前回の記事に例示した、『カーマ・スートラ 愛の教科書』ほかインドを舞台にした欧米映画は、すべて「オリエンタリズム映画」である。
この「オリエンタリズム」とは、一般にいう東洋学とか東洋趣味のことではない。パレスチナ系米国人研究者、エドワード・W・サイード(Edward Wadie Said; 1935-2003)が1978年に発表した論考『Orientalism』の意味合いで使っている。
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最近読んでいる仕事関係の資料をきっかけに、ミーラー・ナーイル監督『カーマ・スートラ 愛の教科書』(Kama Sutra: A Tale of Love、英=印、1996)について少し調べなおした。見たことさえ、なかったことにしたいほどの愚作であるが。
そういう評価は変わらないのだが、いまさらながらに「発見」があった。
その部分を書く前に順序立てで話すと、1997年7月22日にロードショー公 . . . 本文を読む
バングラデシュは、ドキュメンタリー映画においても多士済々で、紹介したい監督も作品も多い。
そのひとりが、ヤスミン・コビル(Yasmine Kabir)監督である。
日本では、2001年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で『移民者の心』〈My Migrant Soul、2000〉、2014年の横浜トリエンナーレで『葬儀』〈The Last Rites、2008〉が上映されているぐらいだが、19 . . . 本文を読む
先ごろ紹介した『Rickshaw Girl』〈リキシャ・ガール、2021〉だが、原作をきちんと読んでいなかったので、この間に精読した。
その感想や、映画のプレミア反響を考えあわせるに、映画のほうは、はるかにインパクトがあるドラマに翻案されているようだ。
これはただし、原作『リキシャ★ガール』が悪いという意味ではない。いや、原書ハードカバーが出版された2007年を考えると、バングラデシュなら . . . 本文を読む
日本でも映画祭などで上映されてきた『熱風』〈Garm Hava、1974〉という劇映画がある。タージマハル廟で知られる、北インド・アグラを舞台に、印パ分離独立が迫るなか、インドにとどまるかパキスタンへ向かうか逡巡するムスリム家族を描いたクラシックだ。
インド映画ファン歴が長い観客には、『熱風』といえばM・S・サティユー(M. S. Sathyu)監督と条件反射に出るほど有名である。
その . . . 本文を読む