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インド映画の平和力

ジャーナリストさこう ますみの NEVER-ENDING JOURNEY

インド与党の母体・RSS、NETFLIX と Amazon に“反ヒンドゥ的”ドラマをやめろと要請か

2019年11月03日 | 表現の自由
 インド現与党・インド人民党(BJP)の母体であるヒンドゥ右派集団 RSS(民族奉仕団)の代表団が、NETFLIX や Amazon がつくるドラマが“反インド”および“反ヒンドゥ”だとして、2社に対して、「非公式な」抗議と申し入れをしたという報道があった。

 主要経済紙『Economic Times』(2019年10月8日付)によると、内部からの情報として、過去4カ月で6回も、そういう会合がもたれたという。
 RSS は合わせて、カシミールに対するインドのスタンスに批判的であったり、ヒンドゥ教のシンボルやインド国軍を誹謗するような内容も、規制対象にしたいという意向を示したとある。

 槍玉の筆頭に挙げられている NETFLIX は、同紙の取材にノーコメントで応じた。
 
 ちなみに RSS が問題視しているドラマのいくつかは、日本版でも見ることができる。
 NETFLIX では『聖なるゲーム』(2018~)『GHOUL/グール』(2018)『レイラ』(2019)、Amazon Prime Video では『ファミリー・マン』(2019)。

 『ファミリー・マン』(2019)は、NIA(National Investigation Agency; 国家捜査局)エージェントが主役。インドの捜査官ドラマとしては比較的めずらしいと思って、エピソード1だけ見てみた。そこで挫折した。
 主演のマノージー・バージペーイーは、優れた俳優で、出演作は昔からチェックしている。
 しかし、テロリズム被疑者の引き渡しを待つ職務中に、娘の非行で学校長に呼びだされて「中座」するなど、家族がらみのドタバタには、いくらタイトルがそうでも興ざめしてしまう。

 NETFLIX 3作のほうは、いずれもディストピアを描くサスペンスだ。
 先駆けの『聖なるゲーム』は、2006年に発表され高評価を得た、インド系米国人ヴィクラム・チャンドラによる同名小説が原作である。

 しかし3作とも、短くとっても2014年から現在にいたる、ヒンドゥ至上主義政治の脅威を理解していないと、わかりにくいことが多いだろう。
 キャラクター名から宗教的出自が認識できなければ、ドラマの設定や構図からして、つかみにくいはずだ。
 たとえば、『GHOUL/グール』の主人公・国軍諜報部のニーダと、極秘の尋問施設に収容されている“テロリスト”は全員ムスリムであるとか。

 だが、そういうことを言う以前に、ここに挙げた4作すべて、そもそもドラマとしてあまりおもしろくない。
 こんな、まだるっこしいものに何時間も費やすぐらいなら、アナンド・パトワルダン監督の『理性』を何回も見たほうが、よっぽどわかりやすいし、新たな気づきや発見もたくさんあるし、ためになると思ってしまう(注)。

注 山形国際ドキュメンタリー映画祭が偶数年に東京で開催する、「ドキュメンタリー・ドリーム・ショー」というイベントがある。2020年のそれに『理性』も上映されないかを先日、事務局に聞いてみたが、いま現在は未定だという。

 とはいえ話を戻すと、上記の報道をおびただしいメディアが後追いした直後、定例のムンバイ映画祭(Jio MAMI Mumbai Film Festival with Star)が開催された。
 
 その一環に「芸術における表現の自由のいま」をテーマにした討論があり、当該ドラマ制作部門の責任者も出席した。そこで当然、報道の真偽が問われた。
 NETFLIX オリジナルドラマ担当ディレクター、シュリシュティ・アルヤは、「フェイクニュース」だと全面的に否定。
 Amazon のインド関連ドラマ担当トップ、アパルナ・プロヒットは、直接的な回答をしなかったらしい( 『HuffPost India』2019年10月21日付ほか多数)。

 しかしながら、NETFLIX や Amazon の回答がどうあれ、ウェブドラマ制作へ影響を及ぼそうという RSS/BJP の動きは事実である可能性が高い。
 それを確信させられる出来事が、つい2週間前にもあった。正確には、ムンバイ映画祭討論の前日。このときの「標的」はボリウッドだ。

※訂正※
『聖なるゲーム』原作小説の刊行年を訂正しました。
(誤)2016年 → (正)2006年

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