蘭 亭 序 王 羲 之
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之蘭亭脩禊事也群賢畢至少長咸集此地有 |
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崇山峻領茂林脩竹又有清流激湍暎帶左右 |
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〇「領」は、古く「嶺」と通じて用いられた。 |
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引以爲流觴曲水列坐其次雖無絲竹管弦之 |
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盛一觴一詠亦足以暢叙幽情是日也天朗氣 |
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淸惠風和暢仰觀宇宙之大俯察品類之盛所 |
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以遊目騁懷足以極視聽之娯信可樂也夫人 |
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之相與俯仰一世或取諸懷抱悟言一室之内 |
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或因寄所託放浪形骸之外雖趣舎萬殊靜躁 |
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不同當其欣於所遇蹔得於己怏然自足不知 |
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〇「怏然」は「快然」が正しいとされる。 |
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老之將至及其所之既惓情隨事遷感慨係之 |
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矣向之所欣俛仰之閒以爲陳迹猶不能不以 |
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之興懷況脩短隨化終期於盡古人云死生亦 |
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大矣豈不痛哉毎攬昔人興感之由若合一契 |
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未甞不臨文嗟悼不能喩之於懷固知一死生 |
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爲虚誕齊彭殤爲妄作後之視今亦由今之視 |
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〇「由」は「猶」と通用。 |
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昔悲夫故列叙時人録其所述雖世殊事異所 |
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以興懷其致一也後之攬者亦將有感於斯文 |
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群賢(ぐんけん)畢(ことごと)く至り、少長(せうちやう)咸(みな)集まる。此の地に、崇山(すうざん)峻領(しゆんれい)、茂林(もりん)脩竹(しうちく)有り。 又、清流(せいりう)激湍(げきたん)有りて、左右に暎帯(えいたい)す。引きて以て流觴(りうしやう)の曲水と為(な)し、其の次(じ)に列坐す。糸竹管弦の盛(せい)無しと雖(いへど)も、一觴一詠、亦以て幽情を暢叙(ちやうじよ)するに足る。 是の日や、天朗(ほが)らかに気清く、恵風(けいふう)和暢(わちやう)せり。仰いでは宇宙の大を観(み)、俯しては品類の盛んなるを察す。目を遊ばしめ懐(おも)ひを騁(は)する所以(ゆゑん)にして、以て視聴の娯しみを極むるに足れり。信(まこと)に楽しむべきなり。 夫(そ)れ人の相与(あひとも)に一世(いつせい)に俯仰(ふぎやう)するや、或いは諸(これ)を懐抱(くわいはう)に取りて一室の内に悟言(ごげん)し、或いは託する所に因寄(いんき)して、形骸の外(ほか)に放浪す。 趣舎(しゆしや)万殊(ばんしゆ)にして、静躁(せいさう)同じからずと雖も、其の遇ふ所を欣び、蹔(しばら)く己(おのれ)に得るに当たりては、怏然(あうぜん)として自(みづか)ら足り、老(おい)の将(まさ)に至らんとするを知らず。 其の之(ゆ)く所既に惓(う)み、情(じやう)事(こと)に随ひて遷(うつ)るに及んでは、感慨(かんがい)之(これ)に係(かか)れり。 向(さき)の欣ぶ所は、俛仰(ふぎやう)の閒(かん)に、以(すで)に陳迹(ちんせき)と為(な)る。猶(な)ほ之(これ)を以て懐(おも)ひを興(おこ)さざる能はず。況んや脩短(しうたん)化(か)に随ひ、終(つひ)に尽くるに期(き)するをや。 古人云へり、死生も亦(また)大なりと。豈(あ)に痛ましからずや。毎(つね)に昔人(せきじん)感を興(おこ)すの由(よし)を攬(み)るに、一契(いつけい)を合(あは)せたるが若(ごと)し。未(いま)だ甞(かつ)て文に臨んで嗟悼(さたう)せずんばあらず。之(これ)を懐(こころ)に喩(さと)ること能はず。 固(まこと)に死生を一(いつ)にするは虚誕(きよたん)たり、彭殤(はうしやう)を斉(ひと)しくするは妄作(まうさく)たるを知る。後(のち)の今を視るも、亦(また)由(な)ほ今の昔を視るがごとくならん。悲しいかな。 故に時人(じじん)を列叙し、其の述ぶる所を録す。世(よ)殊に事(こと)異(こと)なりと雖も、懐(おも)ひを興(おこ)す所以(ゆゑん)は、其の致(むね)一(いつ)なり。後(のち)の攬(み)る者も、亦(また)将(まさ)に斯(こ)の文に感ずる有らんとす。 |
■「離騒経」(文選・文章篇)■
帝高陽の苗裔、朕が皇考を伯庸と曰う。
摂堤孟陬に貞しく、惟れ庚寅に吾以て降れり。
皇覧て余を初度に揆り、肇めて余に錫うに嘉名を以てす。
余を名づけて正則と曰い、余を字して零均と曰う。
紛として吾既に此の内美有り、又之を重ぬるに脩態を以てせり。
江離と辟芷とを扈り、秋蘭を紉いで以て佩と為す。
汨として余将に及ばざらんとするが如く、年歳の吾と与にせざるを恐る。
朝には「阝+比」の木蘭を搴り、夕べには洲の宿莽を攬る。
日月は忽として其れ淹まらず、春と秋と其れ代序す。
草木の零落するを惟い、美人の遅暮ならんことを恐る。
壮を撫して穢を棄てず、何ぞ其れ此の度を改めざる。
騏驥に乗りて以て馳騁し、来れ吾夫の先路を導かん。
昔三后の純粋なる、固に衆芳の在りし所なり。
申椒と菌桂とを雑う、豈維だ夫の茝を紉ぐのみならんや。
彼の尭舜の耿介なる、既に道に遵いて路を得たり。
何ぞ桀紂の昌披なる、夫れ唯だ捷径以て窘歩せり。
惟うに党人の偸楽せる、路は幽昧にして以て険隘なり。
豈余が身の殃を憚るならんや、皇輿の敗績せんことを恐るるなり。
忽として奔走して以て先後し、前王の踵武に及ばんとす。
荃 余の中情を察せず、反って讒を信じて斉怒す。
余 固より謇謇の患いを為すを知るも、忍んで舎むこと能わざるなり。
九天を指して以て正と為す、夫れ唯だ霊脩の故なり。
初め既に余と言を成ししも、後に悔い遁れて他有り。
余 既に離別を難らざるも、霊脩の数々化するを傷む。
余 既に蘭を九畹に滋え、又を百畝に樹う。
留夷と掲車とを畦にし、杜衡と芳芷とを雑う。
枝葉の峻茂せんことを冀い、願わくは時を竢って吾将に刈らんとす。
萎絶すと雖も其れ亦何ぞ傷まん、衆芳の蕪穢するを哀しむ。
衆 皆競い進みて以て貪婪なり、憑つれども求索に厭かず。
羌 内に己を恕して以て人を量り、各々心を興して嫉妬す。
忽として馳騖して以て追逐すれども、余が心の急とする所に非ず。
老 冉冉として其れ将に至らんとす、脩名の立たざらんことを恐る。
朝には木蘭の墜露を飲み、夕べには秋匊の落英を餐らう。
苟くも余が情其れ信に姱しく以て練要ならば、長く顑頷するも亦何ぞ傷まん。
木根を擥りて以て茝を結び、薛荔の落蘂を貫く。
菌桂を矯めて以てを紉ぎ、胡縄の纚纚たるを索にす。
謇 吾夫の前脩に法る、時俗の服する所に非ず。
今の人に周わずと雖も、願わくは彭咸の遺則に依らん。
長太息して以て涕を掩い、人生の多艱なるを哀しむ。
余好く脩姱して以て鞿羈すと雖も、謇 朝に誶めて夕べに替てらる。
既に余を替つるに纕を以てし、又之に申ぬるに攬茝を以てす。
亦余が心の善しとする所、九死すと雖も其れ猶お未だ悔いず。
怨むらくは霊脩の浩蕩として、終に夫の人心を察せざることを。
衆女余の蛾眉を嫉み、謡諑して余を謂うに善く淫するを以てす。
固に時俗の工巧なる、規矩に偭いて改め錯く。
縄墨に背いて以て曲を追い、周容を競いて以て度と為す。
忳として鬱悒して余侘傺し、吾独り此の時に窮困す。
寧ろ溘に死して以て流亡すとも、余此の態を為すに忍びざるなり。
鷙鳥の群せざるは、前代自りして固より然り。
何ぞ方円の能く周わん、夫れ孰か道を異にして相安んぜん。
心を屈して志を抑え、尤めを忍んで詬を攘わん。
清白に伏して以て直に死するは、固に前聖の厚くする所なり。
道を相るの察らかならざるを悔い、延佇して吾将に反らんとす。
朕が車を廻らして以て路に復り、行迷未だ遠からざるに及ばん。
余が馬を蘭皐に歩ませ、椒丘に馳せて且く焉に止息す。
進んで入れられずして以て尤めに離わば、退いて将に復た吾が初服を脩めんとす。
芰荷を製して以て衣と為し、芙蓉を集めて以て裳と為す。
吾を知らざるも其れ亦已まん、苟に余が情其れ信に芳し。
余が冠の岌岌たるを高くし、余が佩の陸離たるを長くす。
芳と沢と其れ雑糅し、唯だ昭質其れ猶お未だ虧けず。
忽ち反顧して以て目を游ばしめ、将に往きて四荒を観んとす。
佩は繽紛として其れ繁飾し、芳は霏霏として其れ弥々章らかなり。
人生各々楽む所有り、余独り脩を好んで以て常と為す。
体解せらると雖も吾猶お未だ変ぜず、豈余が心の懲る可けんや。
女「須(の下に)+女」の嬋媛たる、申申として其れ予を詈る。
曰く、鯀は婞直にして以て身を亡ぼし、終然として羽の野に夭せり。
汝は何ぞ博謇にして脩を好み、紛として独り此の姱節有るや。
薋菉葹を以て室を盈てるに、判として独り離れて服せざる。
衆は戸ごとに説く可からず、孰か云に余の中情を察せん。
世は並びに挙りて朋を好む、夫れ何ぞ煢独にして予に聴かざる、と。
前聖に依りて節中せんとし、喟として心に憑りて茲に歴れり。
沅湘を済りて以て南征し、重華に就いて詞を陳ぶ。
啓に九弁と九歌とあるも、夏康娯しんで以て自ら縦にす。
難を顧みて以て後を図らず、五子用て家巷に失えり。
羿は淫遊して以て畋に佚り、又好んで夫の封狐を射る。
固に乱流して其れ終わること鮮なし、浞は又夫の厥の家を貪る。
澆は身にを被服し、欲を縦にして忍びず。
日々に康娯して自ら忘れ、厥の首用て夫れ顚隕せり。
夏桀の常に違える、乃ち遂に焉に殃に逢えり。
后辛の葅醢にする、殷宗用て長からず。
湯禹は儼にして祗敬し、周は道を論じて差う莫し。
賢を挙げて能に授け、縄墨を脩めて頗かず。
皇天は私阿無く、人徳を覧て馬に輔を錯く。
夫れ維だ聖哲にして以て茂行あり、苟に此の下土を用うるを得。
前を瞻て後ろを顧み、人の計極を相観するに、
夫れ孰か義に非ずして用う可けん、孰か善に非ずして服す可けん。
余が身を阽うして死に危ずくも、余が初めを覧て其れ猶未だ悔いず。
鑿を量らずして枘を正せば、固に前脩も以て葅醢にせらる。
曽ねて嘘唏して余鬱邑し、朕が時の当たらざるを哀しむ。
茹を攬りて以て涕を掩えど、余が襟を霑して浪浪たり。
跪き衽を敷きて以て辞を陳べ、耿として吾既に此の中正を得たり。
玉虯を駟として以て鷖に乗り、溘ち風に埃して余上り征く。
朝に軔を蒼梧に発し、夕に余県圃に至る。
少く此の霊瑣に留まらんと欲すれば、日は忽忽として其れ将に暮れんとす。
吾羲和をして節を弭め、崦「山+茲」を望んで迫ること勿からしむ。
路は漫漫として其れ脩遠なり、吾将に上下して求索せんとす。
余が馬に咸池に飲い、余が轡を扶桑に結ぶ。
若木を折りて以て日を払ち、聊か須臾して以て相羊す。
望舒を前にして先駆せしめ、飛廉を後にして奔属せしむ。
鸞皇 余が為に先ず戒め、雷師余に告ぐるに未だ具わらざるを以てす。
吾 鳳凰をして飛騰せしめ、又之に継ぐに日夜を以てす。
飄風屯まりて其れ相離れ、雲霓を師いて来り御う。
紛総総として其れ離合し、斑陸離として其れ上下す。
吾 帝閽をして関を開かしめんとすれば、閶闔に倚りて予を望むのみ。
時は曖曖として其れ将に罷まらんとし、幽蘭を結んで延佇す。
世 溷濁して分かたず、好んで美を蔽いて嫉妬す。
朝に吾将に白水を済り、閬風に登りて馬を緤がんとす。
忽ち反顧して以て流涕し、高丘の女無きを哀しむ。
溘ち吾 此の春宮に遊び、瓊枝を折りて以て佩に継ぐ。
栄華の未だ落ちざるに及び、下女の詒る可きをウ)相ん。
吾 豊隆をして雲に乗り、宓妃の在る所を求めしむ。
佩纕を解いて以て言を結び、吾 蹇脩をして以て理を為さしむ。
紛総総として其れ離合し、忽ち緯「糸+畫」して其れ遷り難し。
夕べに帰りて窮石に次り、朝に髪を洧盤に濯う。
厥の美を保ちて以て驕傲し、日々に康娯して以て淫遊す。
信に美なりと雖も礼無し、来れ違棄して改め求めん。
覧て四極を相観し、天に周流して余及ち下る。
瑤台の偃蹇たるを望み、有娀の佚女を見る。
吾 鴆をして媒を為さしむるに、鴆 余に告ぐるに好からざるを以てす。
雄鳩の鳴き逝く、余猶お其の佻巧を悪む。
心 猶予して狐疑し、自ら適かんと欲するも可ならず。
鳳皇は既に詒を受く、恐らくは高辛の我に先んぜんことを。
遠く集らんと欲するも止まる所無し、聊か浮游して以て逍遥せん。
少康の未だ家せざるに及び、有虞の二姚を留めん。
理 弱くして媒拙く、導言の固からざるを恐る。
時 溷濁して賢を嫉み、好んで美を蔽いて悪を称ぐ。
閨中既に以て邃遠なり、哲王又寤らず。
朕が情を懐きて発せず、余焉くんぞ能く忍びて此と終古せん。
「艹+夐」茅と筳「竹+專」とを索り、霊氛に命じて余が為に之を占わしむ。
曰く、両美は其れ必ず合わん、孰か脩を信じて之を慕わんや。
思うに九州の博大なる、豈唯だ是にのみ其れ女有らんや、と。
曰く、勉めて遠逝して狐疑する無かれ、孰か美を求めて女を釈てん。
何の所にか独り芳草無からん、爾何ぞ故宇を懐う。
時幽昧にして以て眩曜す、孰か云に余の美悪を察せん。
民の好悪は其れ同じからず、惟だ此の党人のみ其れ独り異なり。
戸ごとに艾を服して以て要に盈て、幽蘭は其れ佩ぶ可からずと謂う。
草木を覧察するすら其れ猶お未だ得ず、豈の美に之れ能く当らんや。
糞壌を蘇りて以て幃に充て、申椒は其れ芳しからずと謂う、と。
霊氛の吉占に従わんと欲すれども、心猶予して狐疑す。
巫咸 将に夕べに降らんとす、椒糈を懐いて之を要す。
百神 翳いて其れ備に降り、九疑 繽として其れ並び迎う。
皇は剡剡として其れ霊を揚げ、余に告ぐるに吉故を以てす。
曰く、勉めて升降して以て上下し、矩矱の同じき所を求めよ。
湯禹は儼にして合うを求め、摯と皇繇とは而ち能く調う。
苟くも中情其れ脩を好まば、何ぞ必ずしも夫の行媒を用いん。
説は築を傅巌に操れども、武丁用いて疑わず。
呂望の刀を鼓する、周文に遭いて挙げらるるを得たり。
寧戚の謳歌する、斉桓聞いて以て輔に該えり。
年歳の未だ晏からず、時も亦猶お其れ未だ央きざるに及ばん。
恐らくは「單+鳥」鴂 先ず鳴きて、百草をして之が為に芳しからざらしめんことを、と。
何ぞ瓊佩の偃蹇たる、衆 「艹+愛」然として之を蔽う。
惟だ此の党人の亮ならざる、恐らくは嫉妬して之を折かん。
時は繽紛として其れ変易す、又何ぞ以て淹留す可けん。
蘭芷は変じて芳しからず、荃は化して茅と為る。
何ぞ昔日の芳草、今直ちに此の蕭艾と為るや。
豈其れ他の故有らんや、脩を好むこと莫きの害なり。
余 蘭を以て恃む可しと為せり、羌 実無くして容長ず。
厥の美を委てて以て俗に従い、苟くも衆芳を引くを得たり。
椒は専ら佞にして以て慢慆たり、「木+殺」は又夫の佩幃を充たさんと欲す。
既に進むを干めて入れられんことを務むれば、又何の芳をか之れ能く祗しまん。
固より時俗の流れに従う、又孰か能く変化すること無からん。
椒蘭を覧るに其れ茲の若し、又況んや掲車と江離とをや。
惟だ茲の佩の貴ぶ可き、厥の美を委てて茲に歴る。
芳 菲菲として虧け難く、芬は今に至るも猶お未だ沫まず。
度を和らげ調えて以て自ら娯しみ、聊か浮游して女を求めん。
余が飾りの方に壮んなるに及んで、周流して上下を観ん。
霊氛既に余に告ぐるに吉占を以てす、吉日を歴んで吾将に行かんとす。
瓊枝を折りて以て羞と為し、瓊「麻+非+灬」を精げて以て粻と為す。
余が為に飛竜に駕し、瑤象を雑えて以て車と為す。
何ぞ離心の同じかる可き、吾将に遠逝して以て自ら疏けんとす。
邅りて吾夫の崑崙に道すれば、路脩遠にして以て周流す。
雲霓の晻藹たるを揚げ、玉鸞の啾啾たるを鳴らす。
朝に軔を天津に発し、夕べに余西極に至る。
鳳凰は翼しみて其れ旂を承げ、高く翺翔して之れ翼翼たり。
忽ち吾此の流沙に行き、赤水に遵いて容与す。
蛟竜を麾いて津に梁かけしめ、西皇に詔げて予を渉さしむ。
路は脩遠にして以て艱み多く、衆車を騰せて径に待たしむ。
不周に路して以て左転し、西海を指して以て期と為す。
余が車を屯むこと其れ千乗なり、玉軑を斉えて並び馳す。
八竜の婉婉たるに駕して、雲旗の委移たるを載つ。
志を抑えて節を弭め、神高く馳せて之れ邈邈たり。
九歌を奏して韶を舞い、聊か日を仮りて以て婾楽す。
皇の赫戯たるに陟升し、忽ち夫の旧郷を臨睨す。
僕夫悲しみ余が馬懐い、蜷局として顧みて行かず。
乱に曰く、已んぬるかな。
国に人無く吾を知る莫し。又何ぞ故都を懐わん。
既に与に美政を為すに足る莫し。吾将に彭咸の居る所に従わんとす、と。