IV.むらさき色の部屋(虹の世界) D051.「裁判だ、裁判だ」 多くの召使たちが 「裁判だ、裁判だ」 と騒いだ。 王様はいい気になって 「えへん、えへん、王様の名におき……」 と雄々しく述べた。 ユリカは裁判とは悪いことをした人に罰をあたえることだとすぐに思いついた。 ユリカは何も悪いことをしてもいないのに裁判なんてと思い 「裁判! 裁判なんて、わたしはいやよ」 と嘆いた。 王様は自信満々で 「いかなるものも法の目からはのがれられない」 と述べた。 召使の大きな男の人ふたりがユリカの腕をとって、城の中につれていった。ユリカは足をパタパタ空中でさせていた。とてもユリカの力では、この男の人たちから逃れることなんて無理だとユリカは観念した。 むらさき色の木でできた窓のない広い部屋に入れられた。ここは、法廷なんだわと、ユリカは思った。裁判官の衣装に着替えた王様が壇になったところの一番高いところの一番の真ん中にすわていた。 そして、王様は傲慢(ごうまん)に 「法を守るということは自分を守ることにもなるんだぞ。この兵隊たちもよい人たちには、よいものだが、悪い人にはひどいものだ。もし、きみが正しく、法や兵隊から守られたければ、裁判をうけるべきだ。横のふたり下がってよろしい」 と仰々しく述べた。 ユリカの横の二人の男は 「アイアイサー」 と言い、ユリカの腕をはなし敬礼をすばやくし機械じかけのロボットのような歩き方をして部屋の後ろへ行った。 腕の痛みをおさえながら、ユリカは何がおきているのかわからなくって、今までのことを考えてから 「わたしはいやよ。わたしはただ……」 と述べた。 王様は 「法を守ることは、たとえ子どもであっても、大切なことだ。もう、きみは物事の善悪がわかる年頃だからね」 と述べた。 「あなたがたの法律なんて、知らないわ」 ユリカは叫ぶようにのべた。 王様は気軽に 「あっ、そうか。じゃ、説明してあげよう。あっ、えへん! 法とは、国王が決めたことだ。つまり、国王が法なのだ」 と笑った。 「国王?」 「そう、わらわのことじゃ。わたしの思うように全てがなるのだ、法によってな。誠にすばらしい、法だ」 王様はにこにこしていた。 ユリカは、こんなのめちゃくちゃだわと思って 「そんな、あなたの好きなようにできて、何が法律ですか」 と、もっともなことを言った。 こびへつらうバトラーは 「なんたることを言う。国王に対する侮辱だ。このユリカという女の子に、侮辱罪として、死刑を!」 と叫んだ。 王様は、にんまりと笑ってから 「考えちがいをしてはいけない。わらわは、素晴らしい。どう考えても、いい人だ。そうじゃろう……。そのわらわが法律なのだから、いい法律に決まっているじゃないか」 と言って、首を上下に何度も振っていた。 「そんなの、おかしいですよ。法律はみんなで決めたことじゃないんですか」 ユリカは当然だと思うことを主張した。 「みんなで、わらわが法律と決めた」 王様は笑っていた。
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http://www.suzugamine.ac.jp/kouhou/No32/kenkyu.html
よく裁判官の名前を覚えておられますね。僕は覚えたことないです。選挙のときの○か×をつけるとき困ります。
それにしても、法曹界も政界と同様に奇妙な世界です。
国際裁判所といえば、地雷が禁止するのはいいけど、核兵器をしないのが、今も理解できません。大国の悪い意味でのエゴとしか思えません。
で、彼は逮捕を免れました。
所詮、司法は政治の下位にあるのですね。
いつも逮捕されないN元総理。
議員T(※家人Tさまとは無関係です)
もN元総理に泣きつきにいき、
逮捕されなかったという噂も……。
日本の司法はやはり異常なんでしょうね、
という本も紹介したくなってきました。