プリメイラ Honolulu

袰岩奈々のホノルル・カフェぶらぶら日記。
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小倉ヒラク著「発酵文化人類学」(木楽舎)読みました

2019-01-22 19:55:46 | 読んだ本
父はビール会社で酵母の研究をしていた。
食卓での話題は酵母の細胞壁を溶かす酵素の話とか、
遺伝子の塩基配列の話とか。

ちょっとだけ理科の宿題の
問題を教えてもらおうと思ったら、延々、
1時間以上、生物についての講義になって、
宿題する時間が無くなって閉口したことも。
ほんの1分、答えだけ聞こうと思ったのに。

そんなわけで、ファザコンになり、
同じ分野で研究者になろうと思った野望は、
研究室の中で細かい作業をするということに
全く向いてない、と気づいて打ち砕かれ、
アッサリ転向。

ただ、何時間でもよくわからないDNAの複製の話を聴き続ける
というようなことを小学生の頃からしていたせいか、
だれかが延々と話しているのを聞くのがあまり苦にならない。
この資質はお陰様でカウンセラーという役割には
うってつけだった。
とにかく初めから終わりまできっちり聞かないと、
振り出しからもう一度、話し出すような父だった。

そんな食卓での話題の一つは、
お酒がどんなに素晴らしい微生物の連携によって
作られているか、というものだった。

たまたま、母親の祖先は石川県でお醤油を作っていた
こともあり、「醸造」は身近で、
お酒やビールを残すことや、
お醤油をダボダボ使うことに厳しかった。

そういえば、父が働いていた研究所の同僚たちが、
高級洋酒を買って、メスシリンダーかなんかで
測りながら、分け合って飲んでる、なんていう会も
やっていた。

そんな、小・中学生の頃のことを思い出しながら、
ページごとにワクワクしながら読み進んだ。
発酵の機序や微生物たちの働きについての解説、
現代の醸造家たちの話題も、どれも
とってもわかりやすいし、引き込まれる文体。
この本の最も面白いところはデザイン、文化人類学という
多分野がクロスしているところ。
特に、私にとってツボったのは
交換型と循環型の経済というテーマ。
「発酵的ギフトエコノミー」なるネーミング。

「寺カフェ」やハワイへ来てこのかた、
ボランティア三昧であることは、
ギフトエコノミー的なコトが
起こらないかなぁという期待と、
交換型の経済に小さく楯突いてみた結果なんだ。

しかも、私の今年のテーマは「分断」と
「悲しみの傍らに居ること」なんだよ。
この「発酵的ギフトエコノミー」や
もやしもんの「みんなみんなで一つの輪」って、
「分断への回答」みたいな話なのだもの。
去年、ひょんなことからお会いした
坂爪さんと「道楽」で話した
「循環型のやりとり」的なことにもつながる。

水と小麦粉と蜂蜜で起こしたイーストで
サワードーのパンを焼きながら、
読むにはぴったりだった。
これからもも何回も開くことになるんじゃないかな。

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