ー第3埠頭ー
「ブツは確かな物なんだろうな?」
「ああ。」
俺は、トランクをあけ、中から金色の輝きを放つ、その缶を取り出して見せた。
「本物100%の『マンゴーピューレ』だ。」
男は片手を出し、指を3本立てた。
「おいおい。」
俺としては到底、納得できる数では無い。
「よく見ろ。マンゴーって、他でも無い。アルフォンゾだぞ。」
「...デバ・ガット産か?」
「無論だ。通称『マンゴーの王様』さ。」
「東南アジアあたりのペリカンマンゴーやアップルマンゴーとはモノが違うね。」
「...。」
ー汽笛&ポンポン船の音ー
男はマルボロに火を付け、何事か思い出しているような素振を見せたが、
やがて喋り始めた。
「ペレス...ペレス・プラード。」
「何だと?」
俺は驚愕した。(こ、こいつ、ペレスを知っているのか?)
「ヤツも『マンボの王様』と呼ばれていたさ。けど、実は兄貴の方と弟の方がいて、双方『マンボ王』を自称していた。」
「...。」
「それに、ホセ・クルベーロのヤツがしゃしゃり出て、
『マンボの王様』なんて曲を作ったから、マンボ界はすっかり混乱しちまった。」
それは確かにそうだ。「王様乱立」でマンボ・ブームは終焉を向かえた。
ー音楽:マンボNo5ー
「何が言いたいんだ?」
「俺にマンゴーの真偽を見極める知識はねえ。が、胡散臭いヤツの見極め方なら知っているつもりだ。」
「...。」
「おまえさんの言う『マンゴーの王様』って言う言葉には...説得力が無いって事だよ。じゃあな。」
時間にして、3分。あっと言う間の出来事だった。
男の残していった、マルボロ・メンソールの吸殻から昇る紫の煙だけが、
それが「白昼夢では無い事」を物語っていた。
しかし、冷静になって、ちょっと考えてみればわかる。
「ペレス・プラード」と本件とは何の関係も無いよ。
あれ以来、俺は男でライト・メンソール...
それもマルボロを吸うやつは信用できなくなった。
<李参堂著:『マンゴーわらしべ長者』より。>
参考→
マンゴー
参考→
マンボの王様