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女医4割時代へ 医療側・患者側の意識変化が必要に

2008年02月23日 | スクラップ
     (医療  医師不足  女性) 



 女性の医師が増えている。2004年時点では男性医師約21万人に対して、女性医師が約4万人と2割に満たない。だが、こと29歳以下で見ると、2万6000人中9000人を占め、既に3割を超えている。ここ数年の医学部への入学傾向を見ると、4割を超える日もそう遠くない。

 受診する側は、「同性の医師の方が相談しやすい」という女性の声や「外来で優しい印象を受ける」という意見も多く、女医が増えることを比較的好意的に受け止めているようだ。

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女医4割時代はもうすぐ

医療現場にはとまどいも

 もっとも医療機関は、女医の増加を諸手をあげて賛成しているわけではない。女性医師には妊娠・出産で休まざるを得ない時期があり、いくら男性が自宅で家事を行うようになったといっても、女性が担わざるを得ない部分も多いのが実情だ。

 一般的に出産・育児にかかる30歳代は、医師にとっても専門医を取得してひとり立ちする重要な時期。「やっと一人前になった、というところで辞められるとがっくりくる」という、ある大学講師の言葉は、医師を育てる側にとって偽りない感想だろう。

 現場では話はさらに深刻だ。連日の報道でも見られるように、全国的に病院で働く医師が足りないと言われている。少ない医師数で救急や当直までこなす状態では、女性医師が上記のような理由で休んだり、夜間の担当ができなくなってしまうとそのバランスが崩れてしまう。

 1999年に44歳の小児科医が過労で自殺したケースでも、4人いた病院の小児科医のうち、男性医師は自殺した本人1人で、当直などの業務が該当医師に負担が集中したことも原因の1つと考えられている。

 女性医師の側にも不満はある。「『2人目を生んだら医師として先はない』と言われてあきらめた」「往診を頼まれ、子供を背負ったままで往診に出かけた」「男性医師と同じように働いていても評価されない」などとの声は少なくない。

 一度は産休に入った女医も、ともすれば休職中の同僚医師へのしわ寄せを危惧して退職してしまう。出産後の復帰には保育園の確保が必須となるが、職に就いていなければ保育園に子供を入園させるのは難しく、逆に職に復帰しようとすると子供が保育園に入園していることが条件となることも多い。その保育園も、子供が熱を出すと預けられない場所がほとんどだ。

 「足りない」と騒がれている産婦人科や小児科は女性が志望する割合が高く、例えば産婦人科では30歳未満が7割近くを占めている。出産や育児を扱う産婦人科や小児科で、「子供を生むな、育てるな」というのでは悪い冗談としか言いようがない。

女医を守る動きは出てきたが…

 2006年の秋に厚生労働省から出された「医師の需給に関する検討会」の報告書では、「医師数全体の動向としては、充足の方向にあると考えられる」とされた。だが、その前提は女性医師が男性と同じように働くこと。それでも病院勤務医の数だけでみると不足すると予測されている。そのため、女医が働きやすい環境を整えることは末端の医療機関から大学、行政に至るまで、重要な課題となりつつある。

 医療機関では職員向けの保育所の設置やフレックス制度の導入が始まったほか、大学ではそれらに加えて退職した女性医師の再教育が始まっている。国や地方自治体も、再度就職先を探す女性医師に対して、パートタイムも含めて望む勤務体制を用意した医療機関を紹介する女医バンクの設置を急ぐ。

 ただし、いずれの試みもまだ始まったばかり。小規模な医療機関では保育所の設置は難しく、フレックス制度の導入は十分数の医師が確保されていることが前提にある。現場がそのような状況では、女医バンクに女性医師が希望する医療機関を十分数確保できるかどかも疑問だ。

 また、仮に十分な体制を敷くことができても、そのことで男性医師が“貧乏くじ”を引かないですむ体制を作らなければ、今度は男性医師が“燃え尽きて”しまう。女性医師の勤務体制を整えると同時に、医療機関には労働量に応じた給与体系を構築したり、医師を増やして一人当たりの業務負担を減らすなどの努力は必要になろう。

 患者側も、
(1)必要のない救急外来の受診を抑制して当直医師の負担を軽減する
(2)医師が密なスケジュールの中で診察を行っていることを考慮する
(3)病院と開業医の使い分けを意識する
などの配慮を行うだけでも現場の負担が変わることを認識すべきだ。

 医療側、患者側とも女性医師を戦力として活用するための意識変化が求められている。


(NIKKEI BUSINESS オンライン 山崎 大作=日経メディカル編集)

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