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さきち・のひとり旅

旅行記、旅のフォト、つれづれなるままのらくがきなどを掲載します。 古今東西どこへでも、さきち・の気ままなぶらり旅。

夏目漱石と高等遊民 内坪井旧居 4

2015年03月24日 | 九州シリーズ



熊本城の裏のほうへ歩くと、少しわかりにくい場所にありますが、夏目漱石が住んだ
旧居が残っており、見学することができます。



去年熊本に来たときには、小泉八雲の旧居に行きました。そのときと同じで、他に
訪れている人はおらず、入ってゆくとどちらから来たのかを尋ねられ、親切にも
ストーブをつけてくれました。



内部も広いし、庭も広くて立派なお屋敷です。「五高の教授」は、なかなか待遇も
よかったそうで。

漱石は四国の松山からこちらへ移ってきました。松山を舞台にした「坊っちゃん」では、
うらなり君が熊本に転勤させられてしまうエピソードがあります。主人公の坊っちゃん
は、熊本は猿と一緒に暮らすような山奥だからうらなり君が気の毒だ、と言いますが、
実際には漱石は希望して松山からこちらへ移ったそうです。熊本に悪いよね(^益^;


                                                       この人形はやめた方がいいようなw

漱石はエリート校で教員をしておりましたが、仕事を辞めて文学に浸った生活が
したいと、この頃言っていたそうです。彼の作品にも出てくる、いわゆる
「高等遊民」です。そりゃあ俺だって憧れるよー。

とある大学の先生が新聞で言っていましたが、「それから」や「こころ」に出てくる、
働かないで親の財産を食いつぶしながら高尚な本を読んだり、文筆生活をしている
人物を、何人かの学生たちは「そりゃあいまもいる、ニートじゃないですか」とレポート
に書くそうです。

NEETとは、Not in Education, Employment or Trainingの略です。つまり「教育も
受けていないし、働いてもいなくて、そのための訓練もしない奴」という意味です。
勉強もしないで働く気もない連中と、高等遊民を一緒にするのは大きな間違いでしょう。

英語では'Literate'とか'Intellectual'など、「教養人」とか「知識人」といった言葉が
あり、それが漱石の言う「高等遊民」にあたります。場合によっては働かないで、学問を
積んでいる人たちです。

ふざけるな、という批判を浴びそうですが、この「働く必要がない」というのが大事
なのです。社会組織に組み込まれていたり、経済的必要に迫られて生きている人たち
は、多かれ少なかれ目が曇らされます。目先の景気がよくなればいいと国の借金を
積み重ねたり、目先の派閥争い、意地、効率重視などに振り回されるのは、つまる
ところ自分(自分の所属する組織、はては国、しまいにゃ人類)の利益に振り回されて
いるのです。

そういった単細胞的・近視眼的視野にとらわれず、広く深い視野を持つには、うんざり
する人間関係に取り込まれず、経済的心配からも自由であることが重要なのです。

道徳(倫理)や哲学、美学(芸術)などを探求するには、是非そうある必要があるの
です。小説を書いたり映画を作ったりするには、「売れること」が必須では良いものが
できないでしょう?喧嘩の当事者には、「いかに勝つか」に振り回されるので、喧嘩を
避ける方法を考える余裕はなかなかできません。

なので、少数でもいいのです。人類には、そういった「高等遊民」がなくてはならない
のです。