クルスの冒険です。
涼しい…天気なんか悪くても、こんな涼しい日が欲しかった…そういう天気の東京です。
さて、前回に引続きキッズデザイン協議会のお仕事ですね。
前回の講演を踏まえて、工業デザインを志す学生さん達が沢山(14~5人は居たか?)が来てワークショップをやりました。なんか、TVクルーが入って撮影とかもしてました。
今回は、要するに
「絵は、カタチの情報を伝えるにはあまりに心許ない手段である」
「3Dのモデリングデータは、カタチを伝えるのに十分な手段である」
「カタチを支配したいのであれば、デザイナーは3Dモデリングをすべきである」
たったこれだけのお話を、実体験を交えて理解してもらおう!という試みです。
やり方は、すごく簡単。
学生さんに絵を描いてもらいます。今回はスプーンでした。まぁ、いわゆる工業デザインだね。でも、それだけではモノにはならないので、隣で弊社の社員が3D CGでモデリングをします。描いたスプーンの絵をもらって、それを元に3D CGでモデリングをする。これは大変、ライブだもん。
でも、これが面白い(笑)
見事にね、絵を描いた人の意図どおりにならないんだ、これが。
「もうちょっと丸っこいです」
「もっとここは厚みがあって、そうそう、でもこっちにかけて薄くなって」
「ここ、もっとシュっとなってて…」
「お団子みたいな…」(お団子知らなかったらどうすんの?)
「…なんか違うなぁー…」
…ところでこのスプーンの全体は何ミリですか?
「あ、手に…こういう風に持ちます」
(…いやだから、何ミリ?って…)
(笑)いやぁもう、楽しい。
で、時間も無い事だしデザイナーさん役の学生さんが満足するカタチになる前に打切らざるを得ないんですけどね、デザイナーは何か不満そうだ(ごめんね)。つまり、意図したカタチにならないんだね。
これで前段は終了。どれくらい絵でカタチを伝えるのが困難かが、分かる。解説を加えようが、ゼスチャーで示そうが、難しい。
次に、毎度登場のABS樹脂積層RP機 Dimensionに、さっきモデリングした3Dデータを送って、実際に作る。まぁRP機ですから、自動です。なーんにも手がかからない。
ウダウダとしゃべっている(50分位にした)間に、カタチが手に取れるモノになって出来上がって来るですよ。そりゃ出来上がるよね、そういう機械だもん。
そうすると…ホラ、ね(笑)
みんな一斉に、出来上がった「モノ」に集中します。かわいそうだけど、「絵」なんかもう見ない。だって、「モノ」が最終的な目的だもん。
ところで…
このモノの最終的なカタチを決定したのは、「絵」を描いたデザイナー役の学生さんでしょうか?「3Dモデリング」をしたウチの社員でしょうか?(笑)
こんな野暮な質問をする必要も無いくらい、最初の3つの事が理解されたはずだと、思います。
もちろん、3Dモデリングをする人と絵を描くデザイナーが素晴らしく意思の疎通が取れていれば、こんな事にはならず思ったとおりのカタチがモノになっていたのかも知れません。逆に、デザイナーさんがアタマで考えているカタチは、それほど固まったものではない…のかも知れません。そんなの分からない。
でも、カタチを支配したい、自分の意思をカタチに込めたい… と願うのがデザイナーじゃないのかね?(笑)だったらそれを誰かの手に委ねるということで、果たして良いのかね?… どうだろうか?
さらに厄介なことに、工業製品ってのは一人じゃ出来ないんだな。必ず誰かの手に委ねなければならない工程がある。委ねる時に、一体何を媒体にして自分の意思を伝えるんだ?それが、絵でいいのか?
今日の話が「正解」で「世界の全て」という訳ではありません。
(産業分野によって、こういう事情は本当に千差万別だしね)
でも、一つの事実を見たことにはなると思うんだ、今日その場に居たみんなが。
3Dモデリングが登場して来た時、デザイナーがモデリングをすべきかどうか?という議論があった。ワタシの嫌いな二元論ですね。
なんだか色々あった議論の果てに落ち着いたのは、
「出来なくてもデザイナーという仕事はあり得る、でも出来た方が便利」
…だから、二元論はやめとこうって言ってるの(笑)
ワタシが絶対に与しないのは、
「3Dモデリングなんかしてると、クリエイティビティが損なわれる」
的な論です。それにだけは、絶対賛成しない。それって
「偏差値が高い子は、ガリ勉で人間性に欠ける」
ってのと一緒(笑)どーでもいい偏見でしかない。
こういう時は逆を考えてみると、いい。
「3Dモデリングが出来ない人は、クリエイティブだ」
「偏差値が低い子は、人間性豊かだ」
…どうだろ?(笑)そんなこたぁない。それは、ない(笑)
所詮、道具だから。
道具は、使えないより使えた方がいい。それだけの話。今日の一番最初にクリエイティブの話はしないよ、道具の話だよ… と言ったとおり。
さぁ、学生諸君よ。3Dモデリングしなさい。
あなた達は、カタチの支配者になりたいのだろう?
自信はなくとも(そんなもん最初からあるわけない)、少なくとも、願望や欲求はあるのだろう?
別に自慢する訳じゃないけど、今日ほど根源的で、示唆に富んで、実践的で、そして哲学的ですらある(笑)体験は無い、と思うよ。
みんな、がんばって。
そして仕事の現場で、近い将来会おうよ。