雇用・失業状況が急速に悪化し始めた。昨年12月の完全失業率は4.4%、前月と比べて過去最大の悪化幅となり、有効求人倍率も前月を下回った。また、今年3月末までの半年間に職を失ったか、失うことが決まっている派遣など非正規雇用労働者が昨年12月時点の調査から約4万人も増え、約12.5万人に上るとの調査結果を、厚生労働省が公表した。
「すべての雇用に関する数字が悪化している。今後、さらに厳しさが増す」と同省はみている。失業率は過去最悪だった5.5%を超えて6%にまで達する可能性も出てきた。「大失業」時代が来ないように対策を急ぐべきである。
今、必要なことは考えられる手段を尽くして雇用・失業対策を実行することだ。使用者と労働側が「雇用を守る」という点で合意し、非正規雇用も含めた対応策を急ぐことだ。
対策は、当面の失業対策と労働法制の見直しなど中長期対策の二つがある。これらを同時に、そして確実に実施しなければ、雇用不安は解消できない。
緊急対応では、解雇防止と雇用創出策が中心となる。2次補正予算で実施が決まった雇用創出のための基金の創設や再就職の支援、さらには昨年から始まった雇用調整助成金制度の拡充や、住宅・生活支援による住まいの紹介などをきめ細かに行ってほしい。
失業者の職業訓練も重要だ。時間はかかるが、再就職の際のミスマッチを食い止め、就業の機会を広げるためにも必要なことだ。
中長期対策としては、労働者の3人に1人にまで増えた非正規雇用の処遇改善と、その状況を容認した労働者派遣法の見直し、さらには欧州ですでに定着している同一価値労働・同一賃金の原則の法制化、雇用保険の安全網から抜け落ちている非正規労働者の救済などが重要だ。
グローバル化の中で、企業は正社員から非正規への切り替えを行い、人件費の削減で競争を乗り切ってきた。派遣法が何度も改正され、製造業務などへの派遣が可能になり、非正規雇用が増えた。その結果、世界同時不況のしわ寄せは、まず非正規に及んだ。「雇用の調整弁」として使われ、真っ先に解雇されたのだ。内部留保を増やしてきた企業が、その一部を取り崩して、なぜ非正規雇用を守らないのだろうか。
非正規と正社員の二極化は、どうみても正常な雇用形態ではない。製造業務への派遣禁止など、派遣法を見直し、舛添要一厚労相も言うように「正社員雇用が原則」とすべきだ。
未曽有の不況下では、小手先の雇用・失業対策は通用しない。今、やるべきことは解雇防止、雇用の創出、そして雇用のセーフティーネットの張り替えによって、働く人たちの不安を取り除くことである。
毎日新聞 2009年1月31日 0時00分
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