robihei日記(将棋とか、GOLFとか、徒然に)

将棋ファン暦30余年、10年程前のNスペ「対決」を観て将棋ファン熱が更に高じ、以来ずっと棋界ウォッチャーに

現代将棋史(外伝)「王者の震え:覇権が揺らいだ日」

2006-03-29 20:03:40 | 将棋な私

長々と語ってきた将棋界の現代史。「外伝」という表現もちょっとおかしいといえばおかしいのですが、正史の一部たるタイトル戦の縁辺で語られたトップ棋士のつぶやきを中心に少し記録をしておきます。

今回語る棋戦は2003年10月15日、横浜ランドマークタワーのロイヤルパークホテル横浜で開催された第51期王座戦五番勝負最終第五局の模様。翌日に友人に送ったメールを元に当時の様子を再現してみる。

データとか対局の流れは下記の日経HP将棋王国参照

http://hobby.nikkei.co.jp/shogi/oza/
http://hobby.nikkei.co.jp/shogi/oza/index.cfm?i=20031015se064s2

王座羽生から見て、○●●千○で迎えた最終局。ここで一言添えておくと、第四局の羽生から見て千○の対局が渡辺の大逸機。千日手を打開すれば渡辺の勝ちだったとのことだが、その順に自信がもてずに千日手指しなおしの結果敗局にしてしまった。

■時間の流れ

16:45会場着、その時点で74手目△6六桂。

18:00 先崎・モテ光で解説会開始
19:20 森内・鈴木大介in、モテ光out
20:10 青野・勝又in、森内・鈴木out
21:00 先崎(出っ放し!)・青野・勝又out、富岡・ゴキゲン近藤・佐藤紳in
21:40 近藤が行方を呼び込み行方in、富岡out
21:55 終局

という時系列の流れ。▲7二銀(99手目)打たれて「多分羽生はこの手見落としでしょうね」(先崎)というコメントを聞いたときには目の前が暗くなった。

最終盤でよたつく羽生の様子を見てファンの一言「どっちがチャンピオンかわからんなあ」・・・・御意、今回に限ってはまったくの同感。

■「羽生おかしい」

異口同音に「今回の羽生さんは様子が変」というコメントが揃っていた。佐藤・森内・行方・・・・言葉の端々に「しっかり勝ってくれ」のエールのニュアンスをこめつつ。

中終盤の難所での89手目▲3三歩(森内・先崎・青野はじめ5人の棋士が、「読んでさしてる手ではない」と酷評)や95手目▲5五歩を見て、ついに先崎が本音の一言。「こういうねえ、、、何か読みを外して、相手の間違いを衝いて勝とうという感じが気に喰わないんだと思いますよ、ハブから見て」という一言。

「優勢の将棋まで粘って勝とうとする」というナベちゃん筋悪説(モテ光)まで出て、相当気色悪がられていた明くん、とにかく未知数の才能に対する懐疑的コメントの数々。

まあ、新時代の天才は絶対最初から理解されないんですが・・・素人の僕が見て、「どっちが羽生の手か判らない」という将棋。

本当に対局者である羽生、周囲の解説陣含めてイラついていたようで、大した玉である、明君。

■歴史に残る「震え」

後日将棋新聞や将棋世界で特集され、いまでも語り草といってもいいと思うが、△7八銀成(92手目)の時に銀が元いた6九地点の横にあった5九飛車を震える指し手で斜めに飛ばして(羽生が)、しかもそのまま直さないというシーンが1つ(行方が最終盤の前に合流した際に、しきりに気にしていました)

そして、日経のHPにも出た124手目△5七角成(の「震え」、7五角を持とうとして2度つかみ損ねて、その上ヨイヨイのお爺さんヨロシク3秒ぐらい震えながらやっと5七に裏返した角を着手。つかみ損ね続ける手付きを見て、最初は「盤上にハエでもいて追い払ってるのか?」と個人的に思ったぐらい。

控え室でもドヨメキがあったようだが、解説席上の行方・近藤・シンヤ君の「うっわー」という驚きの声、モテ光がNHKとかでよく見せる最終盤の貧乏ゆすり(これはこれですごいですよ)のマグニチュードを+2(マグニチュードは+1で30倍です、ハイ)して手に移したぐらいの震え。最終的に一度も(羽生が勝ったと思うときにでる特有の手付き)「ぐりぐり」は出ず。

「その子に羽生君はやられるんだ」

という中原十六世の何気ない一言、それを書き残して今や渡辺応援団長を務める河口老師(本局観戦記担当!)の視線・・・・敵は盤上以外のもののほうが遥かに大きかった、今回に限っては。

ともあれ、防衛。合計70段以上の(+盤面操作は片上三段!のちに四段に昇段した東大法学部卒業のプロ棋士)解説を只で堪能できたのは一生の思い出。

■総括、そしてこれから

とまあ、こんな感じ。羽生も出てきたときはこの渡辺君のように不可思議な印象を周囲に与えて大層先達たちを苛立たせた。歴史は繰り返す、またこれからもきっと。

羽生善治、現在王位王座王将の三冠、36歳。タイトル通算63期はあと一期で十六世名人中原誠に並ぶ、その上にいるのは通算80期の大山十五世のみ。ただし大山時代(最初はタイトル数3、後に5)と羽生時代(7大タイトル時代)では数の重みも違うのだが・・・

そして渡邉明、21歳。来月頭に22歳。現在二期目の竜王位、タイトル戦出場3回、うち獲得2期、敗退は上記の羽生との王座戦のみ。

とりあえず一番早くタイトル戦が羽生渡邉で組まれる可能性があるのが新年度で王位・王座・竜王の3タイトル。竜王なら羽生が下座で挑戦。これも見てみたい。

続けようと思うといくらでも続くので、この辺で。最後に棋譜を掲載します。機会があれば並べて見ていただけると、上記のコメントの臨場感が、、、増さないだろうなあ(笑)

開始日時:2003/10/15(水) 00:00:00
棋戦:王座戦第5局
戦型:矢倉
場所:横浜市西区/横浜ロイヤルパークホテル
先手:渡辺 明 五段
後手:羽生 善治 王座

▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀
▲5六歩 △5四歩 ▲4八銀 △4二銀 ▲5八金右 △3二金
▲7八金 △4一玉 ▲6九玉 △5二金 ▲7七銀 △3三銀
▲7九角 △3一角 ▲3六歩 △4四歩 ▲6七金右 △7四歩
▲3七銀 △6四角 ▲6八角 △4三金右 ▲7九玉 △3一玉
▲8八玉 △2二玉 ▲4六銀 △5三銀 ▲3七桂 △7三角
▲1六歩 △1四歩 ▲2六歩 △2四銀 ▲3八飛 △9四歩
▲1八香 △9五歩 ▲6五歩 △8五歩 ▲2五桂 △4二銀
▲3五歩 △同 銀 ▲同 銀 △同 歩 ▲1五歩 △同 歩
▲6四歩 △同 歩 ▲3五角 △3四歩 ▲6八角 △6五歩
▲1三歩 △1四銀 ▲1二銀 △同 香 ▲同歩成 △同 玉
▲1七香打 △2二玉 ▲1五香 △2五銀 ▲同 歩 △8六歩
▲同 歩 △6六桂 ▲同 銀 △同 歩 ▲同 金 △8五歩
▲1二香成 △3一玉 ▲6三銀 △8六歩 ▲7九桂 △2七銀
▲5八飛 △6九銀 ▲8三歩 △9二飛 ▲3三歩 △同金寄
▲5九飛 △7八銀成 ▲同 玉 △1八銀成 ▲5五歩 △8四角
▲7五歩 △6四金 ▲7二銀打 △1一歩 ▲同成香 △6五香
▲同 金 △同 金 ▲8一銀不成 △9四飛 ▲5八飛 △1七成銀
▲1九香 △8七歩成 ▲同 玉 △6七歩 ▲1七香 △6八歩成
▲同 飛 △6七歩 ▲1二香成 △4三銀 ▲1八飛 △7五角
▲8五銀 △8六歩 ▲7八玉 △5七角成 ▲9四銀 △6九角
▲同 玉 △6八金
まで128手で後手の勝ち