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製造業派遣、禁止論議 大量失業で急浮上

2009年01月31日 | スクラップ

 非正規従業員を取り巻く雇用情勢の急激な悪化で、労働者派遣法の改正論議が再び熱を帯びてきた。焦点は失業者の多数を占める製造業派遣の是非だ。規制を訴える労働側に対し、経営側は慎重姿勢を崩さない。一方、民主党は14日、法施行後3年をめどとする禁止を盛り込んだ改正案の国会提出を決め、与野党の対立が鮮明になった。ただ総選挙向けの世論対策の思惑も絡み、議論は深まっていない。【東海林智、上野央絵】

 


■「使い捨て」鮮明 労組には温度差も

 労働者派遣法は86年に施行され、04年に製造業への派遣が解禁された。昨年前半の改正論議は、労働者の身分が不安定な日雇い派遣の禁止や、フルキャストなどの派遣大手で発覚した不明朗なマージンの規制などが主な論点だった。

 しかし秋以降の景気悪化が状況を変えた。大量の非正規従業員が職を失い、その多くが製造業に携わる派遣労働者だったからだ。

 厚生労働省の調査によると、07年度の製造業の派遣労働者は46万人で、前年度(24万人)から倍増した。それでも全派遣労働者(384万人)に占める割合は12%に過ぎない。一方で同省は3月までに8万5000人の非正規従業員(期間従業員を含む)が失業すると予測。うち96%は製造業従事者、雇用形態別では3分の2が派遣従業員とみている。

 こうした厳しい現実や舛添要一・厚生労働相の見直し発言もあり、法改正の焦点は製造業派遣の是非に移った。だが、国会で審議中の政府改正案はそこを素通りしている。

 では、製造業派遣のどこが問題なのか。

 年末年始に東京・日比谷公園に開設された「年越し派遣村」には約500人の失業者が救済を求めて集まった。多くは自動車などの製造業に携わっていた派遣労働者で、共通するのは仕事と同時に住まいを失った点だ。

 製造業は、経営状態が良い時には生産量を増やすため大量の派遣労働者を受け入れる。その際、契約料を安く抑えるため、社員寮などの住まいを用意する場合が多い。好景気のうちは良いが、不景気になると雇用調整が行われ、大勢の派遣社員が住居を追われることになる。「低賃金で働かされたうえ、景気の調節弁として使い捨てにされた」。派遣村の失業者は負の実感を訴え、製造業派遣への風当たりは一気に強まった。

 労働側は政府案の最大の問題点として、派遣会社に登録し仕事がある時だけ雇われる「登録型派遣」の規制の甘さを指摘している。製造業派遣の一部も登録型とみられるが、製造業派遣そのものの禁止となると組織間で温度差がある。

 全労連、全労協などは積極的に「禁止」を掲げるが、連合は厚労相の諮問機関・労働政策審議会で政府案を了承した経緯がある。派遣労働者を多く抱える自動車や電機関連の労組には「禁止は逆に失業者を増やしかねない」との懸念がある。

 経営側は「派遣労働は産業人口の流動性を担保している」(岡村正・日本商工会議所会頭)などとして業種規制を強く警戒する。






■与野党、強まる対決色

 国会では与野党双方で見直し機運が高まっている。製造業派遣の再規制については、積極的な野党に対し、政府・与党は慎重だ。「雇用は次期衆院選の大きな争点になる」との政治的思惑も先行しがちで、歩み寄りを難しくしている。

 「派遣契約打ち切りの際の住宅確保などに対する派遣元と派遣先の責任を明確にすべきだ」(北側一雄・公明党幹事長)

 「北側さんの意見に賛成だ」(鳩山由紀夫・民主党幹事長)

 11日のテレビ朝日の報道番組で、民主、公明両党の幹事長の意見が一致した。与党は15日から国会に提出済みの改正案の見直しに向け、プロジェクトチームで検討に入る。民主党も、与党と一致できる点については「協議してもいい」(幹部)との姿勢だ。

 ただ、04年に解禁された製造業への派遣再規制をめぐっては、対決色が目立つ。

 民主党は慎重だったが、小沢一郎代表が次期衆院選を念頭に「与党との違いを際立たせるように」と菅直人代表代行(党緊急雇用対策本部長)に指示。製造業派遣禁止に踏み込む方向に転換した。一方、麻生太郎首相は「常用雇用は急激な景気の変化に対応しにくく、今すぐ禁止すると現にいる派遣労働者がいきなり職を失う」(10日の内閣記者会インタビュー)と慎重だ。

 方針転換した民主党内も一様ではない。トヨタ自動車出身の直嶋正行政調会長が「まずは非正規雇用者のためのセーフティーネット作りが大事」と語るなど、製造業や派遣業関係労組出身議員を中心に慎重論が根強い。

 共産、社民、国民新の3野党は99年の派遣原則自由化以前の厳しい規制を主張しており、野党が足並みをそろえるのも容易ではない。






 ◇労働者派遣法改正の経過
1986年 労働者派遣法施行。通訳など専門的な16業務に労働者派遣を認める

  96年 派遣対象業務を研究開発など26業務に拡大

  99年 製造業など一部の業務を除いて、派遣対象業務を原則自由化

2004年 派遣期間の上限を1年から3年に拡大。製造業への派遣(期間は上限1年)も解禁。禁止は建設、港湾運送、警備業務の3業務のみとなる

  07年 製造業の派遣期間の上限を1年から3年に拡大

  08年 12月に日雇い派遣の原則禁止などを盛り込んだ改正案を閣議決定





毎日新聞 2009年1月15日 東京朝刊

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