劇場彷徨人・高橋彩子の備忘録

演劇、ダンスなどパフォーミングアーツを中心にフリーランスでライター、編集者をしている高橋彩子の備忘録的ブログです。

METライブビューイング オペラ『リゴレット』

2013-03-12 00:48:29 | その他
映画館で上映中のMETライブビューイング『リゴレット』を見た。
演出は、ブロードウェイで活躍し『春の目覚め』ではトニー賞も受賞したマイケル・メイヤー。

本来は16世紀のマントヴァが舞台のオペラだが、
ここでは、1960年代のラスベガスに置き換えられている。
マントヴァ公はフランク・シナトラ的な人物に設定され、
第1幕では、美女に囲まれ、マイク片手に歌を披露する。
リゴレットのモデルはドン・リックルズだそうで、
渋みのある、シニカルなコメディアンぶりを見せる。
他の登場人物もラット・パック(シナトラ一家)に見立てられており、
ピーター・ローフォード、ディーン・マーティン、サミー・デイシスJr.、
サム・ジアンカーナ…といった具合に、実在の人物を参考に役柄が造形されたらしい。



メイヤーは本作がオペラ初演出。
けっこう細かいところまで芝居をつけたり遊び心を見せたりしていて楽しめる。
なお、ネオンを多用した鮮やかな美術のクリスティーン・ジョーンズ、
雰囲気のある衣裳のスーザン・フィルファティ、照明のケヴィン・アダムスはいずれも、
『春の目覚め』と同じスタッフ。“メイヤー組”で勝負に出たわけだ。

歌手陣も充実。リゴレット役のジェリコ・ルチッチは陰影に富んでドラマティックだし、
マントヴァ公のピョートル・ベチャワは艶やかな美声を生き生きと響かせる。
二人とも、芝居心たっぷりで、視覚的にも聴覚的にも魅せてくれた。
ジルダ役のダムラウは表情豊かな歌声が実に素晴らしく、また、幕間のインタビューでは、
舞台の上とはうって変わって陽気な素顔を見せ、これまたチャーミングだった。
このほか、スパラフチーレ役のステファン・コチアンは登場シーンから実にカッコ良く、
マッダレーナ役のオクサナ・ヴォルコーワは助演と言っても通じそうな脚線美を見せつけた。

名曲てんこもりのヴェルディ・オペラを堪能するうち、
上映時間3時間強があっという間に過ぎること、うけあいだ。指揮はミケーレ・マリオッティ。

それにしても、METの観客はノリがいいというか何と言うか。
いつも、演奏が終わる前からわーっと拍手する。
3幕冒頭では、トップレスのポールダンサーが登場するや沸いていて、可笑しかった。


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