信玄公、最期の出陣その3

2023-05-08 19:20:01 | 紹介
大型連休となった今年のゴールデンウィークは、各地の観光地は大混雑だったようですが、
新型コロナウイルス感染症規制緩和の雰囲気も手伝い、
久々にお出かけの方も多かったのではないでしょうか。
信玄ミュージアムも多くの方に足をお運びいただき、連日大賑わいでした。
大河ドラマも信玄公の見せ場とあって、その影響もプラスに働いたのでしょうか。
ちなみ、このブログ閲覧者数もグーンと伸びて単日の閲覧数は過去最高を記録しました。
今まで継続的にご覧いただいている方も、たまたま大河関係で閲覧いただいた方も
ご訪問いただき、ありがとうございました。

企画展で非公開の武田信玄公像をお借りしています、甲斐善光寺様周辺も賑わったようです。
相互割引サービスもしていますので、ご利用になられた方も多かったのでは
ないかと思います。
そんな甲斐善光寺お近くの「かいてらす」駐車場も夕方には静かに。

地場産業品を扱った「かいてらす」は、甲斐善光寺・富士山が一度に写真に収まる穴場。
ここも日中は買い物の方や善光寺参拝で混み合っていましたが、夕方にはニャンだけ・・・。
視線を感じたので、ご挨拶にニャーン、と声をかけるとすぐに近づいてきて、
足元をぐるぐるスリスリ。
そして、無防備に腹を見せてナデナデしてよと甘えてみたり。
信玄ミュージアムの母ニャンたちより人馴れしていてノラノラオーラ0


話を戻しまして、5月7日の放送では、信玄公の生涯でも会心の勝利であり、
家康にとって生涯最大の敗戦となった三方ヶ原の戦いが描かれました。

武田軍の動きはシンプルに浜松城を無視して西へ向かい、その先の三河国、
そして織田領の尾張国を狙う構えを見せる、というものでしたが、
松本潤さん演じる家康は、阿部寛さん演じる信玄公が仕掛けた罠にはまり、
窮地に陥ったのでした。
この時、信玄公が仕掛けた心理戦は、まさに「どうする家康」と決断を迫ったものでした。
いくつか理由は挙がりますが、
①浜松以東は武田の手に落ち、遠江出身家臣らの信頼と領地を失うわけにはいかない。
②徳川軍主力は三河出身者で、その家族や領地が危機に陥いる。
③浜名湖周辺の拠点を押さえれば浜松城は孤立して無力化される。
④三方ヶ原周辺の地形を知った上で、徳川軍にも勝機があるのではと思わせる。
⑤信長の援軍3,000を得て何もせずに見過ごし、尾張に入られると信長に合わせる顔がなく、面目を失う。
など、心理的な罠を仕掛けて誘い出した一戦だったと近年評価されています。
つまり、単純な進軍に見えて、実は選択肢は出陣しかない状況を作り出した、
と言う恐ろしい戦略でした。

そして、江戸期の記録ではありますが、武田軍は三方ヶ原台地に上ると、
追撃してくる徳川軍中央を突破するために魚鱗の陣を構えて待ち受け、
徳川軍は鶴翼の陣という迎撃用の陣形を敷いたと言われています。
数の上でも武田軍の方が倍近い兵力だったと言われていますので、
記述内容が実際に正しかったとすれば、武田軍は最初から家康が出陣してくることを
予想した上で、本陣を急襲しやすい陣形で待ち構えていたと言えます。
結果的に受け身になった徳川軍は短時間で敗走を余儀なくされ、
家康は援軍の将、平手氏をはじめ、多くの家臣を失いながら浜松城へ退却しました。
よく浜松城手前で急に進路を変えた、と言われますが、早いから浜松城は相手にせず、
家康を野戦に誘い出す、または籠城されても自落に追い込まれるよう最初から
周到に仕組まれた信玄公の深慮遠望の策だったと思われます。
まさに勝者は戦う前に勝ちを得た上で戦う、
という、孫子の兵法を見事に体現した一戦だったのではないでしょうか。
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信玄公、最期の出陣その2

2023-05-02 13:40:06 | 紹介
信玄ミュージアムは休館日ですが、すでに大型連休に入っていらっしゃる方も多いようで、
武田神社周辺も混雑しています。
明日からゴールデンウィーク本番で、混雑が予想されますが、お気をつけてお越しください。

連休終わりの大河ドラマでは、武田VS徳川の全面対決が描かれていきます。
元亀3年(1572)10月に甲府を発した信玄公は、駿河から遠江に入り、
浜松城を目指して進軍します。
同時に信濃からは、重臣山県昌景率いる別働隊が国境を越え、奥三河と呼ばれた
信濃国境の山岳地域の国衆を従えつつ侵攻したようです。
※信玄公は、山県昌景らと信濃から侵攻したとする説が以前からありますが、最新説
では、本隊は東海道方面を進んだ、というものが有力視されつつあります。

信玄公率いる本軍と別働隊は、浜松城攻略の最重要拠点であった二俣城で合流し、
家康が籠城する浜松城へ向けて侵攻するかと思われましたが、途中で進撃ルートを
変え、浜松城北方にある三方ヶ原へ向かい、そのまま三河方面に進む動きを見せました。
慌てたのは徳川軍。
まさに「どうする家康」という状況の中、様々な理由と状況で、籠城から追撃へと作戦を変更し、
いよいよ両軍激突へと向かっていったのです。
どんな映像になっているのか興味津々ですが、
鎧の上に法衣をまとい、諏訪法性兜をつけた阿部寛さん演じる信玄公は威風堂々。
甲府駅前で皆様を迎えている銅像ともひと味違った威厳があり、素敵ですね。


そんな信玄公だけではなく、勝頼公も前回の放送で登場しました。
まるで古代ローマを想像させるような衣装と演出で、ネット上も少々ザワザワしたとか
しないとか。
ともあれ、実際の躑躅が崎の館はそんな修行の場とは無縁の雅な空間だったようです。

開催中の信玄公没後450企画展「戦国大名武田信玄の遺産」で展示中の
「信玄公屋形之図」から信玄公時代の館を現在残る建物に置き換えて例えると、
こんな雰囲気になろうかと・・・
多くの方が知っている、あるいは行ったことがある、有名なあのお寺。
銀閣寺としても有名な慈照寺でございます。
もともと室町幕府八代将軍の足利義政が造営した東山殿だった場所をその没後に
臨済宗慈照寺として今日に至ります。
もちろん、規模や建物構造などは異なりますが、全体の空間構成や主要建物の配置
などは躑躅が崎の館の造りにも影響を与えた可能性があります。
そんな中世の建築様式が残る慈照寺の姿を思い浮かべながら、信玄公が暮らした
館跡をこの連休で散策してみてはいかがでしょうか。

先日も告知しました躑躅ヶ崎歴史案内隊の皆さんが現地案内をサポートいたします。
今回は5月6日(土)です。
現地で受付を開設してお待ちしていますので、お気軽にどうぞ。
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信玄公、最期の出陣その1

2023-05-01 10:20:36 | 紹介
ドラマの宣伝のようになってしまいますが、これから大河ドラマも信玄公最期の遠征が
描かれます。
4月23日の放送の終わりには、信玄公が大きな枡に入った碁石金と言われる
金粒をすくい取るシーンが描写されていました。
山に囲まれた甲斐国は良質な金の産地で、金は武田の軍事力を支えたとも言われています。
実際に武田氏館周辺や城下町だった甲府では、金を加工した道具などが
多数出土していますし、
武田氏の一族が治めた国史跡勝沼氏館跡では、館の中心部で金を加工した工房が
発見されています。

日川の河岸段丘上に築かれた館で、信虎公の弟信友が治めていました。
その後は、武田の一門だった今井氏が入っていたようです。
関東方面から笹子峠を越え、甲府盆地に入ってすぐの場所で、領主は、富士北麓地域を
治めた小山田氏のお目付け役も務めていたとも言われています。

館跡は、1973年に発掘調査されました。
この発掘調査は、山梨県内の中世遺跡調査の先駆けになりました。
金を加工した工房跡。
平面表示と言われる方法で、建物の範囲を示しています。
その先には甲府盆地頭東部が一望できます。

その工房から出土した金を加工するために使用された土器の一部(県指定文化財)。
甲州市教育委員会様からお借りして、信玄ミュージアム特別展示室で展示中です。
※5月2日(火)は、信玄ミュージアムは定休日ですので、ご注意ください。

そして、ドラマも信玄公最大の見せ場を迎えます。
一般に「西上作戦」とも言われる軍事作戦で、信玄公が織田・徳川氏を打倒し、
上洛して天下に号令するための遠征と言われてきました。

ところが、最近の研究では遠征の第一目的は、三河・遠江の徳川領制圧だった、
とする見解が主流になりつつあります。
もちろん、徳川を攻めたことで、その同盟者だった信長にも喧嘩を売ったことは
間違いなく、最終的な目標は、信長打倒だったことには違いないようです。

この当時、信玄公と信長とは、東美濃の領有をめぐる衝突はあったものの、
表面上は徳川領侵攻直前まで友好関係をキープしていました。
今川義元が討たれた後、勝頼公に信長の養女が嫁いで同盟関係を築いていましたし、
信玄公は信長を通じて家康との関係改善を試みていました。
そのような関係の中で、信玄公による徳川領侵攻は、信長にとって許しがたい
裏切り行為であったことは、上杉謙信に送った書状でも明らかになっています。
この時の遺恨が強かったのかはわかりませんが、信玄公亡き後、
信長の対武田政策は非常に厳しく、甲州征伐の折には一族・重臣は掃討されました。
10年近く後までずっと許さなかったようなので、根深い恨みだったようです。
裏を返せば、そのくらい信長にとっては窮地に追い込まれた出来事だったのでしょう。

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