3D CG, CAD/CAM/3Dプリンタ な日常でつづる クルスの冒険ブログ

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3Dスキャナは、3D-GAN事務局でごお試しください

2009年09月22日 | □CAD/CAMな日々
1000円で立体スキャナ作ってみた

 
最初に注意です。

3Dスキャナ(立体スキャナ)には、大別して2つの目的があります。

それは…
 
「カタチの特徴を測定する」 ことと 「カタチから正確に寸法を測定する」(検品です)
 
です。
 
今回は、前者についてのお話です。「リバース・エンジニアリング」なんて呼ぶ人も居る。

さて、今回も長いよ(笑)自分でも分かってるんですが、これはもう諦めてます。
 
こういう技術の話は、極力「印象」では語りたくない。
 
元々難しいことをすごく易しく話そうと思うと、嘘が生じてしまうことがある。
 
それが嫌なので、どうしても長くなる。でも、意味はあるよ。きっと役に立つ。
 
だから、お付合いください。

では、上の映像だ。
 
これを見て、「スゲー!」と言ってくれている人はありがたいですし、
 
これを作った人は、確かにスゴい。立派なもんです。
 
でも…まぁ、つまりは、3Dスキャナ(立体スキャナ)ってこんなものなんです。
 
レーザーなのかCCDなのか、とにかく原理はこんなもんだということがよく分かっていただける好例。
 
スリットの光とカメラを使う測定機材のところは分かりやすいけど、

画像を処理して立体のデータにする段になると、途端に馴染みのない話になる、というのもお分りいただけるでしょう。
   
ワタシはその道のお仕事なのであまり言わないようにして来ていますが、
 
こういう事は、CCDカメラが安くなった今、そんなに馬鹿スゴい技術でもないです。 
 
だから、もっと手軽に、もっと安価に…という流れは急加速しても全く不思議じゃありません。
 
…というか、現存する製品はどれもこれも、やりたい事に対してスペックが高すぎるんです…
 
ということもお分りいただけるだろう…
 
でもね・・・
 
こういった3Dスキャナには根源的な問題がありまして。
 
問題、というよりもその性格を、多くの人が良く分かっていないために
 
期待感と実態が大きくかけ離れている、というのが常に問題なのだと思っています。
 
先日「3次元形状を活用する会:3D-GAN」のイベント、
 
「忙しい人のための3次元データ講座」でも触れた、当たり前と言えば当たり前の話ですけれども。
 

問題その1. スキャナである以上、物体として現存しているモノを対象とする
 
つまりこれって、今売っているモノのバッタもん(デッドコピー)を作るか、

手で作った(粘土やパテなんかだね)モノを3D形状データにすることが出来る!
 
と言えますが、このやり方は
 
「わざわざ一回手で物体を作らないといけない…」 とも言えるわけです。
 
もしね、一個の積み木みたいな形状だったら… スキャナ使います?(笑)
 
そんなものは、ノギズで測ってCADやCGでモデリングすればいいですよね。
 
寸法で完全に定義できるカタチには、こんなもの不要です。
 
簡単な形状は、そうですよね。でも難しい形状だと役に立ちそうだ。
 
じゃあ、どこからがスキャナが必要になる難しい形状なんだろうか…?となる訳ですよ。
 
で… これはもう、モデリングする人のスキルによる。
 
モデリングが上手な人ほど、スキャナが必要になる局面は少ないと言っていい。
(だってモデリングが上手なんだから) 
 

問題その2. スキャンしたデータは、そこから物体を作るにも、CGとして成立させるにも、とにかく不完全なデータです。
 
このブログでも過去に

「立体コピー」とか「3Dコピー」とか というタイトルで書きましたが、
 
こういったスキャナは、必ず測定できない部分が生じます。
 
また、測定した情報も、CADやCGとしてその後の用途に使うには十分ではありません。
 
つまり、スキャンした後には、その測定結果に手を加える修正の作業が絶対に必要になります。
 
カンの良い人はもうお分かりだろう。
 
こういった「実物」→「スキャナで測定」→「3Dデータ」という作業では、
 
「スキャナ」そのものよりもむしろ、スキャナの測定結果を3Dデータに修正する作業や、

そのためのソフトウェアツールの方が、より難しくてより重要だったりするんだね。
 
実際、そういったソフトはとても高価だ。

従いまして、3Dスキャナは、

「モデリングが出来ない人を助けない。モデリング出来る人を助けてくれる道具」

であると言って間違いありません。

ここで多くの人が持つ 「これがあれば3Dモデリングが出来なくてもデータがつくれる!」
 
という期待感は、あえなく萎みますね。
 
でも。
 
モデリングが出来る人は、大抵のカタチをスキャナの手助けなしにモデリングすることが出来る…
 
とも言えるわけです。だって、モデリングできるから(笑)これは程度とスキルの問題。
 
となると…モデリングが出来る人でないとスキャナの意味はなく、
 
モデリング出来る人は、スキャナの手を借りなくてもモデリング出来るモノが多い…
 
わけですよ。
 
…なんだか役に立つんだか立たないんだか、良く分からない性格の機械だな(笑)
 
以上のことから導かれる結論としては…
 
3Dスキャナ(立体スキャナ)は、「とても限定的な条件でのみ非常に有効である」

です。
 
この「限定的な条件」を最初に満たして、現在でも盛んに使われている分野は、
 
自動車のエクステリア・デザイン(ボディですね)です。

どうしてか?うん、カンタン。

1.寸法で定義できない曲面が沢山ある
2.モノがデカい(デザインの第一は物体のボリュームですからね)
3.開発にコストをかけられる

だからですね。
 
逆に、航空機は使わないんじゃなかろうかね?
 
クルマの外側は「見たくれ」が重要で、そのためのモノですが
 
航空機は外側のカタチは「見たくれ」ではなく、イコール機能・性能ですから。
 
艦船のハル(船底)はー…どうでしょう?これも使わない気がしますね・・・
 
艦船のハルをモックアップで実験して、モックアップをヤスリで削って性能出して、
 
そのいい感じのカタチをスキャンで取り込む… って、やるのかなぁ?…
 
どなたか詳しい方、教えてください。
 
3Dスキャナを販売している営業マンさんで、
 
「3Dスキャナ、売れないナァー…」と悩んでいる人が居たら
 
以上のような事情により、その使用頻度が少ない、というのが根源的な原因です。
 
だから、機械が売れにくいのです。特に高価な製品は自動車産業以外にはなかなか活躍の機会がない。
  
逆に、使用頻度が低いのだから、相応に安価なものであれば売れるだろうか?
 
…これは、ある程度Yesでしょう。
 
でも、それはきっと20万円以下…かなぁ…? という気がしますね。
 
そうであっても、今の1万倍は売れない…でしょうね…
 
何とも、悩み多い機械なのです。
 
現実的な解としては…
 
「持っている会社さんに測定してもらい、その代金を払う」
 
でしょう。
 
その場合、測定データそのままであれば相応に安価な料金で。
 
ポリゴンまでで良い、となれば、ちょっと上乗せで。
 
全ての面がG2連続しているサーフェスデータで、となれば俄然高価な手間賃で。
 
となるのが、妥当でしょう。
 
3Dスキャナは、測定よりもデータの修正に手間がかかるものですから。
 
「3次元形状を活用する会:3D-GAN」では、事務局に設置してある3Dスキャナを
 
会員企業さんにお使いいただいています。

同じく会員企業である、Roland D.G.さんのご厚意によるものです。
 
ご自身で操作する分には、料金はいただいていません。
 
使い方も、ある程度はお教えいたします、最初は。
 
そんなに難しいものではないです。
 
これも、会員さんの特典です。