3D CG, CAD/CAM/3Dプリンタ な日常でつづる クルスの冒険ブログ

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キッズデザイン ワークショップ

2007年08月29日 | □檄文
 
クルスの冒険です。
涼しい…天気なんか悪くても、こんな涼しい日が欲しかった…そういう天気の東京です。

さて、前回に引続きキッズデザイン協議会のお仕事ですね。
前回の講演を踏まえて、工業デザインを志す学生さん達が沢山(14~5人は居たか?)が来てワークショップをやりました。なんか、TVクルーが入って撮影とかもしてました。

今回は、要するに
「絵は、カタチの情報を伝えるにはあまりに心許ない手段である」
「3Dのモデリングデータは、カタチを伝えるのに十分な手段である」
「カタチを支配したいのであれば、デザイナーは3Dモデリングをすべきである」
たったこれだけのお話を、実体験を交えて理解してもらおう!という試みです。

やり方は、すごく簡単。
学生さんに絵を描いてもらいます。今回はスプーンでした。まぁ、いわゆる工業デザインだね。でも、それだけではモノにはならないので、隣で弊社の社員が3D CGでモデリングをします。描いたスプーンの絵をもらって、それを元に3D CGでモデリングをする。これは大変、ライブだもん。
 
でも、これが面白い(笑)
見事にね、絵を描いた人の意図どおりにならないんだ、これが。
「もうちょっと丸っこいです」
「もっとここは厚みがあって、そうそう、でもこっちにかけて薄くなって」
「ここ、もっとシュっとなってて…」
「お団子みたいな…」(お団子知らなかったらどうすんの?)
「…なんか違うなぁー…」

…ところでこのスプーンの全体は何ミリですか?
「あ、手に…こういう風に持ちます」
(…いやだから、何ミリ?って…)

(笑)いやぁもう、楽しい。
で、時間も無い事だしデザイナーさん役の学生さんが満足するカタチになる前に打切らざるを得ないんですけどね、デザイナーは何か不満そうだ(ごめんね)。つまり、意図したカタチにならないんだね。
これで前段は終了。どれくらい絵でカタチを伝えるのが困難かが、分かる。解説を加えようが、ゼスチャーで示そうが、難しい。

次に、毎度登場のABS樹脂積層RP機 Dimensionに、さっきモデリングした3Dデータを送って、実際に作る。まぁRP機ですから、自動です。なーんにも手がかからない。
ウダウダとしゃべっている(50分位にした)間に、カタチが手に取れるモノになって出来上がって来るですよ。そりゃ出来上がるよね、そういう機械だもん。

そうすると…ホラ、ね(笑)

みんな一斉に、出来上がった「モノ」に集中します。かわいそうだけど、「絵」なんかもう見ない。だって、「モノ」が最終的な目的だもん。

ところで…
このモノの最終的なカタチを決定したのは、「絵」を描いたデザイナー役の学生さんでしょうか?「3Dモデリング」をしたウチの社員でしょうか?(笑)
こんな野暮な質問をする必要も無いくらい、最初の3つの事が理解されたはずだと、思います。

もちろん、3Dモデリングをする人と絵を描くデザイナーが素晴らしく意思の疎通が取れていれば、こんな事にはならず思ったとおりのカタチがモノになっていたのかも知れません。逆に、デザイナーさんがアタマで考えているカタチは、それほど固まったものではない…のかも知れません。そんなの分からない。

でも、カタチを支配したい、自分の意思をカタチに込めたい… と願うのがデザイナーじゃないのかね?(笑)だったらそれを誰かの手に委ねるということで、果たして良いのかね?… どうだろうか?
さらに厄介なことに、工業製品ってのは一人じゃ出来ないんだな。必ず誰かの手に委ねなければならない工程がある。委ねる時に、一体何を媒体にして自分の意思を伝えるんだ?それが、絵でいいのか?

今日の話が「正解」で「世界の全て」という訳ではありません。
(産業分野によって、こういう事情は本当に千差万別だしね)
でも、一つの事実を見たことにはなると思うんだ、今日その場に居たみんなが。
 
3Dモデリングが登場して来た時、デザイナーがモデリングをすべきかどうか?という議論があった。ワタシの嫌いな二元論ですね。
なんだか色々あった議論の果てに落ち着いたのは、
「出来なくてもデザイナーという仕事はあり得る、でも出来た方が便利」
…だから、二元論はやめとこうって言ってるの(笑)

ワタシが絶対に与しないのは、
「3Dモデリングなんかしてると、クリエイティビティが損なわれる」
的な論です。それにだけは、絶対賛成しない。それって
「偏差値が高い子は、ガリ勉で人間性に欠ける」
ってのと一緒(笑)どーでもいい偏見でしかない。
こういう時は逆を考えてみると、いい。
「3Dモデリングが出来ない人は、クリエイティブだ」
「偏差値が低い子は、人間性豊かだ」
…どうだろ?(笑)そんなこたぁない。それは、ない(笑)

所詮、道具だから。
道具は、使えないより使えた方がいい。それだけの話。今日の一番最初にクリエイティブの話はしないよ、道具の話だよ… と言ったとおり。
 
さぁ、学生諸君よ。3Dモデリングしなさい。
あなた達は、カタチの支配者になりたいのだろう?
自信はなくとも(そんなもん最初からあるわけない)、少なくとも、願望や欲求はあるのだろう?

別に自慢する訳じゃないけど、今日ほど根源的で、示唆に富んで、実践的で、そして哲学的ですらある(笑)体験は無い、と思うよ。

みんな、がんばって。
そして仕事の現場で、近い将来会おうよ。
 

暑いけど、元気です。

2007年08月09日 | □檄文
 
暑中お見舞い申し上げます、クルスの冒険(おや?名前を付けましたぜ)です。

お盆も近づき、「あー、この仕事はお盆明けだよなぁー…」などと判断を入れつつ予定を組む時期になって来ましたね。皆さまお盆にはどっか行くですか?帰省ですかね?

今日は、東京は神宮外苑にあるTEPIAにて行われています、「キッズデザイン博2007」で、講演して来ました。なんか、経済産業省中小企業庁のお仕事なんですよね(ごめんなさい、今一つ理解ができていないです…)。

講演を聴きに来ていただいたのが、工業デザイン(工業デザイナーか)を志す大学生・専門学校生が大半… という話だったので、毎度お馴染みABS樹脂積層RP機、Dimensionをよっこらしょ、と持ち込みまして

「工業デザインの仕事を志すなら、3Dモデリングもしとくと良いよ…」

という話をして来ました。これだけ(笑)ホント、これを言うためだけに行きました。

いつものごとく…
「工業デザインっていうのは、工業(生産ってことだね)にならないと意味が無い」

「生産するには、ほぼ確実に3Dのデータをモデリングが必要な時勢です」

「絵を描くだけじゃ“カタチ”を完全に決めた事にはなりません」

「絵に情報を付加して、どっかの誰かさんが3Dモデリングしてるからです」

「デザイナーなら、カタチを支配したいでしょ?」

「だったら、3Dモデリングをしましょうよ」

「しかも3Dモデリングをすれば、ホラ!カンタンに出力して手に取れるんだよ」

「道具なんかCGでもCADでもいいから、とにかく3Dモデリングしようよ」

「就職にも有利だ!いや、ホントだって!」

…そういう話の流れですね。ね、何の珍しさも無い。珍しさも無いけど、工業デザインを志す学生さんなどには、全然伝えられていないんだねぇ… という事も実感しましたよ… こういう事は、とにかく情報として理解されて広まるまでにとっても時間がかかるものです。そうなるには、同じことであろうと何だろうと、こっちが言い飽きてしまおうと(これは結構自分との闘いなんですワ)、とにかく言い続けるしかない…ってことなんでしょう。

…じゃ、言い続けましょう(笑)それだけ。

もうね、CGとかCAD…という違いさえも、この段階ではドーでもいい話だからね。
(いやホント、ドーでもいい)とにかくPC使って、3Dのデータで形状を定義しさえすれば、工業のプロセスにぐぐんと近づくんですよね。これほど出力機器が充実している時代も今まで無かった。でもそれは「絵」のままでは、絶対に叶わない。

結局我々の居る業界の広がりは、3Dモデリングをする人の広がりと、ほとんどその運命を一にしてしまいます。これは設計だろうがデザインだろうが同じです。だから、これからも「3Dモデリングをする人」それ自体の数の増加につながり、3Dモデリングがモノをつくるという行為に直結してる、という事を広く知らせ続ける事が出来るのであれば積極的に活動して行くつもりです。

…まだ全然決まってないですけど… 3Dモデリングをする人を養成する教育機関…というお仕事もしようかなー???と企画しています。
「なんだ、CADの講習か…」
と、思うでしょ?(笑)それがね、全然違うの。そんなこと、しない。それはもう世の中に沢山ありますし、ちっともミッションクリティカルじゃないしね(おお外資系的表現だ)。

上手く行ったらホントに楽しい、世界で始めての「3Dモデリング“も”する人養成講座」になるかも知れません。そして何よりミッションクリティカルだ(笑)もうね、すげぇクリティカル(笑)もちろん、クルスの冒険ひとりでは出来ませんから、いくつかの会社さんと協力し合って…となるはずです。それもまた、楽しい。

まだ、ナイショ。先々の事は分からないですから。
でも実現したら、間違いなく楽しくて痛快で、小さくても革命的なことになるでしょう。

あ!本日の講演で細々とお気遣いいただきました
「キッズデザイン協議会」の皆さま
「アサツーディ・ケイ」の皆さま
色々とありがとうございました。感謝申し上げます。

暑い日が続きます、皆さまお身体ご自愛ください。