これまで、伊坂幸太郎の小説を読んでいて眠気を感じることなどなかった。が、今作『SOSの猿』に於いては睡魔が襲ってくること甚だしく、どうにも遣る瀬無い思いをした。だが、決して、つまらないわけではない。
伊坂幸太郎の凄いところは、突拍子のないディティールを読み手にすんなり受け入れさせるところだと、自分は「喋るカカシ」以来、そう思っている。それは偏に、伊坂幸太郎の構築する世界に惹き込まれ呑み込まれるが故だろう。今作も「エクソシスト」「孫悟空」など現実的には受け入れがたい要素が核になっているにもかかわらず、「こういう世界もアリですな」とすんなり入っていける。そしてそんな突拍子のない様々な事柄が、終盤に向かって一本の筋にまとまっていくスタイルは、流石伊坂! と感嘆せずにはおれない。
と、こうして書いてみると、いつもの軽快軽妙、緻密にして大胆な発想の伊坂作品、に思えるが、そうではないのだ。
『あるキング』ほどではないにしろ、どこか作品全体から暗澹とした雰囲気が漂ってくる。これが作者の最近の傾向なのか、それともこれが作者の目指す文学なのか、それならそれで愛読者としては我慢するしかないのか?
確かに、伊坂幸太郎ほどの人気作家になると、否が応でも周りからハードルを上げ続けられるだろう、さらに今までと同じような体裁の小説を書いたら書いたで、「いつもと同じぢゃん」などと言われたりもするだろう。そして新しいものに取り組めば取り組んだで、「前のがよかったよな」などと言われるのだろう。それはこういった稼業の宿命なのでしょうがないと思うのだが……。
言っておくが、決して、つまらないわけではない。だが、しかし、いつもの、いや、以前の、溢れ出す様な魅力は減っていっている。
再読すれば、もしかすると気付けなかった魅力が発見できるかも知れないが、すぐに読み返す気にはどうもなれない。以前の伊坂作品なら、読み終わった後すぐにでももう一回読みたくなったのに……要するに、そういうことだ。
伊坂幸太郎の凄いところは、突拍子のないディティールを読み手にすんなり受け入れさせるところだと、自分は「喋るカカシ」以来、そう思っている。それは偏に、伊坂幸太郎の構築する世界に惹き込まれ呑み込まれるが故だろう。今作も「エクソシスト」「孫悟空」など現実的には受け入れがたい要素が核になっているにもかかわらず、「こういう世界もアリですな」とすんなり入っていける。そしてそんな突拍子のない様々な事柄が、終盤に向かって一本の筋にまとまっていくスタイルは、流石伊坂! と感嘆せずにはおれない。
と、こうして書いてみると、いつもの軽快軽妙、緻密にして大胆な発想の伊坂作品、に思えるが、そうではないのだ。
『あるキング』ほどではないにしろ、どこか作品全体から暗澹とした雰囲気が漂ってくる。これが作者の最近の傾向なのか、それともこれが作者の目指す文学なのか、それならそれで愛読者としては我慢するしかないのか?
確かに、伊坂幸太郎ほどの人気作家になると、否が応でも周りからハードルを上げ続けられるだろう、さらに今までと同じような体裁の小説を書いたら書いたで、「いつもと同じぢゃん」などと言われたりもするだろう。そして新しいものに取り組めば取り組んだで、「前のがよかったよな」などと言われるのだろう。それはこういった稼業の宿命なのでしょうがないと思うのだが……。
言っておくが、決して、つまらないわけではない。だが、しかし、いつもの、いや、以前の、溢れ出す様な魅力は減っていっている。
再読すれば、もしかすると気付けなかった魅力が発見できるかも知れないが、すぐに読み返す気にはどうもなれない。以前の伊坂作品なら、読み終わった後すぐにでももう一回読みたくなったのに……要するに、そういうことだ。