◎マデルナ指揮BBC交響楽団(BBC,IMG)1971/3/31LIVE・CD
表現の振幅の烈しさ、異様なテンポ設定にルバート多用で感情のほとばしるままに表現するマデルナは、バンスタまで確かに存在した一つの流れ、人間臭いマーラーを体言する指揮者の一人であったことは間違いない。イギリス一の手だれBBC響においては他のオケでは棒にあわせさせることもままならない状態であったのに較べ極めて精緻にマデルナのマーラーが描き出されている。静謐と激情の躁鬱的なコントラスト、見栄を切るような仕種に余りにあざといパウゼの挿入もすべて計算ずくであったのかと思わせるまでに、成功をおさめている。マーラーらしいマーラー、「解釈されるマーラー」を久しぶりに聞いた。一楽章の引きずるような重い出だしから、激情がほとばしるパセージでは必ず突っ走るテンポ(素人指揮にありがちな、盛り上がりどころでアッチェルしまくるクセはここでも決まり事のように繰り返される、但しその律せられかたは決して素人ではない)、ここぞというところでの見栄の切り方に激しく共感する。重々しい静かな場面での一種陶酔感とのギャップが凄い。アバウトさもないし録音もよい。何よりオケ、やや下品なブラスはともかく木管、弦楽器の共感の音色が例えようなく美しい。警句的に楽想を断ち切る太鼓の打音がまるで運命の重き槌を思わせる。心臓を停める。感情の描き分けがはっきりしていて、とにかくドラマが見えるような、飽きない一楽章だ。他のライヴでもこの楽章は素晴らしいが、これは畢生の出来であったろう。二楽章はいきなり物凄く速いが(マデルナは基本は結構飛ばす人だ)再現部以降のガツガツした激しいテンポが特に凄い。オケの能力とやる気にも驚く。一楽章とマクロな点でもコントラストがつけられている。三楽章は躁鬱の気がいっそう濃い楽章だが、予想通りやってくれている。激しい曲想でのアッチェランドは果てしない。四楽章は更に烈しさを増す人間的なうねりが最後、響きの中に溶け入り美しく静かに終わるのがよい。音響感覚の鋭さが際立つ。沈黙させる終わりかただが、拍手を早めに入れたがる気持ちもわかる名演。マデルナのマーラーでもラテン臭のしない汎世界的な価値を感じさせる崇高さすら持ち合わせた一級の演奏。オケの無個性がマデルナの強い体臭を上手く昇華させている演奏でもある。マラヲタは聞くべし。
表現の振幅の烈しさ、異様なテンポ設定にルバート多用で感情のほとばしるままに表現するマデルナは、バンスタまで確かに存在した一つの流れ、人間臭いマーラーを体言する指揮者の一人であったことは間違いない。イギリス一の手だれBBC響においては他のオケでは棒にあわせさせることもままならない状態であったのに較べ極めて精緻にマデルナのマーラーが描き出されている。静謐と激情の躁鬱的なコントラスト、見栄を切るような仕種に余りにあざといパウゼの挿入もすべて計算ずくであったのかと思わせるまでに、成功をおさめている。マーラーらしいマーラー、「解釈されるマーラー」を久しぶりに聞いた。一楽章の引きずるような重い出だしから、激情がほとばしるパセージでは必ず突っ走るテンポ(素人指揮にありがちな、盛り上がりどころでアッチェルしまくるクセはここでも決まり事のように繰り返される、但しその律せられかたは決して素人ではない)、ここぞというところでの見栄の切り方に激しく共感する。重々しい静かな場面での一種陶酔感とのギャップが凄い。アバウトさもないし録音もよい。何よりオケ、やや下品なブラスはともかく木管、弦楽器の共感の音色が例えようなく美しい。警句的に楽想を断ち切る太鼓の打音がまるで運命の重き槌を思わせる。心臓を停める。感情の描き分けがはっきりしていて、とにかくドラマが見えるような、飽きない一楽章だ。他のライヴでもこの楽章は素晴らしいが、これは畢生の出来であったろう。二楽章はいきなり物凄く速いが(マデルナは基本は結構飛ばす人だ)再現部以降のガツガツした激しいテンポが特に凄い。オケの能力とやる気にも驚く。一楽章とマクロな点でもコントラストがつけられている。三楽章は躁鬱の気がいっそう濃い楽章だが、予想通りやってくれている。激しい曲想でのアッチェランドは果てしない。四楽章は更に烈しさを増す人間的なうねりが最後、響きの中に溶け入り美しく静かに終わるのがよい。音響感覚の鋭さが際立つ。沈黙させる終わりかただが、拍手を早めに入れたがる気持ちもわかる名演。マデルナのマーラーでもラテン臭のしない汎世界的な価値を感じさせる崇高さすら持ち合わせた一級の演奏。オケの無個性がマデルナの強い体臭を上手く昇華させている演奏でもある。マラヲタは聞くべし。