磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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35.祭り寿司

2005年07月12日 | 【作成中】小説・メリー!地蔵盆



四、お地蔵さんがコンコンさん

35.祭り寿司





 それから、何日かたった。ジョンさんは興味深げに酢でしめた鯖を見ている。
「よく見れば、鯖は奇麗ですね。いろいろな色が輝いています」
 鯖やコハダなどを光り物と寿司つうの人たちは言っている。よく見れば虹のように輝いているのである。

 炊き立てのご飯を、流しのところに置かれた木の桶にだして、合わせ酢をふりかけて、ご飯をまぜる。

「ご飯をまぜる時は、切るようにするのよ」
 しゃもじを持って母はデモンストレーションをしている。
「おお、見事です」

「じゃ、ジョンさん、しますか?」
「あっ、はい」

「お上手です。雄二、団扇(うちわ)で仰いで……」
「あっ、はいはい」

「返事は一度でよろしい」
「あっ、はい」

「ご飯をかき混ぜたら、団子になりますので、切るようにするのです」
「お酢はすっぱくて嫌いでしたが、湯気で香ってくるといい匂いですね」

 雄二も湯気の香りをかいだ。食欲を増進させる酢の香りである。酢はそのままだと鼻にツンとくるのに、あつあつのご飯にかけるといい香りがする。

「ジョンさん、ええこと言わはるね」
 ちょっと離れたところから声が聞こえた。

「あっ、曽我のおばあさん」
「静かに。雄二は、団扇であおぎなさい」

「は~い」
「返事は伸ばさない。はいです。わかったか」
「はい」
「それで宜しい。ジョンさんに日本の文化を教えるというから、わしが指導に来たわけや」

「指導ですか」
 ジョンさんは、首からかけたタオルで汗をふく。

「そうですがな。日本の文化は素晴らしいものです」
 自信満々の曽我のおばあさん。

「他にすることあらへんのかいな……」
「雄二、何か言いましたか? 何か言いたいことがあったら、男らしく言いなさい」
 聞こえていないと思っていたのに、聞こえていたので驚いた。
「あっ、はい。何もありません」
 と、あわてて謝った。

「今の返事は短くて、よろしい!」
「はい」
 眉間に皺がよるのがわかる。

「ご飯、冷めたか? うんうん、このくらいでよろしい。しばらく放っておいて自然に冷ますのや。それから、ジョンさんは光り物が嫌いやということで、わしが卵焼きをつくって、それから、茹でたエビをのせます。茹でたエビは、ジョンさん、食べられますか」
「好きです」
「よろしい! それじゃ、むこうで、わしは準備しているからなあー」
 曽我のおばあさんは、出て行った。

「酢の香りで、食欲がわいてきますね」
 ジョンさんはうれしそうな顔をしている。
「おかあちゃんが、曽我のおばあさんに言うたのか?」
「私で~す」
 ジョンさんがすまなそうに話した。
「な~んや。言わんでいいのに」
「あの、楽しみにしていました」
「楽しみにしていてくれたんか。お世辞でもうれしいなー。それから、ちらし寿司も作ろうと思うてます」
 母もうれしそうな顔をしていた。

「ちらし寿司?」
 ジョンさんは質問した。
「ちらし寿司も、お祭りのときに作られるお寿司で、子どもはこっちの方が好きなのよ」
「でも、作るのは面白くないで」

 母がちらし寿司の作り方を説明する。
「まず、高野豆腐を水でもどします。かんぴょうとかも入れる家があります。もどした高野豆腐を細かく刻みます。人参も細かくみじん切りにします。それを昆布だしの中に入れて煮るのです。昆布だしの他には、醤油と酢と砂糖も少しいれます。それから、みりんも……。それに、ちりめんじゃこも入れます。これは、ふだん食べていて、生臭くは感じることはありませんけど、お寿司にしたら、臭いますので、お湯で一回くぐらせてあります。それを鍋で煮て、水気がなくなったら、寿司飯に混ぜます。ちらし寿司だけのときは、普通のご飯にまぜることもあります」

「ちらし寿司ですか。おいしそうですね。私もちりめんじゃこは好きです。お頭つきです」
「それから、ちらし寿司の場合、金糸卵と紅生姜などを上にのせて、飾りつけるのですわ。そうしたら、見た目にもいいでしょう」

 母はフライパンで、薄焼き卵をつくり、まな板でそれを細かく切る。
「ほう、細いです。糸みたいです」

「これ! つまみ食いしたら、いかんがな」
「ごめん。ほんでも、焼き立てで美味しいで」

「そうかー。ジョンさんも少しどうですか。この卵には砂糖が入れてありますし、小麦粉も少し入れてあります」

「そうですか。それじゃ失礼します」
 小皿にのせられた金糸卵をお箸で器用に食べるジョンさん。

「美味しいです」
 満面の笑顔を見せていた。



閑話休題

私は鯖寿司は好きではありません。
鯖寿司ファンの人がいたらすみません。

寿司つうの方々は光り物の味がわからないというと、
あきれた顔をされもします。

でも、老舗で鯖寿司専門のお店のはうまかったです。

寿司のシャリ(ご飯)にしても、鯖寿司にあわせて
炊いてあるし、味つけも工夫されているそうです。

江戸前寿司とちがって京都の寿司飯は甘くてねえー。
と関東の食通の方がいわれます。

そのふつうの京都の寿司飯よりもさらに甘くしてあるんです。
鯖寿司用のシャリは甘いほうが鯖にあうみたいです。

それに、シャリと鯖とが相性がようなるようにと、
何日か置いておくと説明されていました。

まあ、どこの鯖寿司専門店でもそうおいしいとは限りませんが、
おいしいお店もあります。

他のBlogでも京都の人が鱧寿司は子どものころは
祭り寿司とはいわれていなかったと書かれていますが、
ぼくも聞いたことがありませんでした。

僕らの子どものころには、鱧は安い魚でしたから……。

僕の高校の時の寿司屋のアルバイトで鱧寿司は80円で、
鯖寿司は120円くらいだったような気がします。
スーパーの寿司屋さんなので安いし、
鱧寿司の方が小さかったのですが。

やはり光り物は粋な人たちが好むようでしたし、
祭り寿司に鯖寿司というのもわかるような気がします。
よく見れば派手ですよね。鯖寿司も……。


鯖寿司について、八代目日記に書かれてあります。
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2 コメント

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はじめまして。 (chiho)
2005-07-12 22:55:57
ぶどう館からやって参りましたΦ(._.。)

世の中、文才があるかたはいっぱぃいらっしゃるのですね・・・*(・д・〟)
返信する
もしかして…… (鱧男)
2005-07-13 07:53:22
若い人ですか……。



もしそうでしたら、若い人には読んでもらえないと

思ったので、うれしいです。



文才ですか……。

たぶんないし、あって欲しくありません。



そう思ったのは高校二年のときです。

杉森久英の『天才と狂人の間』という作品を

読んだときです。



あの室生犀星が貧乏作家で登場します。

日本語が下手と評されて売れない作家として

描かれています。



天才や狂人にはなりたくないと若いころに思いました。

人間がいい。



ジョン・レノンは人間だと、

内田裕也がレコードの帯に書いていたのを見て、

ぼくの神様にジョン・レノンはなりました。

これも高校の時でした。



でも、室生犀星もジョン・レノンも当時の

才能ある人より残ってますね。

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