IV.むらさき色の部屋(虹の世界) D050.ここは部屋では? ユリカが「ところで、王様」と言うと、王様は「ところで……」と言って、顔を半分、テーブルの下に隠した。 「ところで、王様、どおして、ここはむらさき色しかないのです」 「そ、そぉーか、それはだな……」 王様は顔をだして、紫色のバナナの皮をむきなが 「ここは、つまりだな、むらさきの国なのじゃ」 と説明してから、バナナにかじりついた。 ユリカは「ここは部屋でしょう」と言った。 王様は、ふしぎそうな顔をして 「部屋?」 と顔を右にかたむけていた。 ユリカは 「ここに入るドアにルームって、書いてありましたよ」 と親切に言った。 王様は思い悩んで 「ルームつまり、ここは部屋なのか、バトラー」 と執事に質問した。 バトラーは、深くお辞儀をして、 「わかりません。わたしはこの国から一歩も外に出たことがないのです」 と丁寧に王様に申しあげた。 王様は、豊かなまっ白なひげを右手でさすり、 「わたしもだ。もし、ここが部屋なら」 と紫色のチョコレートを持つ左手がぶるぶると震えていた。 バトラーは王様のようすを見て、心配になって、 「部屋なら、王様、どうなさいましたか」 冷や汗を流した。 王様は、真むらさきの顔をして 「たいへんなことじゃー」 と言い、走り出した。 バトラーは、すました顔で、背筋を伸ばして、長い足を伸ばして、短い足の王様のあとをおいかけながら「どうなされましたか」とお尋ねした。 王様は疲れて立ちどまり腰に手をあて、地面をにらみつけている。 「はぁ、はぁ、はぁ。ここが、ここが部屋なら」 背筋をまっすぐにし、すました顔で、バトラーは、 「ここが部屋ならどうなさいましたか」 静かに丁寧にお尋ねした。 真むらさき色の顔の王様は大きな声で、 「わたしは、わたしは、王様じゃなくって、部屋長さんなんだ」 座り込んで、わんわんと泣いた。 まわりの者たちは、どうしたらいいのか悩んで、何も言葉を発する者はいなかった。 「今の今まで、わたしは王様だと思って生きてきたのに。それが、部屋長さんだったなんて、いったいどうしたら、いいのだ!」 刺繍でふちどられている絹のハンカチをしぼると、床に涙がこぼれた。 ユリカは王様が気の毒になって、 「王様、でも、王様。ここが国でも部屋でも王様にかわりはないでしょう」 でも王様は 「わたしは王様じゃないんだ。部屋長さんなんだよ」 と、わんわんと泣いた。 王様を冷たい目で見てから、バトラーは、 「王様、この女の子は嘘をついているのかもしれませんよ」 冷酷に申し上げた。 それをきくと、王様は泣くのをピタッとやめた。 そして王様は「そうかも、しれないね」と言い、すました顔で椅子にすわった。
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『京の言の葉 しにせの以心伝心 あんなぁよおぅききや』
玉置半兵衛・著/京都新聞出版センター2003年
お麩で有名な京都の老舗の方が書かれた本です。
老舗の知恵がかかれてあります。
現代の企業の代表たちとはかなり違う発想で、
もちろん、私などはこの老舗の方々を信用いたします。
二~三年前でしょうか、老舗ブームというのがありました。
これもスローライフから出てきたものだと思いました。
老舗の商いはスローライフであると思います。
何代も引き継がれてきたもので、
手抜きをすることを伝統は許さないようです。
しかし、京都人というのは……と、
関東人によく言われましたが……。
情緒を重んずるあまりに、その言葉を
そのままに受けることはできないという
やっかいなものです。
例えば、父親が掛け軸にできるような書を
残してくれて、「これだけしか残してやれん……」
そのまま受けては、嘘ですね。
この本を読んで、闇市に手をだなさいことを
何度も書かれております。
しかし、そんな竹の子生活ができるのも、
財産があるからで、
僕のような人間には無理やと思いました。
これが、正直な僕の感想で、すみません。
しかし、老舗とかいわれるお店とか。
社会で責任ある地位の人がそのようである
社会では、私のような人間も住みやすいような気がします。
もくじ
玉置半兵衛・著/京都新聞出版センター2003年
お麩で有名な京都の老舗の方が書かれた本です。
老舗の知恵がかかれてあります。
現代の企業の代表たちとはかなり違う発想で、
もちろん、私などはこの老舗の方々を信用いたします。
二~三年前でしょうか、老舗ブームというのがありました。
これもスローライフから出てきたものだと思いました。
老舗の商いはスローライフであると思います。
何代も引き継がれてきたもので、
手抜きをすることを伝統は許さないようです。
しかし、京都人というのは……と、
関東人によく言われましたが……。
情緒を重んずるあまりに、その言葉を
そのままに受けることはできないという
やっかいなものです。
例えば、父親が掛け軸にできるような書を
残してくれて、「これだけしか残してやれん……」
そのまま受けては、嘘ですね。
この本を読んで、闇市に手をだなさいことを
何度も書かれております。
しかし、そんな竹の子生活ができるのも、
財産があるからで、
僕のような人間には無理やと思いました。
これが、正直な僕の感想で、すみません。
しかし、老舗とかいわれるお店とか。
社会で責任ある地位の人がそのようである
社会では、私のような人間も住みやすいような気がします。
もくじ
コンプレックス
何度泣いたことだろう
コンプレックス
生きをするのも苦しい
手に汗
思い出すのもイヤだ
コンプレックス
いくら克服しようとしても
コンプレックス
それは憎いやつ
広島
駅をおりて市電に乗る
平和公園まではそんなに遠くない
「原爆ドーム」
新聞で読んだことがある
あの日のことを思い出すから壊してくれと
平和公園までは遠くないこわさないわけがある
それを知っている……
鳩がたくさんいる
花壇がある
塔がある
燃えつづける火がある
折り鶴がある
そのことを知っている
「原爆ドーム」。
噴水
子どものころ
噴水は大きな水鉄砲にみえた
七色の虹が見えた
水しぶきを感じて
手で頬をなでた
燃え続ける火
火は人間社会の父であった
火はそれはいろいろものを産んだ
人間の文明をつくりあげた
火は文明の母
火がいつまでも父母でありますように
鳩
鳩は飛行船
音もたてずにおりてきた
小さなころ見た飛行船
鐘
打ち鳴らせ
子どもらよ
心の中に
今日の日を
忘れさすな
打ち鳴らせ
子どもらよ
心臓の鼓動のように
今日のことを忘れぬように
打ち鳴らせ
芝生
芝生に寝転がって今の自分を考える
支部は小さな夢(スウィート・ホーム)
少女が夢をえがいていた……
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--平和のために--
【本人評】これも高校のとき、スケッチブックを手に広島に行ったときのものです。
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