真空管ラジオのコレクション&レストアの趣味で、40~50年前のラジオの『デザインを堪能する』という楽しみが、大きなウェートを占める。このブログも自ずと技術的な内容より、ラジオのデザインにまつわるコメントが多くなってしまう。
インターネットオークションで何気にウインド・ショッピング(ディスプレイ・ショッピング?)を楽しんでいて、「おぉ、いい感じのデザインじゃん♪」とビビッとくると、ついつい入札してしまう。
店員ユーをはじめとする友人・知人は、「店長、何台買えば気が済むんですか!」とラジオ病の進行具合を心配してくれるが、自分の意識とは無関係に入札ボタンを押してしまうのだから、病的趣味に手の施しようが無い。
シャープ5X-76は、昭和31年(1956年)頃に製造された円形周波数表示グリルを採用したmT管トランスレス式ラジオである。機能的に差異のないmT管5球スーパーでは、各メーカーがキャビネット、スピーカーグリル、周波数表示パネルの形状、カラーリングといったデザインに工夫を凝らすことで、消費者に訴求している。とりわけ円形周波数表示グリルを持つ機種はコレクターの間では人気が高い。
このシャープ 5X-76もオークションに出品されると多くの入札者から人気を集め、価格が高騰するため、予算的に制限のあるボクはいつも諦めていたのだが、今回はやっと予算内で落札することができた。
メーカー:早川電機工業(SHARP)『シャープラジオ 5X-76』
サイズ : 高さ(約15cm)×幅(約25.5cm)×奥行き(約10.5cm)
受信周波数 : 中波 530KC~1650KC/短波 3.9MC~12MC
使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BD6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、35C5(電力増幅)、35W4(整流)
電気的出力 : 最大1W 電源 : 50~60c/s 100V 消費電力 : 23VA
宅配便で届いた荷物を開梱し、いつものように外観の目視点検から始めた。プラスチック製キャビネットは数十年の間に付着した汚れ、黄ばみ、擦り傷があるものの、パーツの欠品も無く全体的には美品の部類である。
裏蓋を取外すと、年代相応の埃が溜まっているが、修理された形跡は無い。
パイロットランプのゴムブッシュが見事なまでに溶解し、パイロットランプ自体を覆ってしまっており、台座ごと新品に交換しなければ危険である。真空管を取外して、OA機器用エアクリーナーでシャーシ表面の埃を吹き飛ばし、ウエットティッシュを使いキレイに清掃した。
シャーシー内部は部品が詰まって配線されているものの、修理した痕跡も無い。ブロックコンデンサーの状態を目視点検したが、外観は問題なさそうだ。ACプラグにテスターを当て、導通確認と内部抵抗値を測定。SPコイル、OPTの断線もなくOKだ。
ペーパーコンデンサーは、フィルムコンデンサーと交換することにして、事故が起こらないことを願いながら思い切って電源を入れてみた。
真空管は灯るが、なかなか音が聞こえてこない・・・・不安がよぎる。やがて5球スーパー独特の小さなハム音が聞こえてきた。選局ダイヤルを回すと、市内にある民放中継局と10km離れたNHK中継局(共に1kW)、さらに弱いながらも隣接県の民放局まで入感する。
BC(中波)/SW(短波)切替えスライドスイッチをSW(短波)の位置にしたところ、何も聴こえてこない。スライドスイッチの接触不良が考えられるため、エレクトロニクス・クリーナーを吹きかけながら何度かカチカチとスライドを繰り返すと短波特有の空電ノイズが聴こえはじめた。
キャビネットはいつもどおり、希釈したマジックリンを使い、塗装が剥げないよう気をつけながら洗浄後、コンパウンドとプラスチック・クリーナーで磨くと、新品の輝きをとり戻した。
エッジにラウンド処理を施した横幅255mm×高さ150mmの一体形成プラスチック製キャビネットは、mT管トランスレス式ラジオの中では比較的小型の部類であり、キュートなデザインだ☆
正面右側に配置された円形周波数表示グリル(直径100mm)が目を引く。中央に描かれているヨーロッパ家紋調のマークの中に、白抜きで小さく描かれている電波(稲妻?)のシンボルはご愛嬌。
レストア完了後、テストを兼ねて短波の放送を聴いてみた。
5球スーパーは、回路設計上、アンテナを接続しなければ感度が上がらない。シャーシーから延びるアンテナ線を窓枠アンテナに接続してみると、中国、台湾、朝鮮半島の国際放送に混じってハワイアンっぽいリズミカルな音楽が流れてきた。
「♪テレビニュースに映る砂の嵐ぃ~ 愛しい人の姿を探す・・・ ♪」
グアムのKTWR・・・? いや、NHKの海外放送であるワールド・ラジオ日本だ。
NHKは、世界に向けて短波で放送しているラジオ国際放送「NHKワールド・ラジオ日本」を1日65時間、日本語と英語を含む22の言語で世界中に向けて放送を行なっている。
彼女の歌に続き、中東に駐在する商社マンの奥さんからのリクエスト・メールが紹介されていたのだが、その時はさして気にも留めず、聞き流していたのだが・・・。
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