

初め既に余と言を成ししも、後に悔い遁れて他有り。

余 既に離別を難らざるも、霊脩の数々化するを傷む。

余 既に蘭を九畹に滋え、又を百畝に樹う。

留夷と掲車とを畦にし、杜衡と芳芷とを雑う。

枝葉の峻茂せんことを冀い、願わくは時を竢って吾将に刈らんとす。

萎絶すと雖も其れ亦何ぞ傷まん、衆芳の蕪穢するを哀しむ。

衆 皆競い進みて以て貪婪なり、憑つれども求索に厭かず。

羌 内に己を恕して以て人を量り、各々心を興して嫉妬す。

忽として馳騖して以て追逐すれども、余が心の急とする所に非ず。

老 冉冉として其れ将に至らんとす、脩名の立たざらんことを恐る。

朝には木蘭の墜露を飲み、夕べには秋匊の落英を餐らう。

苟くも余が情其れ信に姱しく以て練要ならば、長く顑頷するも亦何ぞ傷まん。

木根を擥りて以て茝を結び、薛荔の落蘂を貫く。

菌桂を矯めて以てを紉ぎ、胡縄の纚纚たるを索にす。

謇 吾夫の前脩に法る、時俗の服する所に非ず。

今の人に周わずと雖も、願わくは彭咸の遺則に依らん。

長太息して以て涕を掩い、人生の多艱なるを哀しむ。

余好く脩姱して以て鞿羈すと雖も、謇 朝に誶めて夕べに替てらる。

既に余を替つるに纕を以てし、又之に申ぬるに攬茝を以てす。

亦余が心の善しとする所、九死すと雖も其れ猶お未だ悔いず。

怨むらくは霊脩の浩蕩として、終に夫の人心を察せざることを。

衆女余の蛾眉を嫉み、謡諑して余を謂うに善く淫するを以てす。

固に時俗の工巧なる、規矩に偭いて改め錯く。

縄墨に背いて以て曲を追い、周容を競いて以て度と為す。

忳として鬱悒して余侘傺し、吾独り此の時に窮困す。

寧ろ溘に死して以て流亡すとも、余此の態を為すに忍びざるなり。

鷙鳥の群せざるは、前代自りして固より然り。

何ぞ方円の能く周わん、夫れ孰か道を異にして相安んぜん。

心を屈して志を抑え、尤めを忍んで詬を攘わん。

清白に伏して以て直に死するは、固に前聖の厚くする所なり。

道を相るの察らかならざるを悔い、延佇して吾将に反らんとす。

朕が車を廻らして以て路に復り、行迷未だ遠からざるに及ばん。

余が馬を蘭皐に歩ませ、椒丘に馳せて且く焉に止息す。

進んで入れられずして以て尤めに離わば、退いて将に復た吾が初服を脩めんとす。

芰荷を製して以て衣と為し、芙蓉を集めて以て裳と為す。

吾を知らざるも其れ亦已まん、苟に余が情其れ信に芳し。

余が冠の岌岌たるを高くし、余が佩の陸離たるを長くす。

芳と沢と其れ雑糅し、唯だ昭質其れ猶お未だ虧けず。

忽ち反顧して以て目を游ばしめ、将に往きて四荒を観んとす。

佩は繽紛として其れ繁飾し、芳は霏霏として其れ弥々章らかなり。

人生各々楽む所有り、余独り脩を好んで以て常と為す。

体解せらると雖も吾猶お未だ変ぜず、豈余が心の懲る可けんや。

女「須(の下に)+女」の嬋媛たる、申申として其れ予を詈る。

曰く、鯀は婞直にして以て身を亡ぼし、終然として羽の野に夭せり。

汝は何ぞ博謇にして脩を好み、紛として独り此の姱節有るや。

薋菉葹を以て室を盈てるに、判として独り離れて服せざる。

衆は戸ごとに説く可からず、孰か云に余の中情を察せん。

世は並びに挙りて朋を好む、夫れ何ぞ煢独にして予に聴かざる、と。

前聖に依りて節中せんとし、喟として心に憑りて茲に歴れり。

沅湘を済りて以て南征し、重華に就いて詞を陳ぶ。

啓に九弁と九歌とあるも、夏康娯しんで以て自ら縦にす。

難を顧みて以て後を図らず、五子用て家巷に失えり。

羿は淫遊して以て畋に佚り、又好んで夫の封狐を射る。

固に乱流して其れ終わること鮮なし、浞は又夫の厥の家を貪る。

澆は身にを被服し、欲を縦にして忍びず。

日々に康娯して自ら忘れ、厥の首用て夫れ顚隕せり。

夏桀の常に違える、乃ち遂に焉に殃に逢えり。

后辛の葅醢にする、殷宗用て長からず。

湯禹は儼にして祗敬し、周は道を論じて差う莫し。

賢を挙げて能に授け、縄墨を脩めて頗かず。

皇天は私阿無く、人徳を覧て馬に輔を錯く。

夫れ維だ聖哲にして以て茂行あり、苟に此の下土を用うるを得。

前を瞻て後ろを顧み、人の計極を相観するに、

夫れ孰か義に非ずして用う可けん、孰か善に非ずして服す可けん。

余が身を阽うして死に危ずくも、余が初めを覧て其れ猶未だ悔いず。

鑿を量らずして枘を正せば、固に前脩も以て葅醢にせらる。

曽ねて嘘唏して余鬱邑し、朕が時の当たらざるを哀しむ。

茹を攬りて以て涕を掩えど、余が襟を霑して浪浪たり。

跪き衽を敷きて以て辞を陳べ、耿として吾既に此の中正を得たり。

玉虯を駟として以て鷖に乗り、溘ち風に埃して余上り征く。

朝に軔を蒼梧に発し、夕に余県圃に至る。

少く此の霊瑣に留まらんと欲すれば、日は忽忽として其れ将に暮れんとす。

吾羲和をして節を弭め、崦「山+茲」を望んで迫ること勿からしむ。

路は漫漫として其れ脩遠なり、吾将に上下して求索せんとす。

余が馬に咸池に飲い、余が轡を扶桑に結ぶ。

若木を折りて以て日を払ち、聊か須臾して以て相羊す。

望舒を前にして先駆せしめ、飛廉を後にして奔属せしむ。

鸞皇 余が為に先ず戒め、雷師余に告ぐるに未だ具わらざるを以てす。

吾 鳳凰をして飛騰せしめ、又之に継ぐに日夜を以てす。

飄風屯まりて其れ相離れ、雲霓を師いて来り御う。

紛総総として其れ離合し、斑陸離として其れ上下す。

吾 帝閽をして関を開かしめんとすれば、閶闔に倚りて予を望むのみ。

時は曖曖として其れ将に罷まらんとし、幽蘭を結んで延佇す。

世 溷濁して分かたず、好んで美を蔽いて嫉妬す。

朝に吾将に白水を済り、閬風に登りて馬を緤がんとす。

忽ち反顧して以て流涕し、高丘の女無きを哀しむ。

溘ち吾 此の春宮に遊び、瓊枝を折りて以て佩に継ぐ。

栄華の未だ落ちざるに及び、下女の詒る可きをウ)相ん。

吾 豊隆をして雲に乗り、宓妃の在る所を求めしむ。

佩纕を解いて以て言を結び、吾 蹇脩をして以て理を為さしむ。

紛総総として其れ離合し、忽ち緯「糸+畫」して其れ遷り難し。

夕べに帰りて窮石に次り、朝に髪を洧盤に濯う。

厥の美を保ちて以て驕傲し、日々に康娯して以て淫遊す。

信に美なりと雖も礼無し、来れ違棄して改め求めん。

覧て四極を相観し、天に周流して余及ち下る。

瑤台の偃蹇たるを望み、有娀の佚女を見る。

吾 鴆をして媒を為さしむるに、鴆 余に告ぐるに好からざるを以てす。

雄鳩の鳴き逝く、余猶お其の佻巧を悪む。

心 猶予して狐疑し、自ら適かんと欲するも可ならず。

鳳皇は既に詒を受く、恐らくは高辛の我に先んぜんことを。

遠く集らんと欲するも止まる所無し、聊か浮游して以て逍遥せん。

少康の未だ家せざるに及び、有虞の二姚を留めん。

理 弱くして媒拙く、導言の固からざるを恐る。

時 溷濁して賢を嫉み、好んで美を蔽いて悪を称ぐ。

閨中既に以て邃遠なり、哲王又寤らず。

朕が情を懐きて発せず、余焉くんぞ能く忍びて此と終古せん。

「艹+夐」茅と筳「竹+專」とを索り、霊氛に命じて余が為に之を占わしむ。

曰く、両美は其れ必ず合わん、孰か脩を信じて之を慕わんや。

思うに九州の博大なる、豈唯だ是にのみ其れ女有らんや、と。

曰く、勉めて遠逝して狐疑する無かれ、孰か美を求めて女を釈てん。

何の所にか独り芳草無からん、爾何ぞ故宇を懐う。

時幽昧にして以て眩曜す、孰か云に余の美悪を察せん。

民の好悪は其れ同じからず、惟だ此の党人のみ其れ独り異なり。

戸ごとに艾を服して以て要に盈て、幽蘭は其れ佩ぶ可からずと謂う。

草木を覧察するすら其れ猶お未だ得ず、豈の美に之れ能く当らんや。

糞壌を蘇りて以て幃に充て、申椒は其れ芳しからずと謂う、と。

霊氛の吉占に従わんと欲すれども、心猶予して狐疑す。

巫咸 将に夕べに降らんとす、椒糈を懐いて之を要す。

百神 翳いて其れ備に降り、九疑 繽として其れ並び迎う。

皇は剡剡として其れ霊を揚げ、余に告ぐるに吉故を以てす。

曰く、勉めて升降して以て上下し、矩矱の同じき所を求めよ。

湯禹は儼にして合うを求め、摯と皇繇とは而ち能く調う。

苟くも中情其れ脩を好まば、何ぞ必ずしも夫の行媒を用いん。

説は築を傅巌に操れども、武丁用いて疑わず。

呂望の刀を鼓する、周文に遭いて挙げらるるを得たり。

寧戚の謳歌する、斉桓聞いて以て輔に該えり。

年歳の未だ晏からず、時も亦猶お其れ未だ央きざるに及ばん。

恐らくは「單+鳥」鴂 先ず鳴きて、百草をして之が為に芳しからざらしめんことを、と。

何ぞ瓊佩の偃蹇たる、衆 「艹+愛」然として之を蔽う。

惟だ此の党人の亮ならざる、恐らくは嫉妬して之を折かん。

時は繽紛として其れ変易す、又何ぞ以て淹留す可けん。

蘭芷は変じて芳しからず、荃は化して茅と為る。

何ぞ昔日の芳草、今直ちに此の蕭艾と為るや。

豈其れ他の故有らんや、脩を好むこと莫きの害なり。

余 蘭を以て恃む可しと為せり、羌 実無くして容長ず。

厥の美を委てて以て俗に従い、苟くも衆芳を引くを得たり。

椒は専ら佞にして以て慢慆たり、「木+殺」は又夫の佩幃を充たさんと欲す。

既に進むを干めて入れられんことを務むれば、又何の芳をか之れ能く祗しまん。

固より時俗の流れに従う、又孰か能く変化すること無からん。

椒蘭を覧るに其れ茲の若し、又況んや掲車と江離とをや。

惟だ茲の佩の貴ぶ可き、厥の美を委てて茲に歴る。

芳 菲菲として虧け難く、芬は今に至るも猶お未だ沫まず。

度を和らげ調えて以て自ら娯しみ、聊か浮游して女を求めん。

余が飾りの方に壮んなるに及んで、周流して上下を観ん。

霊氛既に余に告ぐるに吉占を以てす、吉日を歴んで吾将に行かんとす。

瓊枝を折りて以て羞と為し、瓊「麻+非+灬」を精げて以て粻と為す。

余が為に飛竜に駕し、瑤象を雑えて以て車と為す。

何ぞ離心の同じかる可き、吾将に遠逝して以て自ら疏けんとす。

邅りて吾夫の崑崙に道すれば、路脩遠にして以て周流す。

雲霓の晻藹たるを揚げ、玉鸞の啾啾たるを鳴らす。

朝に軔を天津に発し、夕べに余西極に至る。

鳳凰は翼しみて其れ旂を承げ、高く翺翔して之れ翼翼たり。

忽ち吾此の流沙に行き、赤水に遵いて容与す。

蛟竜を麾いて津に梁かけしめ、西皇に詔げて予を渉さしむ。

路は脩遠にして以て艱み多く、衆車を騰せて径に待たしむ。

不周に路して以て左転し、西海を指して以て期と為す。

余が車を屯むこと其れ千乗なり、玉軑を斉えて並び馳す。

八竜の婉婉たるに駕して、雲旗の委移たるを載つ。

志を抑えて節を弭め、神高く馳せて之れ邈邈たり。

九歌を奏して韶を舞い、聊か日を仮りて以て婾楽す。

皇の赫戯たるに陟升し、忽ち夫の旧郷を臨睨す。

僕夫悲しみ余が馬懐い、蜷局として顧みて行かず。

乱に曰く、已んぬるかな。

国に人無く吾を知る莫し。又何ぞ故都を懐わん。

既に与に美政を為すに足る莫し。吾将に彭咸の居る所に従わんとす、と。