NHKの優れた科学番組『考えるカラス』を中一生に教わる
米国、英国にはじつに優れた、数学、科学の学習番組があります。英語字幕のつくものもあり、英語教材としてときおり使います。
何が優れているかというと、論理が明快、重要な点に焦点が当たっている、適切な繰り返しがある、テンポがよい、などの言葉がすぐ浮かんできます。その代表は、銀行員のカーンさんが、ユーチューブでいとこの家庭教師のつもりで開始した①「カーン・アカデミー」、それに、アンダーセンさんという高校の先生の、②「ボズマン・サイエンス」です。
①も、②も電子黒板を使い、授業の中継の形をとっていません。その分、無駄がありません。①は手書きで進みます。小学校の1年レベルから大学レベルまでの数学、物理、化学、経済学がメイン。②は、化学、物理、統計学です。アンダーセンさんの顔は隅に登場し、手書きではなく、資料や簡単な動画が順繰りに登場します。
さて、日本には、このような理系のよい講座があるかというと、はなはだ疑問でした。高校の先生らしい方が登場し、実験したり、白板に書いたりしてする講座は、たしかに、あるのですが、上に述べた基準、つまり、論理が明快、重要な点に焦点が当たっている、適切な繰り返しがある、テンポがよい、に照らしてみると、まだまだという感が否めません。先日、読売でしたっけ、理系の先生のコミュニケーション能力を高めようというので、漫才師による、科学、数学の先生対象の講座のことがでていましたが、問題の本質は漫才師の講演で解決できる性格のものではないと、私は思います。
その点は、また詳述しなければならないと思いますが、ここでは、「日本人もなかなかやるではないか!」と思わせてくれた、NHKの講座を紹介しましょう。我々のスクールのたった一人の子供の生徒である、Nさんにじきじきに教わったものです。Nさんは、小学校4年のころから「英語deクッキング」や、英語で数学などで、ずっと教えてきて、4月からは中学2年になりました。学芸大付属の先生から教わったの、と中学1年のの終わりごろに伝授してくれました。
「考えるカラス」は、知識を伝えるものではありません。日常に見られる現象に対して「何故?」という気持ちを抱かせるのが目的です。「何故?」は、がんらい、子供はたくさんもっています。しかし、だんだん擦り切れていくものです。社会に適合させるように教育する過程で強制的に忘れさせられるのでしょう。圧倒的なその方向を少しでも食い止めるのがこの番組の目的であると、私は解釈しています。
10分間、全10回は終了しているようですが、ネットで自由に見られます。一回には、二つの問いが提示されます。
一つ目は、二つの影が近づくと二つの影がお互いに伸びてきてくっつくのは何故?。二つ目は、長いロウソクと短いロウソクを並べて火をつけて、一つのビーカーをかぶせると、どちらが先に消えるの?。
二つ目の問いには、番組の最期に答えを出します。しかし、語り手の蒼井優が、「その理由は...」と言いかけると、上からがしゃんとシャッターが下りて番組が終わってしまいます。あとは考えてください、という仕立てなのです。
10回見て、そこに含まれる20の問いに対して、私は半分ぐらいしか正解できませんでした。それも、りくつをあらかじめ知っているものが大半。皆さんも、さっそく試してみてください。
この番組が、なぜ優れているか、そして、NHKの優れた番組の伝統については、また後ほどお知らせします。