企画展の展示資料からみた上杉謙信の信仰

2023-08-07 10:50:06 | 紹介
開催中の企画展テーマ2「竜虎相搏つ 武田信玄と上杉謙信」では、
両将にゆかりのある資料を展示しています。
その中で上杉謙信所用と伝わる「練革黒漆塗日月文軍配団扇」を佐久市教育委員会様から借用して展示中です。

先日の企画展紹介でも少し触れましたが、この資料は、今回山梨県内では初展示となる資料です。
長さは約50cm、団扇幅約15cmの大きさで、意外と小型の軍配団扇となります。
戦場で采配を振るうには、実用的で機能的なサイズなのかもしれませんね。
そして、展示ケース越しで肉眼では見ることは難しいですが、団扇部分には四隅と左右中央に
神々の名前が2神ずつ併記で朱書されています。
四隅には四天王(持国天・多聞天・増長天・廣目天)と、四天王に併記して
新羅大明神・不動明王・五霊八所大明神・山王二十一社が配置されています。
不動明王以外は、京・近江周辺に本社を持つ神々で、
新羅大明神は、近江の園城寺内、山王二十一社も近江坂本の日吉大社内に祀られており、
いずれも比叡山の山麓に祀られる神々です。
五霊八所大明神はよくわかりませんが、おそらく現在の上御霊神社のことではないかと推測されます。

中央右は、大威徳明王・軍荼利明王、左には写真のように勝軍地蔵・大勝金剛が配置されています。
お近くでご覧いただけないのが残念ですが、写真加工で文字が明瞭に出ましたので
部分的でもご確認ください。
いずれも密教界のいくさに関わる神々ですので、
上杉謙信は、その力を借りて味方を鼓舞し、いくさを有利に導こうとしたのかもしれません。

対する信玄公も自らの館内に不動明王や毘沙門天、飯綱権現を祀るなど信心深く、
この前の企画展テーマでも厨子入り弁財天を枕元に置いて戦勝を祈願したほどです。
お互いに意識し合ったライバル同士ですが、神々への信心深さも五分と五分。
本当に良きライバルだったことが資料からもわかります。


コメント
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