goo blog サービス終了のお知らせ 

湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

※旧ブログの一部コラム・記事、全画像は移植していません。こちらのコンテンツとして残します。

☆マーラー:交響曲第9番

2016年09月06日 | マーラー
◎マデルナ指揮BBC交響楽団(BBC,IMG)1971/3/31LIVE・CD

表現の振幅の烈しさ、異様なテンポ設定にルバート多用で感情のほとばしるままに表現するマデルナは、バンスタまで確かに存在した一つの流れ、人間臭いマーラーを体言する指揮者の一人であったことは間違いない。イギリス一の手だれBBC響においては他のオケでは棒にあわせさせることもままならない状態であったのに較べ極めて精緻にマデルナのマーラーが描き出されている。静謐と激情の躁鬱的なコントラスト、見栄を切るような仕種に余りにあざといパウゼの挿入もすべて計算ずくであったのかと思わせるまでに、成功をおさめている。マーラーらしいマーラー、「解釈されるマーラー」を久しぶりに聞いた。一楽章の引きずるような重い出だしから、激情がほとばしるパセージでは必ず突っ走るテンポ(素人指揮にありがちな、盛り上がりどころでアッチェルしまくるクセはここでも決まり事のように繰り返される、但しその律せられかたは決して素人ではない)、ここぞというところでの見栄の切り方に激しく共感する。重々しい静かな場面での一種陶酔感とのギャップが凄い。アバウトさもないし録音もよい。何よりオケ、やや下品なブラスはともかく木管、弦楽器の共感の音色が例えようなく美しい。警句的に楽想を断ち切る太鼓の打音がまるで運命の重き槌を思わせる。心臓を停める。感情の描き分けがはっきりしていて、とにかくドラマが見えるような、飽きない一楽章だ。他のライヴでもこの楽章は素晴らしいが、これは畢生の出来であったろう。二楽章はいきなり物凄く速いが(マデルナは基本は結構飛ばす人だ)再現部以降のガツガツした激しいテンポが特に凄い。オケの能力とやる気にも驚く。一楽章とマクロな点でもコントラストがつけられている。三楽章は躁鬱の気がいっそう濃い楽章だが、予想通りやってくれている。激しい曲想でのアッチェランドは果てしない。四楽章は更に烈しさを増す人間的なうねりが最後、響きの中に溶け入り美しく静かに終わるのがよい。音響感覚の鋭さが際立つ。沈黙させる終わりかただが、拍手を早めに入れたがる気持ちもわかる名演。マデルナのマーラーでもラテン臭のしない汎世界的な価値を感じさせる崇高さすら持ち合わせた一級の演奏。オケの無個性がマデルナの強い体臭を上手く昇華させている演奏でもある。マラヲタは聞くべし。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆マーラー:交響曲第6番「悲劇的」

2016年09月01日 | マーラー
◎ベルティーニ指揮ドイツ・ベルリン交響楽団(WEITBLICK)1973/4/30live・CD

戦慄を覚える名演。音のドイツ臭さとベルティーニらしい鋭さ精度とライヴならではの引きつるようなテンションがまったくケーゲルに生気とスピードをあたえたような硬質のダイナミズムをはっして、これは録音もいいのだけど、ベルティーニのみならずのことで、「指揮者は晩年ではなく壮年がいちばん面白い」の見本である。オケがほんとに指揮者の恐怖政治に迎合し、シカゴみたいに組合作って生気なくやさぐれるではなく、戦々恐々としながら命だけは助けてと抑制し叫び、アンサンブルするのである。ぐわ、最初はドラティ系だな、「往年のマーラー解釈」らしい演奏だなと思ったんだけど、もっとぐいぐいと抉り深層にまで迫る音楽の彫刻の周到さが背景にあるように思う(あくまで録音のうえでの話だが)。ベルティーニ晩年の異常な演奏精度に裏打ちされた静謐さや哲学はないものの、そもそもマーラーに晩年はなかったのであり、50台で頓死した作曲家を描くのに80台の美学は必要ないのである(暴論)。とくに6番のような激情とロマンの交錯する音楽においては。フランスものや現代を得意としたベルティーニであるが、ここでははっきりロマン派のマーラーをドイツ流儀で残酷にぶった切っている。それは冷徹ではない。凄まじく迫ってくる。焦燥感溢れる1楽章はこんな演奏けっこうあるが(提示部繰り返し無し)、物凄いリズム表現の2楽章と物凄いアンサンブルの繰り広げられる4楽章が圧巻だ。テンション高め安定だからしっとりした抒情は求められないものの、音楽にめくるめく翻弄されるのが好きな向きには堪らないだろう。こうも盛り上がるとコーダは単なるクールダウンである。◎。拍手カット。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆マーラー:交響曲第10番~Ⅰ及び各楽章クック補筆断片・レクチャー

2016年08月28日 | マーラー
○デリック・クック(解説・P)ゴルトシュミット指揮フィルハーモニア管弦楽団(私家盤?/testament)1960/12/19BBC番組・CD

有名な10番補筆に関するレクチャーと試演で、WEB上で音源が出回っているゆえ挙げた。(注:2011年2月testamentより復刻予定)荒削りではあるがこんにち聴けるクック完成版に至る、最初の段階での状況を聴くことができる。最初はクックがピアノを交え解説(一部オーケストラ)、のちゴルトシュミットが黄金期フィルハーモニア管を振って全楽章の主要部分を聴かせている(1、終楽章はほぼ全部)。断片しかない楽章について、付け加えるハーモニーをどうするかを主軸に、オーケストレーションをどう展開させていったかがわかる、かなり無理のある部分が今はいくぶん丸められているのだなと思わせるところが多々あり、正直聴きづらいほど生硬なところもある。ゴルトシュミットはオーケストラをきわめて分析的に繰る人で(ここでは特に意識しているとも思われる)遅めのインテンポでリズムをひたすら単調に整え、「響き」を前面に押し出すやり方をしている。そのため和音の一つ一つが重過ぎて胃がもたれてくるが、これはウィン・モリスの有名な録音にも共通するところがあり、クック完成版が「やりにくい曲」だったことを伺わせるものでもある。しかしそういう棒に対しダレも飽きもせず緊張感と技術の精度を保っているフィルハーモニア管がほんとうに素晴らしい。モノラル録音なのが惜しい、クレンペラー組の音である(同様に音色の魅力という部分ではイマイチ)。ごく一部ソロミスのような音があったようなかんじもするがひょっとするとスコアがそうなっているのか。特徴的なのは3楽章プルガトリオの異様なテンポ設定。クック初期版の指示がそうなっているのか異常な高速、中間部での異様な遅速、ここではオケに軋みが生じている。非常に参考にはなる。○。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆マーラー:交響曲第10番(クック改訂第三版)

2016年08月26日 | マーラー
○マルティノン指揮シカゴ交響楽団(Ritardando:CD-R)1968/11/21live

マルティノンにはクック改訂途中の版によるものを含めて何枚か同曲の録音が残されている。この演奏はかなり板についた感じがする。さっさと進む明るいマルティノン節、録音音質もよく、同じ組み合わせでシカゴ交響楽団自主制作ボックスにも10番クック版が収録されているのだが、遜色無い聴き心地である。私はかなり楽しめた。もっともクック版ならではの問題はあり、声部が剥き出しになる個所が多く、2楽章のヴァイオリンパートだけが細かい音符を刻む場面などではバラケがみられて「らしく」ない。流れ良さがそれを救っている。クック版ならではの「マーラーぽくない」フレーズでの違和感もこのスタイルだと率直に伝わってきて、終楽章フルートから提示され奇怪な変容をなすメロディなど「もっと生きていたらこんなの差し替えたろうな」と思ってしまう。ザンデルリンク盤の恣意性がもたらした説得力がここにはない。音響の迫力に欠けるところもあり、後半楽章を象徴する葬送の太鼓も響きが浅くて「音楽的過ぎる」。いろいろ書いたが全般にはじつに聴きやすく、マルティノンらしい色彩味があって他には聴けない特色があり、終演後一人ブラヴォを叫ぶ人に加担したくなる、そんな演奏。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マーラー:交響曲第7番「夜の歌」

2015年02月19日 | マーラー
○コンドラシン指揮レニングラード・フィル(melodiya/BMG)1975/3/3・CD

力強い演奏だ。コンドラシンの、強引と紙一重の表現がある種の節度をもって披露されており、ロシアオケの特性を活かしながらも決してそこに流されることなく、西欧の演奏にひけをとらない巧さで万人の耳に耐えうるものとなっている。レニフィルならではの精度が強みになっている。とはいえロシアオケの響きのバラバラ感が好きではない向きには気になる雑味もあるかとは思う。ファーストチョイスには向かないが、コンドラシン好きは聴く価値あり。○。弱音と強音の差が激しくヘッドフォンなどで聞くとびっくりすることもあるかも。終楽章が聴きものか。個人的にはその前の楽章が生ぬるいウィーン情緒を刷新したようにすっきりしており好きだった。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マーラー:交響曲第5番

2014年12月19日 | マーラー
◯バーンスタイン指揮VPO(DG)1987/9・CD

やや遅いテンポでねっとりするところはねっとりと、しかし揺らせまくるところは余りない。アダージェットだって歌いまくる演奏は他にいっぱいある。オケの音色を前面に押し出すこともなく、その点素っ気なさも感じた。スケルツォが聴きものか。◯。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マーラー:交響曲第1番「巨人」花の章付

2014年12月04日 | マーラー
○フィッシャー指揮ブダペスト祝祭管弦楽団(放送)2011/9/2プロムスlive

花の章を付けたこの曲の演奏にはおなじみの組み合わせだが、演奏も息の合ったところを見せている。多少恣意的で長い音符が間延びするような、ホーレンシュタインのような感じのところが気になったが、そのあとちゃんと爆発するなど解釈が尽くされていて安心して聴ける。花の章は単独で演奏されたようだがまあ、そういうくらいの曲である。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マーラー:交響曲第6番「悲劇的」

2014年10月03日 | マーラー
◯ドラティ指揮CSO(ritardondo:CD-R)1968/1/4live

一部欠落・プチ雑音あり。ドラティの悲劇的はドラマチックで素晴らしい。シカゴ響の機能性はドラティのうねるような力強さにこたえている。どの楽章もおすすめだが、やはり四楽章が弛緩せずキレよく演じきっているということでおすすめか。ドラティの悲劇的でも技術的に充実した記録(音外しなどあるにはあるが)。ラストは鮮烈。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マーラー:交響曲第6番「悲劇的」

2014年10月01日 | マーラー
◯アバド指揮BPO(DG)2004/6live-CD

颯爽としたテンポで粘らずさっさと進むのはいささか面白みを欠いているように思うが、響きや音量で変化を付けているので即物的な感じはしない。オケの内声が豊潤に鳴り響き、細部まで磨かれているのはなかなかのものだ。一楽章提示部繰り返しありで二楽章アンダンテ、敢えて古典的な構成で、ロマンティックな部分を抑えた古典的な解釈を目指したのだろうか。四楽章はもう少しメリハリがあると楽しめた。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マーラー:大地の歌

2014年09月04日 | マーラー
◯ホーレンシュタイン指揮ストックホルム・フィル(放送)1968/11

録音状態はかなり悪いし、演奏レベルもけして褒められたものではないが、緩徐楽章での荘重壮大な表現はホーレンシュタインらしく、ホーレンシュタインマニアなら聞いてもいい演奏かと思う。早い楽章は乱れたりリズム感がいまいちだったりと薦められない。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マーラー:交響曲第9番

2013年11月05日 | マーラー
○ジュリーニ指揮CSO(DG)1976/4・CD

クレンペラーを思わせる鈍重さ(崩壊含め)がきわだった演奏ではあるが、旋律表現での重厚な盛り上げは聞かせるものがある。一楽章はフィラ管ライブに比べて音が茫洋とし鋭さが感じられず、録音のせいかもしれないがピンとこなかった(おかげで長い長い時間二楽章以降を聞かずにいた)。シカゴ響らしい機能性は二楽章で活かされていたと思う。重い舞曲表現はこの楽章ほんらいの姿だ。三楽章は制御がききすぎて勢いを削いでいる感もあるが、時折聞かれるこの指揮者独特の解釈が明瞭にそれとわかるように示されているのもよい。武骨さがあるジュリーニのマラ9だが四楽章は暖かい。分厚い響きで正しく演奏している。奇矯な解釈はなく、概ね早めのテンポでドラマを綴っている。秀逸な終楽章。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マーラー:交響曲第2番「復活」~Ⅴ.リハーサル

2013年08月29日 | マーラー
○バーンスタイン指揮ボストン交響楽団他(whra)1949/3/21live・CD

鄙びた音を出していたオケがバンスタの力づくの指示で粘着気質のアクの強いオケに変貌するさまが面白い。まさに指揮により変貌するのだ。まず終盤の歌唱から確認し、次いで頭からつまみ食いしていくが、場所こそ違えどどんどんアンサンブルがまとまっていくのは凄い。キレも良くなり合奏も分厚くなる。伸び縮みはいくらなんでも極端で恣意的過ぎるが(歌手もそれに合わせさせられるのだ)それはまた別問題、これはドキュメントとして面白い。○。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マーラー:交響曲第1番「巨人」

2013年08月04日 | マーラー
◯テンシュテット指揮フィラデルフィア管弦楽団(WME:CD-R他)1981/4/3live

立体的で構築的なテンシュテットのタイタンはマーラーの未だ簡素なところの残る書法の面白みをケレン味含みで壮大に提供する。このオケの管楽器のパワーや音色を上手く利用しており、聴き応えがある。弦の弱音においても極端すぎるくらい落としているのがまたこの人の解釈の特徴の一端を示している。振幅が大きいがどっしりともしている。◯。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マーラー:交響曲第4番

2013年07月26日 | マーラー
○ロジェストヴェンスカヤ (Sp)エリアスベルク指揮ソヴィエト国立交響楽団(great musicians of palmira du nord/MUSIC ONLINE)1954/10/19live・CD

ソヴィエト国家を代表するオケならでは、さすが。レニフィル同様出来不出来の差がある(二軍の存在はともかく)同じロシアオケなれど、ソリスト級の奏者を揃えてなお強固な合奏力と強力な表現力を兼ね備えることのできた時代の「幸福なほうの記録」の一つといえよう。ライヴだから決して期待しすぎてはいけないが、世評よりずっといい演奏、まさにマーラーらしい演奏であると感じた。ソリストも強力で危なげなく、二楽章のコンマスは調弦を下げているとは思えない安定した音で歌っている。歌いまくらせる、という指揮者ではないのでその点は注意だけれども、レニフィル二軍と演奏する時とは違って、颯爽とした解釈がちゃんとオケに反映され、それが西欧的な香りをすら漂わせ、一部にみられるロシア式の特殊な音色すら余り気にならない。中間楽章がとくに出来がいい。母ロジェストも悪くない歌唱である。エリアスベルクの芸風の代表例にあげていいうちの一枚である。一点、この人の録音は中声部以下で聴こえるべきところで聴こえなかったり聴こえづらかったりする音がよくある。この演奏でも録音バランスの悪さは感じた。古い録音なので、その点も割り引いてください。もしくは、割り足して聴いて。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マーラー:交響曲第4番

2013年03月02日 | マーラー
○ログナー(SP)ロスバウト指揮バーデンバーデン南西ドイツ放送交響楽団(ARCHIPEL)1959/5/14放送録音・CD

スピーディーでさらっとした演奏だがオケはよく鳴っているし統率は素晴らしい。三楽章が唯一起伏をつけたダイナミックなものになっているがそれ以外はマーラー的な「世俗性」を感じない。一本調子にすら感じた。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする