神の住む池
八条宮智仁親王(はちじょうみやとしひとしんのう)は、長岡天満宮をとても
崇拝していました。この美しい神社を更に美しくする為に何かをしたいと考えて
いました。それで、息子の智忠親王(としただしんのう)が1638年に神社を
取り巻く池を造りました。村人たちはこの池を造った人に因んで、八条が池
(はちじょうがいけ)と呼ぶようになりました。池はやがで村人にとって神聖な
所となりました。その池に住んでいる鯉さえ特別なもので、誰も取ろうと
しませんでした。普通の魚よりも成長が早い神の魚だと思われていたからです。
でも、ある日、淀川の漁師が八条が池の魚の成長が早いと言う信じられない
話を聞きました。ところが、欲深いその漁師は誰にも見つからないように夜に
池に忍び込んで、魚を全部取ろうと決めました。池にやってきて、静かに堤を
壊して、水が抜けるのを待ちました。水かさが少なくなり、魚が池の底で
身動きができなくなってくると、漁師は大変興奮しました。やがて、
夜明け近くなって来ましたが、村人が起きるまでには魚を全部取れると
考えていました。ところが、遠くの橋の上で白い着物を着た人が立って
いるのが見えました。漁師は見つめられて、身動きが取れなくなりました。
すると、突然、大雨が降り始めて、池の水が元に戻り始めました。元の水量になった時、
雨は止み、漁師は動けるようになりました。でも、漁師の力は全て消え失せてしまい、
座って、池を見つめるのがやっとでしたと言う伝説です。
(長岡京市の昔話より)