土佐の高知にありがとう(Ⅴ)、たたら
情報プラットフォーム、No.347,8(2016)
「第1回たたらサミット」が東京工業大学の永田和宏先生の音頭で、東工大大岡山キャンパスで1998年に開催された。「第2回たたらサミット」は1998年に名古屋大学の黒田光太郎先生のお世話で、トヨタ産業技術記念館で行われた。その時、「第3回たたらサミット」を高知工科大学で2000年秋に引き受けることが決まってしまった。大学の立地する土佐山田町は土佐打ち刃物の主生産地として栄えた場所であり、その地に開設した工科大では開学以来、学園祭で「たたら製鉄」を続けていた(註)。これが評価された結果だと思われる。しかし、何基の「たたら操業」ができるのだろうかと心配の種は尽きなかった。
高知のたたら製鉄(記:2000/12/29)
学園祭・刃物祭りの時は毎年、家内のちえ子は工科大の先生の奥様方とご一緒に商工会の焼肉会場でボランティアとしてお手伝いするのを常としていましたが、たたらサミットのときの焼き肉は他の人に任せて、サミットの方を手伝うと言って呉れていました。
高知工科大学NEWS LETTER(Flying Fish)に「6基の炉でたたら製鉄競演(大学祭、刃物祭りに併せて第3回たたらサミット開催)」の見出しで掲載されました。高知新聞も大きく報道してくれました。10月21日(土)の講演会では250人の教室は8割以上の埋まり方、土佐にゆかりの方々の講演や4件の操業事例報告がありました。地元の方々はもちろんのこと、日刀保たたらの村下(むらげ)を務める木原明さんをはじめとする、日本各地の資料館、博物館の方々の参加もあり、大いに盛り上がりました。
22日(日)は、地元の土佐山田商工会(山下哲さんを村下とする土佐山田商工会の鍛冶屋・刃物屋さん達)、高知工科大学(中村市の岡田光紀さんを村下とする工科大生達)、それに東京工業大学、鈴鹿高専の各1基、徳島大の2基の合計6基、タイプの異なる6基の炉の操業は圧巻でした。工科大の学生は、グループごとに各炉の担当を決めて、事前の打ち合わせ、機材の調達・運搬・操業支援を行いました。イベントは大成功でした。
全ての企画を陰で支えてくれたのは朝吹美恵子さんを代表とする黒鉄会の皆さん、東工大の永田先生、名古屋大学の黒田先生など大勢の方々でした。関係者の宿泊は大学のゲストハウスと国道を斜めに隔てた大学から至近距離の温泉宿でした。前日の20日には、その「夢の温泉」で明日からの本番の準備と打ち合わせをいたしました。日本刀剣保存会のたたら操業の見学をメインとする出雲への旅行の思い出話、明日からの「たたらサミット」への期待などお酒の入った前夜祭は大いに盛り上がりました。
しかし、私にとっては大変辛い日々となりました。各地からの客人の送迎に加えて、ちえ子が救急車で緊急入院したのです。一部の方には伝えましたが、「たたらサミット」に集まった方々に黙っていることは耐え難いことでした。その後、すぐに娘の葉子と孫の樹ちゃんが東京から駆けつけてくれました。9月半ばに退院し、バリアフリーに改造した我が家での車椅子の生活が始まったばかりでした。車椅子で「学園祭」や「たたらサミット」に連れて行くつもりでした。工科大のスロープを自力で上がるのを楽しみにしていたのです。車椅子に乗り移れる乗用車などのカタログも取り寄せました。土佐山田教会の中山仰牧師さんにお持ちになっているそのような仕様の車を見せて頂きました。車椅子で行ける観光スポットなども調べました。ちえ子もこのような旅行を楽しみにしていました。
ちえ子は21世紀の手前の12月16日に力尽きました。一緒に歩いていたのに、一緒に登っていたのに、そこまで来ている21世紀なのに、何故、何故と。
註:{たたら製鉄}・{出雲のたたら}、本誌、No.184、1(2003)
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高知県産業振興センター発行の情報誌「情報プラットフォーム」に掲載された 「ぷらっとウオーク」 を、「高知ファンクラブ」事務局の要請を受けて、ブログでも紹介させていただくことにしました。
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