
傾ける赤城の尾根や青嵐 季
死に隣る眠薬や蛙なく 季
春寒し恋は心の片隅に 季
汽車はいま上野をいづる青嵐 季
あし音をまつ朝暮や萩の花 季
櫻ちる墓は享年十九歳 季
人妻となりける君におぼろ月 季
兎に角に春は来るなり札納 季
笹鳴や愁はいつもあたらしき 季
舞姫のだらり崩れる牡丹かな 季
加比丹の帯をかたみや春浅し 季
朝顔や極道にわれ成果てつ 季
別るゝやまだ朝顔の露ながら 季
風鈴のうごかぬほどの戀心 季
野茨やこの道ゆかばふるさとか 季
百合が香や愁はいつもあたらしき 季
蟲なくや戀は心の片隅に 季
秋立つや葉の落ちぬ木も寂しかり 季
初雁や尖りし山の暮残る 季
足音をまつ明暮や萩の花 季
竹の葉の細りや星のわかれかな 季
花の下「かあいいピスの墓」とあり 季
ほつれ毛に遊ぶ風あり青すだれ 季