昭和三丁目の真空管ラジオ カフェ

昭和30年代の真空管ラジオを紹介。
アンティークなラジオを中心とした、自由でお洒落な、なんちゃってワールド♪

ゼニス(Zenith) L-518W

2007-10-28 | アメリカ製真空管ラジオ
 ずっと憧れていたアメリカのゼニス社製クロック・ラジオを手に入れた。1920年に商業放送からスタートした「自由の国・アメリカ」では、ラジオ固有のデザインを持ちはじめ、'30年代には合成樹脂を使い、アールデコ・スタイルの魅力的なデザインの製品を世に送り出した。
          
 ゼニス(ZENITH)は、1918年に創業されたシカゴに拠点を置く電器メーカーで、RCA、GE等と共にアメリカを代表する最も有名なラジオメーカーでもあり、’30年代からラジオのキャビネットへ積極的にプラスチックを採用し、多種多様なデザインのラジオを世に送り出していた。’50年代に入るとクロックラジオを開発し、多くの機種を発売しています。
                  
 当時のゼニスの雑誌のクロックラジオの広告には"New Clock Radio with a Host of Helping Hands" "Out here at Zenith we never forget that the big difference in clock radios is in the radio itself!"と、ラジオと時計機能を癒合したことによる新しい生活スタイルの利便性を謳っている。
          
 '57年に発売されたゼニスのクロックラジオ Model L-518W は、正面右にラジオのダイアル、左に時計を配し、その内側中央に4インチ(10.2cm)のパーマネント・ダイナミックスピーカー、左右にボリュームツマミとチューニングダイアルツマミをレイアウトした、シンメトリーなデザインだ。このスタイルは、ZENITH社製クロックラジオの基本形であり、お馴染みのボクシーな立方体デザインを中心に、このL518のような流麗なデザインも含め、数々のバリエーションが発表されています。
        
        ▲ZENITH DELUXEの文字とエンブレムが高級感を醸し出すL-518
        
        ▲DELUXEの文字とエンブレムのない廉価版515(左)と5G03(右)

 L-518Wの時計には3つのノブがあり、時計正面左のノブはラジオのON/OFF及びラジオのアラーム設定スイッチ、右側のノブはアラームON/OFF、正面下はスリープスイッチとなっている。
        
 裏蓋に“FOR BEST RESULTS USE ZENITH QUALITY TUBES”と書かれた背面には、時刻あわせノブとタイマー機能に連動するAC出力コンセントがあり、タイマーと同期して卓上ランプ等をON/OFFする機能を備えているクロックラジオは、主にベッドサイドラジオとして使われていた。ちなみに時計は60Hzの交流モーターで駆動されているため、50Hzの東日本では遅れてしまい実用になりません。
 電源の定格は115V.A.C/60Hz、検波&低周波増幅管に珍しい12AT6が使用されている。出力電圧は12AT6の方が高く取れるが、トランスレスの出力管は改善が進み、高いドライブ電圧を必要としなくなったため、12AV6が主流となった。
        
 業者とおぼしき方が数万円の高値でオークションに出品されている、ピカピカに磨かれた“カッコいい” アメリカ製ヴィンテージラジオをポンっと買うのは、ボクの趣味ではない。これでは面白くないというか、趣味のプロセスとしての美しさがまったくない。ラジオを探し、そして手に入れるまでの「思い入れ」そのものが、ある種の物語になっていなければ意味はないのではないか。それはラジオという物語をめぐる、もうひとつの物語でもある。
出品者のコメントには「ラジオ動作確認済み、ちゃんと聞こえます。 時計は動きません」と書かれており、時計が不動品だったためか、いつもの予算内で落札できた♪

  メーカー:ZENITH RADIO Co. (Chicago) Model L518W

  サイズ : 高さ(約13cm)×幅(約33cm)×奥行き(約15.5cm)

  受信周波数 : 中波 530KC~1650KC

  使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BD6(中間周波数増幅)、12AT6(検波&低周波増幅)、50C5(電力増幅)、35W4(整流)

  電 源 : AC 115V/60Hz

 オークションで落札後、届いた段ボールを開梱しまず外観からチェックを開始した。キャビネットの塗装はオリジナルのままであり、艶もある。大きな傷、エンブレムや装飾部品等の欠損は見られない。小傷はあるものの50年前のラジオとしてはかなりキレイだ。 
        
 アメリカ製ラジオの定番であるループアンテナの巻かれた裏蓋を開けると、Zenithのロゴのついたオリジナル真空管がうっすら埃を被って並ぶ。
交流モータ駆動のタイマーユニットとともに一部分錆びの浮いているシャーシには、タイマーと連動するAC出力コンセント、RADIO/PHONO切替スイッチ、PHONO入力用RCAピンジャックが取付けられ、当時のベット・サイドラジオの機能をうかがい知ることができる。
 時計が動かないのは、モーターの断線ならいいのですが、回転軸が錆びてロックされていると、モーターが発熱して発火の原因になりますので、導通を確認後、配線を切らないと危険です。その作業は、先輩&友人である“音響の匠氏”に依頼し、モーターコイルの断線処置を行っていただいた。
氏曰く、案の定、モーターに導通があり、真っ黒になっていたとのこと! 危ないところだった・・・。
        
 モータコイルを断線処理してもらったL-518Wを持ち帰り、シャーシをキャビネットから取外し、目視点検を開始。真空管はすべてZenithブランドのオリジナル。バリコンの絶縁ブッシュも大丈夫だ。
シャーシ内部もマニアが修復した痕跡はまったく無く、Zenithロゴの入ったオリジナルのペーパーコンデンサが使われており、状態はかなりいい♪
        
 キャビネット内部とシャーシを清掃後、100Vの家庭用コンセントから通電テストを行ってみた。時計正面左のラジオのON/OFFノブをON! 
ヒーターの灯りが点り、しばらくするとスピーカーから静かな空電ノイズが聴こえ始めた。下の周波数から同調ダイヤルをゆっくり回すと、キャビネット正面右側の周波数表示盤も動く。夕方だったため、地元のNHK、民放中継局(出力1kW)以外にも数局の放送が聴こえてくる。 ループ型アンテナコイルのおかげで、感度はかなり良好だ。