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発信箱:歴史の宣告=玉木研二(論説室)

2008年02月29日 | スクラップ

 米映画「ゴッドファーザーPART2」で、アル・パチーノ演じるマフィアの首領マイケル・コルレオーネがつぶやく。「政府軍兵士は金で雇われているのに、反乱軍は無償で戦っている。彼らが勝つんじゃないか」

 舞台は1958年末のキューバ。陽光降り注ぐホテル屋上で、バティスタ独裁政権と癒着した米国のマフィアたちがカジノ、売春、麻薬の巨大利権配分を話している。カストロ率いる革命軍が首都ハバナに迫る。政府もマフィアも「け散らせる」と問題にしない。ただマイケルは「報いを求めぬ者」の献身の戦意の高さを見抜いている--。

 果たして59年元日、現実にバティスタは大統領の座を放り出し、蜜(みつ)に群がるように集まったマフィアも政治家らも身一つで米国へ飛び帰る。

 当時32歳のカストロ、そして盟友ゲバラが最も光彩を放ったころだ。亡命先から8人乗りボートに80人余もの同志が乗り組み、荒海を渡ってキューバに上陸。交戦で大半が倒れるが、山を駆け、人民の海に潜り、ゲリラ戦に勝ち抜き、ハバナへ進撃する。

 こんな実際の革命劇が世界の若者をとらえた。自分もできると夢想する者がいた。わずかだが、武器を手に行動に出る者もいた。日本にも。悲劇というほかはない。

 そして今、南米山中のゲリラ戦に殉じたゲバラは神話に納まり、気づけば地上で独裁権力を守り抜いていたカストロは81歳で引退する。「歴史は私に無罪を宣告するだろう」と20代で投獄の時言った。かつて彼らに共鳴心酔した老いたる「チルドレン」たちは、どう宣告するだろう。




毎日新聞 2008年2月26日 0時13分

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