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先生:生徒指導は今/4 親も子も、生活に精いっぱい

2009年01月31日 | スクラップ

 

■「貧困の影」教室にも


 4、5日続けて同じ服を着ている。シャツは薄汚れ、指先は黒ずむ。埼玉県の小学校に勤める女性教諭(58)は、5年生の女児が気になっていた。担任ではないので、口を出しづらい。女児は学校を休むようになり、学校が対応に乗り出した。

 生活保護を受ける母子家庭で、母は病で入院。料金延滞で電気は止められていた。女児は兄妹2人とひっそり暮らし、担任が訪ねても鍵をあけなかった。

 「もっと早く家庭訪問していれば……。担任は20代で余裕がないのだと思う」。女性教諭は言う。児童相談所が支援に入ることになった。

 学校を休みがち、授業中もボーッとして、教材費の納付も遅れぎみ。そんな男児の家に「きょうも来ていませんが」と電話すると、「親類の葬式で」と父親が言う。「この間もお葬式でしたね」と返すと、「ばれましたか」とあっけらかんとしている。

 女性教諭は「10年ほど前から、生活に精いっぱいで意欲に欠け、支えが必要な子が増えてきた。以前は1クラスに1、2人だったのに今は4、5人いるのが普通」と話す。

 寄り添わなくては、と思う。毎日電話してくる不登校の子もおり、携帯は手放さない。授業中うつむいたままの母子家庭の女児には肩をたたいたり、手を握ったりスキンシップで接する。女児が書く詩は学級通信に載せる。自信をつけて笑顔をみせてほしい。



  ■   ■

朝食抜きで来る子のため、ある養護教諭はクラッカーやスープを棚にしのばせる=丸山博撮影
朝食抜きで来る子のため、ある養護教諭はクラッカーやスープを棚にしのばせる=丸山博撮影



 貧困の影が学校を覆う。経済的に苦しい小中学生の家庭に、市町村が学用品代や給食費などを支給する「就学援助」の利用者は増え続け、07年度は142万人に達した。受給率13・7%で、98年度の約2倍だ。

 中学生の就学援助受給率が43%を超える東京都足立区。区内で34年間中学校の教員を務め、昨年度退職した大谷猛夫さん(62)は、家庭訪問で「家で勉強できる環境にない」と感じることが少なくなかった。狭い部屋で勉強机がなかったり、小さな弟が走り回っていたりする家庭も珍しくなかったからだ。

 大谷さんが教えたある学校の3年生は、半数が就学援助を受給していた。担任したクラスでは4人が不登校。うち1人は就学援助を受け、両親が仕事のため多忙でほとんど家にいなかった。家を訪ねると、生徒は最初、ドア越しに応答したが、じきに反応しなくなった。昼は清涼飲料水の販売、夜は居酒屋で働く母親が夕刻、夕食作りに帰るころを見計らい、週1回通った。

 「行事だけでも出よう」と促した。仲間と力を合わせる喜びを感じてほしい。教員たちで知恵をしぼり、運動会も大縄跳びのように集団で力を合わせる競技を企画した。

 しかし、母親が漏らした言葉はショックだった。

 「先生、勉強は小学校まででいいと思うんです」

 大谷さんは言う。「70年代の子はもっと貧しく、荒れて反社会的な行動もとったが、エネルギーは外を向いていた。今はひきこもって“没社会的”になってしまう。親も子も希望をなくしていて、働きかけても反応が鈍い」=つづく



 

毎日新聞 2009年1月30日 東京朝刊

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