鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

連載中の「ぷらっとウオーク」などをまとめました。

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」・・・地球を蹂躙する人間(*)、土佐の叡智は(〇)

2016-12-15 | 「ぷらっとウオーク」 2016年~現在

地球を蹂躙する人間(*)、土佐の叡智は(〇)  

                                       情報プラットフォーム、No.351、12(2016)

 エッセイ「ぷらっとウオーク」を初めて本誌に書かせていただいたのは2000年5月(No.176)であり、14年を越えて続き、その合計は175編に上る。この最終稿では表題のように(*と〇)で集約してみる。

 

*行く川の流れは絶えずして しかももとの水にはあらず よどみに浮かぶ泡(うたかた)は・・・久しくとどまりたるためし無し(「方丈記」、鴨長明著)⇒No.248{「エントロピー」では読んでもらえないか?}

*エネルギーが豊富な時、エネルギーを多く使う生物種が優位に立つが、エネルギーが乏しい時は、エネルギー消費が最小の種のみが生き残れる。(「豊かな石油時代が終わる~人類は何処へ行くのか」、日本工学アカデミー編、2004)⇒No.241 {この暑さは地球温暖化の影響か?}

*「マデイラ島(Madeira)」を「木の島」と訳すのは不適切。鬱蒼たる高木・巨木を樹木ではなく、金を生む木材としか見ることが出来なかった紛れもない証拠である。(「森と文明」、ジョン・バーリン著、安田喜憲訳、晶文社、1994)→三角貿易の帆船の建造⇒No.

239{自然遺産、マデイラ島の照葉樹林}

*他の世界から隔絶されていることを知っている島民であれば、小さな島の有限の資源に依存していることは百も承知していたに違いない。必須の資源を完全に枯渇させるまで消費し続けたのである。次第に未開状態に逆戻りしていった。(「緑の世界史」、クライブ・ポンティング著、石弘之訳、朝日選書、1994)→イースター島、モアイ倒し戦争⇒No.238{人口密度、50人/km2}

*今、我々が直面しているグローバリゼーションとは何か? それは持続可能なものだろうか? 違う。それは長期にわたって持ちこたえられるものだろうか? 絶対にそうではない。誰が新しい世界を建設していくのだろうか? それは地球に住む男と女である。彼らの武器は何だろうか? アイデアと意識の高さだ。それはユートピアなのだろうか? いや違う。(「帝国主義のグローバリゼーション」、フィデル・カストロの演説)⇒No.211{キューバを見たい}、No.302、{人間社会もメタボでなければ}

*永遠に続く登山というものはない。登った山は降りなければならないのである。(「下山の思想」、五木寛之著、幻冬舎新書、2011)→+経済成長率は続かない。⇒No.298{右肩下がりの下山の先は}

*私は、19世紀の喪に立ち会っているのだ。一つの時代が終わろうとしていた。(「ココ・シャネル 閉ざされた時代に自由の翼を」、NHKBS、2015)⇒No.330{あなたは二十世紀の喪に服したか}

*地球上には未開拓の空間も、搾取できる開発途上の対象もなくなりつつある。(「資本主義の終焉と歴史の危機」、水野和夫著、集英社新書、2014)⇒No.330{あなたは二十世紀の喪に服したか}

*動けない植物は、動ける動物以上に、この地球上で繁栄している。何処にでもある太陽光、炭酸ガス、水を資源とし、贅沢な機能を排除して、必要最小限のエネルギーで種の系統を維持する手段を選んでいる。(「植物の生存戦略『じっとしているという知恵』に学ぶ」、朝日新聞社、2007)⇒No.248 {『エントロピー』では読んで貰えないか?} ;No.201 {切り詰めて生きる}

*資本主義の致命的欠陥は、富の分配が公平に行えない仕組みであり、貧富の差がますます拡がっていくことである。(「21世紀の資本」、トマ・ピケティ著、邦訳、みすず書房、2014)⇒No.330 {あなたは二十世紀の喪に服したか}

*私たちは、今人類の歴史のなかで、最も「豊かな」生活をしていると思い込んでいる。昔の生活ときたらそれはひどかったと、皆がそう思っている。宮沢賢治はそうではないとはっきりと言っている。彼は自然を慈しむ目を持ち、自然に対して畏敬の念を持っていた。(「エントロピー」、藤田裕幸ら著、現代書館、1985)→人間になった人類が地球の破壊を始めた。⇒No.241 {この暑さは地球温暖化の影響?}

 

〇男女に定員を「割り当てる」クオータ制や、男女の「等価性を維持する」パリテ制を採用することで議会の男女比を保つ方法がある。→地方議会から⇒No.336  {本当の男女共同参画社会に向けて}

〇科学者であり文学者でもあった寺田寅彦のように、また何にでも好奇心一杯の牧野富太郎のように、柔軟性を持ってほしい。暗記一辺倒の受験勉強の仕組みの中で、受験科目を限定して文系・理系の概念ができてしまったのである。→固定観念の排除⇒Mo.282 {理系・文系は受験科目だけにしよう}

〇玄関から、直接、子ども部屋へ、書斎へ行ける間取りは最悪である。「ただいま」、「お帰りなさい」の家族間の挨拶が気軽にできる造りをイメージして欲しい。「頂きます」、「ご馳走様」、そして「おはよう」、「お休みなさい」の挨拶が家族を豊かに育ててくれる。挨拶の習慣はご近所さんを増やしていく。⇒No.236 {出会うチャンスが多い造りほどよい};No258 {モーニングって何です?}

〇「高知 広域・広領域 博物科学館」を創ろうとする提案である。点在する様々な領域の施設や企業活動を通じて、科学・技術だけではなく、歴史・文化に関わる活動にも広げたいのである。→ボランティアとしての地域活動、その組織化の一助にも。⇒No.316 {初夢 高知博物科学館ネットワーク}

〇土佐には無人島の鳥島で生き抜いた先人たちの事例がある。野村長平やジョン万次郎の生き方を調べてみよう。防災訓練は「逃げる」に集中しているが、その次に来る想定は、自然の中でご近所の方々と助け合って「生き延びる」である。⇒No.314{大災害後のサバイバルのために}

 

長年にわたりご愛読をいただいたことに、そして土佐の高知を私の故郷と認めて下さったことに、そして私に生き甲斐を与えて下さったことに感謝いたします。

 註:メールアドレスが変更になっています。s-tomoo@gol.comです。御感想、ご意見、耳よりな情報をお聞かせください。鈴木朝夫

 

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 鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 目次のつづき(2016年~現在に至る) 

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 目次のつづき(2012年~2015年

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 目次のつづき(2008年~2011年)

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」・・・ディープ・ラーニングの達成度、人工知能

2016-12-15 | 「ぷらっとウオーク」 2016年~現在

ディープ・ラーニングの達成度、人工知能  

                                        情報プラットフォーム、No.350、11(2016)

  最近の人工知能の開発と発展は目覚ましい。神経細胞の構造や動きをモデル化して、コンピューター技術に応用したものをニューロ・コンピューターと名付けている。このような人工知能(AI)には、さまざまなレベルがあり、「認識・思考過程を組み込んだ人工知能」、「多量のデータを処理できる人工知能」、そして「そのビッグデータから自動(深層)学習のできる人工知能」へと急速に進化している。これは「画像認識」、「運動の習熟」、「言語の意味の理解」と続くものである。その道のゲームの達人との対戦を見ても、チェスから将棋、そして囲碁へと複雑さが増すゲームに拡大して、人工知能が優位に立ちつつある。

 自動操縦の自動車が一般道を走行する時代はすぐそこに来ている。自動操縦の安定性・安全性は、運転を重ねる度に深層学習(ディープ・ラーニング)を繰り返し精度が上がっていく。しかし、自力で運転する喜びも温存しておく必要がある。「マナーを守ろう」の標語は無用となり、渋滞も解消するだろう。なお低確率であるが必ず発生する事故の法的安定性の確立が重要である。ドローンでの宅配便、豊かな心を持つ介護・介助ロボットの実用化もすぐそこにある。一方で、サイバー攻撃には、先制的に時々刻々と備えを確実にしておく必要がある。殺人ロボット兵器を作る残酷なサイコパスは身近に住んでいる。

 世の中のさまざまな物体(モノ)がインターネット機能を持ち、相互に連結した仕組みを「モノのインターネット(IoT)」と呼んでいる。これは脳神経の構造を模したアルゴリズムなのである。神経回路網(ニューラル・ネットワーク)は神経細胞(ニューロン)と神経細胞の接合部(シナプス)でできており、これらは多層化され、複雑に接続している。人間の「認知」と「行動」の仕組みを情報処理システムの観点からから考えてみる。目や耳などの「感覚」器官で受けた情報(意識)は、普遍的な判断基準を加えて「知覚」される。さらに経験や学習に基づく基準に照らして「認知」される。これらはさまざまな階層で「記憶」される。なお、記憶・記録の割り当ての場所は各段階に存在するが、詳しいことは不明である。

 手や足などの「運動(行動)」はそのレベルに応じて、起点が異なってくる。視覚空間と記憶空間の中を運動空間として身体運動を行うが、その判断基準はディープ・ラーニング(深層学習)の成果によるだろう。オリンピックの体操競技、例えば金メダリストの内村航平の演技を見ると、「知覚」による本能で即断演技をしているように思われる。「体で覚える」の表現は当を得ている。これに対して「豊かな感性」、「言語の理解」は脳のどの部分で、どのように培われているのだろうか。テレビ番組「プレバト!!」(MBS/TBS系)の俳句コーナーで、容赦ない毒舌で評価・添削する夏井いつきを見ていると、「知覚」、「認知」、「記憶」のすべてを活用して「磨かれた感性」が創造されているように思える。

 私の歩き始めの「すくみ足」を、意識改革によって解決する手段は前報で述べた。一方で、停止行動にも問題が出てくる。目的地の一歩手前で、手が先に出て、前のめりになってしまう。出入口のドア、これから座る椅子など、そこの到達点には目的がある。効果的な手順を即座に判断できなくなっている。

 現在のところ、神経変性疾患の有効な治療法はない。細胞病理学上の特徴は異常な構造の蛋白質の蓄積であり、これが情報伝達物質のドーパミンの十分な分泌を妨げていると考えられている。神経伝達物質を補うような錠剤(ドプス錠やドパコール錠)を服用している。病名は進行性核上性麻痺であり、進行を遅らせることしかないようである。大隅博士のノーベル医学生理学賞の成果(不必要な蛋白質を再生する機能)の実用化には時間が必要である。一方で、人工知能はディープ・ラーニング(深層学習)を重ねて、日を追うごとに知力・能力を増している。自動操縦電気自動車の普及はすぐそこである。ボディには優れたデザイン性が要求される。漫画王国高知の、中小企業こそ、ベンチャー企業こそが出番である。

 参考資料(人工知能など):

本誌、2016,6,No.345,P15  / 本誌、2016,7,No.346,No.346,P16

 

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 鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 目次のつづき(2016年~現在に至る) 

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」・・・ディープ・ラーニングの破綻、脳の機能

2016-12-15 | 「ぷらっとウオーク」 2016年~現在

ディープ・ラーニングの破綻、脳の機能   

                                           情報プラットフォーム、No.349,10(2016)

  私が「進行性核上性麻痺」と診断され、「要支援2」の認定を受けたのは2015年5月である。この病気は「神経変性疾患」の中の「パーキンソン症候群」の一つに分類される。これは先に{急速に『老人力』が増しているこの頃}(本誌、No.337、10(2015)で述べた。神経変性疾患とは認知症の原因となるアルツハイマー病(AD)、運動障害を引き起こすパーキンソン病(PD)、全身の麻痺を発症する筋萎縮性側索硬化症(ALS)などである。それぞれ侵される場所は、ADでは海馬の神経細胞(ニューロン)、PDでは黒質ドーパミン神経、ALSでは脊髄運動ニューロンである。

 進行性核上性麻痺の症状の特徴は、運動障害(すくみ足、易転倒性)、目の動きの障害(下向きの視線)、構音障害・嚥下障害、そして軽い認知症とある。発症から3年弱で車椅子、5年ほどで臥床状態になると記されている。まさに進行性である。私の現在の症状は「すくみ足」である。歩き始めの一歩が出ずに足が地面に張り付いたようになる傾向がある。最も気を付けるべきは転倒による外傷・骨折である。

 「足がすくむ」ときの状況を自己分析してみる。人の脳は、さまざまな情報を認知し、学習し、思考し、情感を育み、感性を磨き、理性を備えることなど、複雑な精神機能を受け持っている。生まれてからのディープ・ラーニング(深層学習)の蓄積が人柄・人格を形成する。運動のコントロールは、視覚からの現実の空間地図に加えて、時間的変動を含めた予測、過去の複雑な変化の記憶などに基づいて行われる。

 「歩く」動作の目的は移動であるが、同時に複数の用事が頭の中で働いている。「ことのついでに」と言える思考作業である。複数の事象を同時に考えられないことが「すくみ足」の原因の一つと思われる。例えば、通路の仕切り(床の模様・配色の区切り、部屋の入口の仮想的な仕切り)で足が出なくなる。共同トイレのように、何度も通路が直角に曲がる構造では、すれ違い衝突の可能性を心配するのである。過去のそのような経験を覚えているのかもしれない。親切に通り路を作って下さると「有難うございます」と言ったまま動かなくなる。親切に早く応えようとする焦りの結果であろう。

転倒による怪我の不安のため、日常生活での運動量がどうしても不足がちになる。筋力維持の運動は不可欠と感じて、週3回、半日のリハビリに通っている。この7月で満1年になる。ここでは、ラジオ体操第一およびみんなの体操、口腔・嚥下体操とパタカラ体操、マシンによるトレーニング(レッグプレス、ローイングなど6種類)などを行う。途中で、水、ジュースなどの水分が補給される。これらの運動の中で私の病状にとって有効と思われるトレーニングは、手首・足首の曲げ・回転運動、指先の曲げ伸ばし運動、顔面・口腔の運動、そして大きな声での発声訓練である。なお、自宅では、仰向けでの体操、特にお尻上げ運動をしている。前かがみになりがちの姿勢改善に効果的である。

 特質すべきは、いつも笑顔で迎えてくれるスタッフ、膝を落として、目線を低くして声を掛けるスタッフである。送迎車のドライバーも素晴らしい。シートベルトの確認や帰宅の際の玄関ドアまでの安全確認に見落としはない。「ストレスはたまりませんか?」、「家へ帰ってから腹が立つようなことにはなりませんか?」と尋ねても笑顔である。高齢者・障害者の感情を理解し、共感するという基本が守られている。高齢化が進む高知県で、平均寿命を延ばそうとする高知県で「笑顔」を増やし続けることが大切である。

 危険を察知する注意力は、生まれて以来、さまざまな経験を積み、情報を集めて、試行錯誤の末に脳に蓄積され、記録された私の能力である。私の病変は積み上げてきたディープ・ラーニング(深層学習)の部分的な破綻と考えられる。本能として先祖から受け継いだ危険察知能力は強く残っていると思われる。

 すくみ足を防ぐために、歩き始めの第一歩に心掛けていることは、「歩幅を大きく、踵(かかと)から踏み込む」であり、加えて「胸を張って偉そうな姿勢になる」である。颯爽と歩きたいものである。

 

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」・・・土佐の高知にありがとう(Ⅵ)、孫たち

2016-12-15 | 「ぷらっとウオーク」 2016年~現在

土佐の高知にありがとう(Ⅵ)、孫たち   

                                    情報プラットフォーム、No.348、9(2016)

初孫の樹(たつき)君は大好きな爺ちゃんと婆ちゃんの居る高知に頻繁にやって来た。高知での樹ちゃんのことは、2歳の時は{好奇心}(高知新聞、閑人調、1998/9/24)で述べた。3歳の時のことがこの文章であり、8歳の時のエピソードは{杉の大杉}(本誌、No.213、6(2005))で、13歳の時のことは{スラグの粘性、溶岩の粘性}(本誌、No.284、5(2011))で知ることができる。現在は憧れの航空整備士を目指して、所沢の国際航空専門学校の航空整備科に在学中である。

新幹線       (記:2001/7/9)

「鈴木家は絶滅危惧種みたいなもの。だから、レッド・データブックに登録する必要があるのよ。長男の夏志のところに男の子ができなければ絶滅するよ」とちえ子が言っていました。私には弟が居ますが、女の子が3人です。「嫁の敦子さんに圧力を掛けるようなことを言っては駄目」が私の言い分です。ずいぶん古風なことを言うと思いましたが、もっとも、ちえ子の実家はすでに絶滅が確定しているのです。彼女の実家は夏志を含めて、男の子は外孫ばかりです。

昨年、ちえ子が病床にあるとき、その待望の内孫が生まれました。男の子です。「おばあちゃんに代わって、赤ちゃんによろしく伝えてね」と樹ちゃんは頼まれました。栃木県の小山市の産院にお見舞いに行くことになりました。明日は新幹線に初めて乗れると興奮気味だったようです。空港から樹ちゃんの待つ東京駅に直行です。東京駅のプラットフォームの南側に立つと、東海道、東北、上越の新幹線の入線する車両の全部を見ることができます。700系、MAX、あきたこまちなどよく知っています。樹ちゃんは興奮の極に達しています。

東京から小山まで、大満足です。産院で赤ちゃんと一緒に写真を何枚も撮りましたが、滞在時間は20分程度でした。帰りの新幹線のことばかり考えています。小山に止まらない列車が風を起こし、唸りをあげて通過します。「すげえ!」の連続です。帰り着いてみると、少し元気がありません。「おれ、新幹線、見過ぎちゃったよ。熱があるらしい」と額に手を当てています。

ちえ子はこの内孫の崚斗くんを抱けませんでした。心残りだったと思います。

交通標識     (記:2001/7./9)

  おばあちゃんが入院した昨年の夏、3歳の樹ちゃんは高知で暮らしました。アンパンマン・ミュージアムには何度も行きました。香北町谷相のハーブ園、遊園地わんぱーく高知、あちこちに見えるたくさんの風車も見に行きました。そして毎日、病院へお見舞いに行きました。

 車で出かける時は、助手席のチャイルドシートが彼の指定席です。突然「あれは何だ」と指さしします。何を指しているのか分かりません。また、「あれは何だ」、「どれのこと」。「あれだよ」の繰り返しです。ようやく分かりました。お年寄りマークでした。彼にとっては初めて見る標識だったのです。初心者マークのことは知っています。似ているが違うと思ったのです。高知では特に多く見かけます。一応の説明で納得しましたが、「おじいちゃんは付けなくていいの」と次の質問が来ました。

 5.0tとある禁止標識に気が付きました。「あれは50キロ制限じゃないよね」との質問です。「ここは弱い木の橋でしょ。だから5トン以上の重いトラックなどは、通行禁止なんだよ」と説明します。「おれ、こんなの見たことないぜ。東京にはないのかな」と生意気なことを言います。このような標識も高知ならではと改めて気が付きました。交通標識のこと、鉄道のことなら、何でも知っています。ミニカーを300台も持っています。建設機械にも詳しく、馬力を表す型番まで知っています。彼は好奇心の塊です。

 

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 鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 目次のつづき(2016年~現在に至る) 

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 目次のつづき(2012年~2015年

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 目次のつづき(2008年~2011年)

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 目次(2002~2007年 )

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」・・・土佐の高知にありがとう(Ⅴ)、たたら  

2016-12-15 | 「ぷらっとウオーク」 2016年~現在

土佐の高知にありがとう(Ⅴ)、たたら      

                                           情報プラットフォーム、No.347,8(2016)

  「第1回たたらサミット」が東京工業大学の永田和宏先生の音頭で、東工大大岡山キャンパスで1998年に開催された。「第2回たたらサミット」は1998年に名古屋大学の黒田光太郎先生のお世話で、トヨタ産業技術記念館で行われた。その時、「第3回たたらサミット」を高知工科大学で2000年秋に引き受けることが決まってしまった。大学の立地する土佐山田町は土佐打ち刃物の主生産地として栄えた場所であり、その地に開設した工科大では開学以来、学園祭で「たたら製鉄」を続けていた(註)。これが評価された結果だと思われる。しかし、何基の「たたら操業」ができるのだろうかと心配の種は尽きなかった。

高知のたたら製鉄(記:2000/12/29)

学園祭・刃物祭りの時は毎年、家内のちえ子は工科大の先生の奥様方とご一緒に商工会の焼肉会場でボランティアとしてお手伝いするのを常としていましたが、たたらサミットのときの焼き肉は他の人に任せて、サミットの方を手伝うと言って呉れていました。

高知工科大学NEWS LETTER(Flying Fish)に「6基の炉でたたら製鉄競演(大学祭、刃物祭りに併せて第3回たたらサミット開催)」の見出しで掲載されました。高知新聞も大きく報道してくれました。10月21日(土)の講演会では250人の教室は8割以上の埋まり方、土佐にゆかりの方々の講演や4件の操業事例報告がありました。地元の方々はもちろんのこと、日刀保たたらの村下(むらげ)を務める木原明さんをはじめとする、日本各地の資料館、博物館の方々の参加もあり、大いに盛り上がりました。

22日(日)は、地元の土佐山田商工会(山下哲さんを村下とする土佐山田商工会の鍛冶屋・刃物屋さん達)、高知工科大学(中村市の岡田光紀さんを村下とする工科大生達)、それに東京工業大学、鈴鹿高専の各1基、徳島大の2基の合計6基、タイプの異なる6基の炉の操業は圧巻でした。工科大の学生は、グループごとに各炉の担当を決めて、事前の打ち合わせ、機材の調達・運搬・操業支援を行いました。イベントは大成功でした。

全ての企画を陰で支えてくれたのは朝吹美恵子さんを代表とする黒鉄会の皆さん、東工大の永田先生、名古屋大学の黒田先生など大勢の方々でした。関係者の宿泊は大学のゲストハウスと国道を斜めに隔てた大学から至近距離の温泉宿でした。前日の20日には、その「夢の温泉」で明日からの本番の準備と打ち合わせをいたしました。日本刀剣保存会のたたら操業の見学をメインとする出雲への旅行の思い出話、明日からの「たたらサミット」への期待などお酒の入った前夜祭は大いに盛り上がりました。

しかし、私にとっては大変辛い日々となりました。各地からの客人の送迎に加えて、ちえ子が救急車で緊急入院したのです。一部の方には伝えましたが、「たたらサミット」に集まった方々に黙っていることは耐え難いことでした。その後、すぐに娘の葉子と孫の樹ちゃんが東京から駆けつけてくれました。9月半ばに退院し、バリアフリーに改造した我が家での車椅子の生活が始まったばかりでした。車椅子で「学園祭」や「たたらサミット」に連れて行くつもりでした。工科大のスロープを自力で上がるのを楽しみにしていたのです。車椅子に乗り移れる乗用車などのカタログも取り寄せました。土佐山田教会の中山仰牧師さんにお持ちになっているそのような仕様の車を見せて頂きました。車椅子で行ける観光スポットなども調べました。ちえ子もこのような旅行を楽しみにしていました。

ちえ子は21世紀の手前の12月16日に力尽きました。一緒に歩いていたのに、一緒に登っていたのに、そこまで来ている21世紀なのに、何故、何故と。

註:{たたら製鉄}・{出雲のたたら}、本誌、No.184、1(2003)

 

 

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