38雑詩巻 良寛 紙本二七・二×二五四糎
「天気稍和調」に始まる詩から「粲々倡家女」に始まるまで、長短三十六篇の詩から成る一巻である。
越後、与板町の庄屋新木屋に伝わっていたものであるが、非常に緊張した態度で書かれている。
というのも、新木屋は良寛の父以南の出た家で、そこに贈るための執筆であったからであろう。
詩はいずれも五合庵在住時代のもので、書かれたのはその時代の末期、良寛五十五、六歳ごろかと想像されている。
ともかく、良寛の細楷を見るには好適の遺墨である。
余家有竹林 冷々數千干
筝逬全遮路 梢高斜拂天
經霜陪精神 隔烟轉幽間
宜在松柏列 那此桃李妍
竿直節彌高 心虚根兪堅
愛爾貞清質 千秋希莫遷
四大方不安 累日倚枕衾
牆頽積雨後 窓寒脩竹陰
幽徑人跡絶 空階蘚華深
寥落有知此 何因慰我心
44 45 書簡 由之宛
良寛 東京国立博物館
紙本 一六・二×八五・七糎
和歌をそえて蒲圑を贈ってよこした弟由之に対する礼状で、初めに近況を報じ、つぎに長歌一首並びに反歌一首、最後に返歌二首をしたためている。
書風から見ると、良寛晩年に近いもののようである。
ふとんたまはりうやうやしくおさめまいらせ候。春寒信に困り入候。然ども僧は無事に過候。ひぜむも今は有か無かになり候。
かぜまぜに、雪はふりきぬ、雪まぜに、風はふきゝぬ、うづみびに、あしさしのべて、つれづれと、くさのいほりに、とぢこもり、うちかぞふれば、きさらぎも、ゆめのごとくに、すぎにけらしも
つきよめはすでにやよひとなりぬれどぬべのわかなもつまずありけり
みうたのかへし
極楽の蓮のうてなをてにとりてわれにおくるはきみが神通
いざさらばはちのすのうへにうちのらむよしや蛙と人はいうとも
やよひ二日
由之老 良寛