昭和三丁目の真空管ラジオ カフェ

昭和30年代の真空管ラジオを紹介。
アンティークなラジオを中心とした、自由でお洒落な、なんちゃってワールド♪

東京芝浦電気(TOSHIBA)  かなりやGS 5YC-426

2008-06-13 | 東芝 かなりやシリーズ
かなりやシリーズの中でも俗に言う「レア物」の機種がある。今回ご紹介するかなりやGSは、発売された昭和35年当時の消費者から見ると先進的すぎる?デザインだったのか、ヤフオクに出品されることも稀な、まさにレア物の機種である。 
        
        ▲東芝かなりやシリーズの中でも超レアな、かなりやGS
 写真のように2段重ねキャビネット上段にスピーカー、下段に電源スイッチ付音量調整ツマミ、選局ツマミを左右対称に配置したシンメトリックな意匠は、’5~60年代のアメリカ車のダッシュボードとカーラジオや現代建築を連想する。もしかするとエリミネーター時代の受信機を意識したデザインなのかもしれません。(誰だ~?墓石を連想する・・・って言ってる口の悪い人は!? 笑) 
 真空管ラジオ、とりわけ 東芝かなりやシリーズのコレクションを始めて3年目になるが、この かなりやGSが出品されているのを見たのは3回目。過去2回は自主規制予算の4~5倍以上という高値がつき、やむなく撤退した。
今回もどれだけ高騰するのか心配だったが、何と!予算内で無事に落札できた。オークションでラジオを落札する際は、決して “熱く”ならず、予算を超過したら、次回の出品を待つ余裕が必要だろう。このところ以前に捕り逃がした かなりやを予算内で相次ぎ数台捕獲している。
        

  メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)かなりやGS 5YC-426

  サイズ : 高さ(約15cm)×幅(約27cm)×奥行き(約11.5cm)

  受信周波数 : 中波 530KC~1605KC/短波 3.9MC~12MC

  使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)
           12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 宅急便で届いた かなりやGSは、旧家の蔵にでも保管されていたのだろうか、プラスチック製キャビネットは、50年近くの間に付着した埃と汚れ、黄ばみ、軽い擦り傷があるものの、パーツの欠品も無く、外観はかなり程度の良い部類である。
        
        ▲埃や汚れは付着して汚いが、パーツの欠品はない
 以前ヤフオクで見たかなりやGSはブルーグレー系の塗装だったが、今回出品されているモノは、ライトベージュ系のカラーだ。
下段キャビネット上部の左右には、オレンジと緑色の凸状の部品が配置されているが、何だろう・・・? 今までの かなりやシリーズには無いパーツだ。
        
        ▲バンド切替表示用凸状パーツとバンド切替/選局用同軸二重ツマミ
 周波数表示インジケータをよく見ると、中波/赤、短波/緑で色分けされている。たぶん中波/短波を切替えると、左右のランプが点灯する仕組みになっているようだ。またシンメトリックに配置された左右のツマミのうち、右側のツマミは同軸二重となっており、外側はバンド切替スイッチ、内側が選局ツマミの機能になっている。
        
 この50年近く放置されていた かなりやGSのやつれた姿に「アメリカンドリームを夢見て破れた女」の姿が重なり、高校生から大学1年まで付き合っていた同級生の彼女のことを思い出す。ボクは県外の大学へ、彼女は県庁所在地の短大へ進学し、お互いに連絡も途絶えがちになっていた。(今のように携帯電話もありませんでしたし・・・)
ジーンズとTシャツの似合う彼女が岩国駐留の海兵隊員と恋に落ち、青い目の彼氏とアメリカに渡ったが数年後離婚したことを風の便りに聞いた。
        
浜田省吾のアルバムに、「いつかもうすぐ」というナンバーがある。
原曲「Someday Soon」は、カナダのカントリー・フォークデュオであるイアン&シルビアの1965年に発表され、多くのシンガーがカバーしている。
        

       いつかもうすぐ 作詞 浜田省吾  作曲 Ian Tyson

    ♪あの娘は米軍キャンプのそばにある 小さな店で働いてた
     僕らは約束した この街出ようねと いつか いつかもうすぐ

     あの頃僕はまだ18で 望めば全てが叶うと信じてた
     どうして僕を待ってくれなかったの こうして今 迎えに来たのに

     あの娘は青い目の若い兵隊と 5月に行っちまった California
     今でもこの街で独り呟いてる いつか いつかもうすぐ

 ラジオから流れるこの歌を初めて聴いたとき、当時のボク自身の体験とシンクロし、身震いした。この作品に描かれた、将来を誓ったはずの彼女を米兵に横取りされ、アメリカの圧倒的な強さ・魅力の誘惑に負けてしまう彼女を通して、自分が無力だと分かっていても、それを認めたくない、という少年の心が切ない。また失恋した痛手に凹みながらも、自分たちのちっぽけな世界から飛び出していった彼女の行動力を心のどこかで羨ましく思っている少年の複雑な心情にもググッときてしまう。
        
 あれからずいぶん経ち、時が流れ 彼女の居場所ももう知らない。風の便りも途切れてしまったけれど、あの頃の日々を胸の中に、このラジオを修復することを決意した。(←店長、また自分の思い出回想&妄想モードになってるし・・・)
        
        ▲裏蓋左下にバリコン止用ビス穴が・・・設計の不具合対策だろう(笑)
 裏蓋をよく見ると、左下に丸い穴が開けられ、バリコン止具(ビスとスペーサ)が飛び出している。生産ラインに乗った時点で、裏蓋が閉まらないことが判明し、こんな対策を施したのだろう。
裏蓋を取外すと、清掃された様子はなく、キャビネット底部やシャーシ上の真空管、IFT、バリコンには多くの埃が堆積しているが、こんなラジオの方が、意外と簡単に修理できたりする。
長年放置され、シャーシの一部に錆が浮いた かなりやGSに、つい感情移入してしまう。
        
        ▲真空管は一部NEC製に交換され、ケミコンも暴発寸前の危険な状態