◆ 車代割り勘で白タク?
~反原発ツアーの加須市職員ら逮捕 (東京新聞【ニュースの追跡】)
反原発ツアーを企画し、無許可で参加者をワゴン車に乗せて営業運行したとして、埼玉県警は先月十八日、同県加須市の市職員の男性ら三人を道路運送法違反(無許可営業・白タク)容疑で逮捕した。関係者らは「レンタカー代を割り勘にしただけ」「政府の意向に逆らう市民を狙い撃ちにした弾圧だ」と憤る。(三沢典丈)
◆ 共謀罪論議の影響
三人の逮捕容疑は、二〇一五年九月五日、無許可にもかかわらず、ワゴン車に数人を乗せ、さいたま市内から福島県楢葉町まで日帰りで往復。その際、一人当たり四千五百円を受け取ったこと。県警の発表では、三人は「中核派」という。
しかし、このツアーを知る「すべての原発いますぐなくそう!全国会議(NAZEN)さいたま」のメンバーの一人は、「ツアー当日は、福島第一原発事故による楢葉町の避難指示が解除された日。レンタカーを借りて、九人ほどで現地の実情を視察したにすぎない。
費用としてかかったレンタカー代、ガソリン代、高速代などを全員で分担したが、それは白タクとはまったく違う」と強調する。
三人の弁護を担当する西村正治弁護士も「これが罪なら、仲間うちでレンタカーを借りて出掛け、割り勘にしただけで、すべてが罪になる。めちゃくちゃな捜査だ」と声を荒らげる。
県警は昨年二月、逮捕された市民の自宅などを家宅捜索していたという。
「営業実態がないと分かったうえで逮捕に踏み切っている。三人が反原発運動をしているから逮捕したのであり、政治的弾圧だ」(西村弁護士)
同様の「事件」は二年前にも起きている。
脱原発を掲げる前橋市の市民団体「原発とめよう群馬」の中心メンバーである大塚正之さん(58)と仲間が一五年五月に逮捕された。容疑は大塚さんがスマホを取得する際、仲間に譲り渡す目的を隠して契約をしたという詐欺容疑。
だが、二人は親しい間柄で、スマホの支払いが滞ったこともなかった。
結局、十日間の勾留の後、二人は釈放され、不起訴になった。
大塚さんは「政府は、原発は安全で一切問題はないと言い続けている。私たちがそこに言い掛かりをつけていると見られ、嫌がらせをされたのだろうが、群馬県民は事故後、農産物の出荷停止などの被害を強く記憶しており、反原発の動きが歩みをとどめることはない」と断じる。
NAZENさいたまと群馬県などの反原発の市民団体は三人の逮捕翌日、警察や検察に対し、街頭でプラカードを掲げるなどして抗議活動を展開した。五日も、さいたま市内で抗議デモを実施する予定だ。
◆ 「政治弾圧」「公安のノルマ」
元公安警察官でジャーナリストの犀川博正氏は今回の事件について「政府が共謀罪の創設を目指していることが影響している」との見方を示す。
安倍晋三首相らは、共謀罪の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を成立させなければ「二〇二〇年東京五輪・パラリンピックが開催できない」と主張している。
犀川氏は「五輪開催を控え、今、絶対にテロを起こされてはならない。妥当性に大いに問題がある今回の事件は公安のおびえの表れだ」と説く。
「事件が無罪になっても逮捕が広く報じられれば、警察の威信を示したとして評価され、公安の失点にはならない。だが、こんなことをしていてテロを防げるのか」
市民団体「明るい警察を実現する全国ネットワーク」代表の清水勉弁護士は、「公安がノルマを達成するためにひねり出した事件だろう」と指摘した上で、批判の矛先を強制捜査を許可した司法に向ける。
「公安の『イベント』に付き合って、逮捕令状を出す裁判官がどうかしている。米国では、強大な権限を持つトランプ大統領の大統領令にさえ異議を申し立てる司法関係者がいるのに、日本の司法は警察の言いなり。まったくチェック機能を果たしていない」
『東京新聞』(2017年2月2日【ニュースの追跡】)
~反原発ツアーの加須市職員ら逮捕 (東京新聞【ニュースの追跡】)
反原発ツアーを企画し、無許可で参加者をワゴン車に乗せて営業運行したとして、埼玉県警は先月十八日、同県加須市の市職員の男性ら三人を道路運送法違反(無許可営業・白タク)容疑で逮捕した。関係者らは「レンタカー代を割り勘にしただけ」「政府の意向に逆らう市民を狙い撃ちにした弾圧だ」と憤る。(三沢典丈)
◆ 共謀罪論議の影響
三人の逮捕容疑は、二〇一五年九月五日、無許可にもかかわらず、ワゴン車に数人を乗せ、さいたま市内から福島県楢葉町まで日帰りで往復。その際、一人当たり四千五百円を受け取ったこと。県警の発表では、三人は「中核派」という。
しかし、このツアーを知る「すべての原発いますぐなくそう!全国会議(NAZEN)さいたま」のメンバーの一人は、「ツアー当日は、福島第一原発事故による楢葉町の避難指示が解除された日。レンタカーを借りて、九人ほどで現地の実情を視察したにすぎない。
費用としてかかったレンタカー代、ガソリン代、高速代などを全員で分担したが、それは白タクとはまったく違う」と強調する。
三人の弁護を担当する西村正治弁護士も「これが罪なら、仲間うちでレンタカーを借りて出掛け、割り勘にしただけで、すべてが罪になる。めちゃくちゃな捜査だ」と声を荒らげる。
県警は昨年二月、逮捕された市民の自宅などを家宅捜索していたという。
「営業実態がないと分かったうえで逮捕に踏み切っている。三人が反原発運動をしているから逮捕したのであり、政治的弾圧だ」(西村弁護士)
同様の「事件」は二年前にも起きている。
脱原発を掲げる前橋市の市民団体「原発とめよう群馬」の中心メンバーである大塚正之さん(58)と仲間が一五年五月に逮捕された。容疑は大塚さんがスマホを取得する際、仲間に譲り渡す目的を隠して契約をしたという詐欺容疑。
だが、二人は親しい間柄で、スマホの支払いが滞ったこともなかった。
結局、十日間の勾留の後、二人は釈放され、不起訴になった。
大塚さんは「政府は、原発は安全で一切問題はないと言い続けている。私たちがそこに言い掛かりをつけていると見られ、嫌がらせをされたのだろうが、群馬県民は事故後、農産物の出荷停止などの被害を強く記憶しており、反原発の動きが歩みをとどめることはない」と断じる。
NAZENさいたまと群馬県などの反原発の市民団体は三人の逮捕翌日、警察や検察に対し、街頭でプラカードを掲げるなどして抗議活動を展開した。五日も、さいたま市内で抗議デモを実施する予定だ。
◆ 「政治弾圧」「公安のノルマ」
元公安警察官でジャーナリストの犀川博正氏は今回の事件について「政府が共謀罪の創設を目指していることが影響している」との見方を示す。
安倍晋三首相らは、共謀罪の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を成立させなければ「二〇二〇年東京五輪・パラリンピックが開催できない」と主張している。
犀川氏は「五輪開催を控え、今、絶対にテロを起こされてはならない。妥当性に大いに問題がある今回の事件は公安のおびえの表れだ」と説く。
「事件が無罪になっても逮捕が広く報じられれば、警察の威信を示したとして評価され、公安の失点にはならない。だが、こんなことをしていてテロを防げるのか」
市民団体「明るい警察を実現する全国ネットワーク」代表の清水勉弁護士は、「公安がノルマを達成するためにひねり出した事件だろう」と指摘した上で、批判の矛先を強制捜査を許可した司法に向ける。
「公安の『イベント』に付き合って、逮捕令状を出す裁判官がどうかしている。米国では、強大な権限を持つトランプ大統領の大統領令にさえ異議を申し立てる司法関係者がいるのに、日本の司法は警察の言いなり。まったくチェック機能を果たしていない」
『東京新聞』(2017年2月2日【ニュースの追跡】)
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