湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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ウェーベルン:パッサカリア

2010年04月19日 | ドイツ・オーストリア
○ストコフスキ指揮フィラデルフィア管弦楽団(SCC:CD-R)1962/3/16live

ウェーベルンの作品番号1、シェーンベルクから内実ともに独立した記念碑的作品でいくぶんロマン性をもちあわせているがゆえ普通のコンサートにかかりやすい演目として、事実上ウェーベルンで最も演奏される曲となっている。既に理知性に重きを置くあまり計算された緻密な構成によるも15分もの(ウェーベルンにしては異例の)長さの中でうまく変化が伝わらず、起伏が細密なレベルに留まったまま終わってしまう難しさもある(ゆえ一般的にもここでも10分余りで早足で演奏されている)。後年のウェーベルンを予告する響きをはらむ印象的なピチカートによる音列表現から、編成は大きいものの簡素なオーケストレーションが最小限の規模のオケによる表現を志向している。にもかかわらず印象的にはマーラー的な厚みをともなう変奏主題が長々しい流れを作っていく曲のように感じるため、とくにストコフスキのように大規模オケを使っている場合ばらけたような、やや生硬な書法と受け取れる。ストコフスキはあきらかにスクリアビン中期のような官能的な音楽としてこれを扱っているが、感情的なフレージングが前面に出てオーケストレーションの創意が沈んでいるのはある程度仕方ない楽曲の本質に係る部分である。フィラデルフィア管の明るく突き抜けた音がはからずも解釈の曇りを取り去り、透徹したウェーベルンらしい響きを出せているのは面白い。意外とクールな聴感なのだ。確かに前時代のふやけた演奏かもしれないが、案外いい案配に収まっていると言えよう。○。

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