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働けど:’08蟹工船/6止 「安心」求めて団結

2009年01月31日 | スクラップ

 

小雨の中、力強くペダルをこぐメッセンジャー=東京都内で、石井諭撮影
小雨の中、力強くペダルをこぐメッセンジャー=東京都内で、石井諭撮影



■労組結成、請負契約の環境変えたい

 まず第一に、俺達(おれたち)は力を合わせることだ。俺達は何があろうと、仲間を裏切らないことだ。=「蟹工船」から

 「自転車でめしを食いたい」。上山(うえやま)大輔さん(31)は中学生の時、マウンテンバイクに夢中になって以来、そんなあこがれがあった。自転車やバイクで書類などを運ぶ「メッセンジャー」という仕事を知り、バイク便、自転車便の大手「ソクハイ」(本社・東京)に入ったのは20歳の時。何気なくサインした「運送請負契約書」に実は重要な意味があった。

 請負という形態ではメッセンジャーは個人事業主、自営業者とされる。労働基準法など労働関連法は適用されない。事故に遭っても労災保険の給付もない。しかし、午前8時半に営業所に出勤し、朝礼の後、会社の指示で荷物の集配に走る。

 上山さんが疑問を持ったのは06年、全約180人のメッセンジャーのリーダーである役職についた時だ。当時、非正規労働者の組合が生まれ、個人請負が問題になり始めた。報酬は完全歩合制だが、前年に基本歩合率が引き下げられていた。交通事故に遭い、働けずに医療費負担に耐えきれずやめた仲間も多い。「こんな働き方はおかしい」。疑問をぶつけてくる後輩たちを見て、「みんなで変えるしかない」と昨年1月に労働組合「ソクハイユニオン」を結成し、執行委員長に就いた。

 会社は「従業員としての雇用関係はない。組合活動ができるのか」と言った。それでも当初は団体交渉に応じ、「賃金体系の見直し」「労災への加入」などを要求する組合と話し合う余地があるかに見えた。

 しかし、同年12月、会社が団交に応じなくなったとして、労組は労使間の調整をする東京都労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた。上山さんは営業所長だったが、執行委員長として都労委の調査に出席した。会社は、無断で営業所を空け、呼び出しに応じないとして所長を解任。上山さんは20万円を超す役職手当を失った。この件も都労委に救済を申し立て、審査中だ。

 だが、逆風ばかりでもない。昨年9月、厚生労働省が会社から時間的拘束や業務の指揮監督を受けるメッセンジャーには労働者性があるとし、全国の労働局に通達を出した。

 上山さんたちが今年6月、労働基準監督署に3人分の労災申請を行うと、受理された。

 組合を結成し、配送先でも「頑張れよ」と声をかけられる。上山さんは「いい方に動いていると感じる」と話す。

 好きな仕事を続けたい。生活できる収入が得られ、安心して働ける職場に変えたい。上山さんと仲間に共通する思いだ。【亀田早苗】




■法逃れの手段、後絶たず

 実態は労働者なのに、請負や業務委託などの契約を結ばされるケースが後を絶たない。非正規雇用の問題に詳しい龍谷大の脇田滋教授は「究極の労働法逃れで古くから使われてきた」と言う。顧客に直接派遣される仕事で使われやすく、家庭教師派遣会社がアルバイト講師と「指導委託契約」を結ぶケースも。

 脇田教授は、契約書が「雇用契約」となっているか、残業代は出るかなどを確かめるようアドバイス。契約後なら「自分たちは労働者だと声を上げるしかない。個人が入れる組合もあるので相談して」と話す。


 

毎日新聞 2008年8月28日 東京朝刊

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