『語りつぐ戦争体験 続4 満州第731部隊』
日本児童文学者協会、日本子どもを守る会・編/草土文化1983年
表紙の裏に書かれてあります。下「」引用。
「日本軍の大半も平時なら善良な市民である。それが軍団主義を注入され、軍隊に編入され、名分のない侵略戦に狩りたてられ、死の恐怖の中で、人間としての理性を失ってしまった。この不幸、このあやまちをくりかえさぬために、事実は事実として語りつがねばならない。」
■目 次■
〈いまこそ語る〉
満州第七三一部隊 聞き書き 池田久子 8
I わたしと七三一部隊－－胡桃沢正邦氏の場合
II 細菌をつくる－－小林寿雄氏の場合
III わたしはみてきた－－越定男氏の場合
〈空襲〉
中学生と明石空襲 柏木正三 66
横浜大空襲 池田憲正 78
無線村日記 小田原菊夫 91
〈戦いやんで〉
サイパンの島の夏 奥山菊子
聞き書き 鳥居志づ子・鈴木芳子 110
飢餓の荒野 深栖吉美 123
ふかしイモのと金歯 国松秀雄
聞き書き 国松俊英 139
山林にひそんで 黒木和男 150
〈子どもと戦争〉
写生画と特高 佐々木哲 160
こっくりさん 池速夫 169
あとがき 戦争は人間をかえる 来栖良夫 176
石井中将の兄……。下「」引用。
「昭和十四（一九三九）年ごろは、まだ本部は未完成でした。荒涼とした大陸のどまん中に、急ピッチで建設がすすんでいました。ひろい面積のところに、満人の苦力（クーリー）をつかって、建設班がうごめいていました。ちょうど木曽馬のような支那馬がいて、スタイルはいいが気のあらい馬で、これが二頭、三頭で、荷車をひっぱってはしりまわっていました。ここの班長は、石井四郎隊長の兄です。－略－」
培養……。下「」引用。
「わたしらのやった発疹チフスは、動物培養でした。なにを使用したかというと、まずピヨピヨでした。ヒヨコの肝臓ですね。ピヨピヨになるまえの、卵よりちょっとかえりかけたときのをつかいました。」
石井のこと……。下「」引用。
「石井四郎中将づきとなり、部隊長の送迎車をはしらせました。
石井中将の宿舎はハルピン駅にちかく、吉林街（きつりんがい）三八号でした。洋館の建物で、入口にはいつも守衛がいました。部隊長つきとなったわたしは、本部内の家族官舎にはいり、本部にある運輸班の出張所へ出勤し、そこからハルピンへかよいました。この出張所は、飛行場に隣接していて、車十二台のはいる車庫と、中央に事務所がありました。」
野心があった石井……。下「」引用。
「年に四回くらい、東条英機首相が密談にやってきました。
新京から第七三一部隊機にのってきました。わたしは飛行場から本部の隊長宿舎へはこびましたが、そのときのようすでは、東条首相も、石井四郎にはとてもとても頭があがらぬようにみえましたね。
東条も最後の手段として、細菌戦にかけていたんだと思います。
石井四郎中将は、よく、
「軍医は中将が最高位だが、おれはかならず大将になる」
といっていましたが、ほんとうにそんないきおいでしたね。」
罪悪感はなかったという……。下「」引用。
「せっかくはこびこんだ実験材料を、なぜ実験をせずにころしたか。半月たって八月十五日には、日本が降伏する。上部では、たまり場のマルタの処分をこうやってすませたんですよ。それは、おそろしい真夏の光景でしたがね。しかし、だれもかれも、罪悪感なんて、もっていない。上官命令は、天皇陛下の命令ですから、絶対と思っていました。－略－」
－－無線村。下「」引用。
「無線村－－大阪市東住吉区喜連町（ひがしすみよしくきれんちょう）一一一○番地にあった無線受信所構内の事務所と六戸の官舎を近所の人たちはそうよんでいた。
正式には「通信院大阪電波監視所」だった。
戦争だったから、郵便も、電報も、電話も、すべて検閲をうける。そのもとじめは通信院（逓信省（ていしんしょう）が移行）通信監督局であった。－略－」
金歯は金になったようだ……。下「」引用。
「金歯一本で、ふかしイモが二十本もらえました。
「わるいな、平野くん。日本にかえったらきっと金歯は買ってかえすからな」
わたしたちはふかしイモをぱくぱくたべました。
そのあとも二本、全部で三本の金歯がふかしイモにかわり、わたしたちの空腹をみたしてくれました。」
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もくじ
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日本児童文学者協会、日本子どもを守る会・編/草土文化1983年
表紙の裏に書かれてあります。下「」引用。
「日本軍の大半も平時なら善良な市民である。それが軍団主義を注入され、軍隊に編入され、名分のない侵略戦に狩りたてられ、死の恐怖の中で、人間としての理性を失ってしまった。この不幸、このあやまちをくりかえさぬために、事実は事実として語りつがねばならない。」
■目 次■
〈いまこそ語る〉
満州第七三一部隊 聞き書き 池田久子 8
I わたしと七三一部隊－－胡桃沢正邦氏の場合
II 細菌をつくる－－小林寿雄氏の場合
III わたしはみてきた－－越定男氏の場合
〈空襲〉
中学生と明石空襲 柏木正三 66
横浜大空襲 池田憲正 78
無線村日記 小田原菊夫 91
〈戦いやんで〉
サイパンの島の夏 奥山菊子
聞き書き 鳥居志づ子・鈴木芳子 110
飢餓の荒野 深栖吉美 123
ふかしイモのと金歯 国松秀雄
聞き書き 国松俊英 139
山林にひそんで 黒木和男 150
〈子どもと戦争〉
写生画と特高 佐々木哲 160
こっくりさん 池速夫 169
あとがき 戦争は人間をかえる 来栖良夫 176
石井中将の兄……。下「」引用。
「昭和十四（一九三九）年ごろは、まだ本部は未完成でした。荒涼とした大陸のどまん中に、急ピッチで建設がすすんでいました。ひろい面積のところに、満人の苦力（クーリー）をつかって、建設班がうごめいていました。ちょうど木曽馬のような支那馬がいて、スタイルはいいが気のあらい馬で、これが二頭、三頭で、荷車をひっぱってはしりまわっていました。ここの班長は、石井四郎隊長の兄です。－略－」
培養……。下「」引用。
「わたしらのやった発疹チフスは、動物培養でした。なにを使用したかというと、まずピヨピヨでした。ヒヨコの肝臓ですね。ピヨピヨになるまえの、卵よりちょっとかえりかけたときのをつかいました。」
石井のこと……。下「」引用。
「石井四郎中将づきとなり、部隊長の送迎車をはしらせました。
石井中将の宿舎はハルピン駅にちかく、吉林街（きつりんがい）三八号でした。洋館の建物で、入口にはいつも守衛がいました。部隊長つきとなったわたしは、本部内の家族官舎にはいり、本部にある運輸班の出張所へ出勤し、そこからハルピンへかよいました。この出張所は、飛行場に隣接していて、車十二台のはいる車庫と、中央に事務所がありました。」
野心があった石井……。下「」引用。
「年に四回くらい、東条英機首相が密談にやってきました。
新京から第七三一部隊機にのってきました。わたしは飛行場から本部の隊長宿舎へはこびましたが、そのときのようすでは、東条首相も、石井四郎にはとてもとても頭があがらぬようにみえましたね。
東条も最後の手段として、細菌戦にかけていたんだと思います。
石井四郎中将は、よく、
「軍医は中将が最高位だが、おれはかならず大将になる」
といっていましたが、ほんとうにそんないきおいでしたね。」
罪悪感はなかったという……。下「」引用。
「せっかくはこびこんだ実験材料を、なぜ実験をせずにころしたか。半月たって八月十五日には、日本が降伏する。上部では、たまり場のマルタの処分をこうやってすませたんですよ。それは、おそろしい真夏の光景でしたがね。しかし、だれもかれも、罪悪感なんて、もっていない。上官命令は、天皇陛下の命令ですから、絶対と思っていました。－略－」
－－無線村。下「」引用。
「無線村－－大阪市東住吉区喜連町（ひがしすみよしくきれんちょう）一一一○番地にあった無線受信所構内の事務所と六戸の官舎を近所の人たちはそうよんでいた。
正式には「通信院大阪電波監視所」だった。
戦争だったから、郵便も、電報も、電話も、すべて検閲をうける。そのもとじめは通信院（逓信省（ていしんしょう）が移行）通信監督局であった。－略－」
金歯は金になったようだ……。下「」引用。
「金歯一本で、ふかしイモが二十本もらえました。
「わるいな、平野くん。日本にかえったらきっと金歯は買ってかえすからな」
わたしたちはふかしイモをぱくぱくたべました。
そのあとも二本、全部で三本の金歯がふかしイモにかわり、わたしたちの空腹をみたしてくれました。」
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