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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

コロナウィルスなど感染症の拡大は、経済優先社会が引き起こした人災的要因

2020年02月17日 | 平和憲法
 ◆ 新型肺炎のパンデミックに対抗する手段はあるのか (週刊金曜日)
天笠啓祐(あまがさけいすけ・ジャーナリスト)

 感染症が猛威を振るっている。
 人間では新型コロナウイルスの感染が、動物では豚コレラが拡大、アフリカ豚コレラの侵入も時間の問題だと見られている。
 感染症は以前から猛威を振るうことはあったが、これほどまでに多様な病気が、これほどまでに頻繁に起きることはなかった。
 この数十年間を見てもエイズエボラ出血熱西ナイル熱などの新興感染症があり、今世紀に入ってもコロナウイルスの変異であるSARS(重症急性呼吸器症候群)MERS(中東呼吸器症候群)が起きている。
 人畜共通感染症として、鳥インフルエンザBSE(牛海綿状脳症)も大きな問題になってきた。
 ◆ グロバール化が広げる感染症

 なぜこのように、新たな感染症が起きてきたのだろうか。いくつかの原因が重なっているが、最大の要因がグローバル化である。
 経済第一の現代社会における貿易の自由化・促進が、物や情報だけでなく、動物や人間の行き来を拡大・加速してきた。それが病原微生物の拡大ももたらしてきた。
 地球規模で開発が進み、環境が破壊されてきたことも大きな要因の一つである。
 温暖化がウイルスの宿主となる生物に影響し、ウイルスの生存戦略に変化をもたらし、新型ウイルス誕生に寄与しているとも老えられる。
 また熱帯雨林の破壊が、エボラ出血熱やHIVのような、これまで人間環境に入り込んでいなかった病原微生物の文明社会への流入をもたらしてきた。
 BSEのように、畜産の生産効率を上げるために、草食動物である牛に肉骨粉を与えたことで広がったケースもある。
 鳥インフルエンザでは、養鶏場の大規模化や密飼いなどが被害を大きくしている。
 加えて、バイオテクノロジーの応用の拡大が新たな生物を誕生させ、それが新たな微生物誕生をもたらしていることも挙げることができる。
 遺伝子組み換え作物が新種の微生物を作り出した例を、米国パデュー大学名誉教授ドン・M・ヒューバーが指摘し、警告を発したことがある。
 また遺伝子組み換えにはウイルスがベクター(遺伝子の運び屋)として用いられており、それが一定の割合で突然変異を引き起こし、感染力を回復したり増幅することも確認されている。
 以上のように、新たな感染症の登場や拡大は、いずれも経済優先社会が引き起こした人災的要因が大きい。
 インフルエンザウイルスは、食生活と密接にかかわり、人間と鳥と豚の間を行き来しているうちに変化を起こし、時に強い毒性を持った高病原性鳥インフルエンザを誕生させ、人間にも大きな被害をもたらしてきた。
 今回の新型コロナウイルスの誕生や拡大もまた、中国の食生活と密接にからんでいると考えられる。
 ◆ 新型コロナウイルスはウイルスの生き残り戦略

 コロナウイルスにはこれまで6種類が知られていた。
 通常の風邪を引き起こす4種類と、新型と呼ばれたSARSとMERSである。
 そこに今回の新型コロナウイルス(2019-nCoV)が加わった。
 ウイルスの変化は、ウイルスの側から見ると生き残り戦略に当たる。それが時には強い毒性を持った新型ウイルスに変化するのである。
 グローバル化を前提にしている以上、今回のような新型ウイルスによる感染症拡大は繰り返し起きることになる。事実、繰り返し起きてきた。
 同じ微生物でも、細菌に対しては抗生物質が有効であるが、ウイルスには特効薬がない
 人間に感染するウイルスの大敵は、人間の免疫力である。
 ウイルスに対する抗体ができれば、感染することができなくなる。
 そのためワクチンによって事前に免疫力をつけることが有効な対応策ではあるが、ワクチンには必ず副反応があり、時には被害の方が大きいこともある。
 新型コロナウイルスの持つもう一つ大きな特徴が、遺伝子にRNAをもつ、RNAウイルスである点にある。
 ウイルスにはDNAを遺伝子にしているものと、RNAを遺伝子にしているものがある。
 コロナウイルスのようなRNAウイルスの特徴は、変化が起きやすいため新型ができやすく、しかもワクチンが作りにくい点にある。
 ワクチンを開発しても、すぐウイルスの側が変化を起こしてワクチンを無効にしてしまうからだ。
 なぜ変化が起きやすいかというと、DNAは2本鎖であるのに対して、RNAが1本鎖である点にある。
 2本鎖の場合、片方が変化を起こしても相方が修正して元に戻すことができるが、1本鎖の場合、その相方がいない。突然変異を起こすと、それがそのまま受け継がれていく。ウイルスは生き残り戦略をかけて変化するが、その変化がそのまま受け継がれてしまうのである。
 それが新型コロナウイルスをもたらし、時にはその変化が感染力や病原性の強いものを生み出す。
 ◆ 免疫力アップが唯一の自衛策

 この感染症との闘いに、人間は自身の免疫力以外に勝つことはできない。
 そのため被害は、体力のないお年寄りや免疫システムが未発達の赤ちゃんや子ども、あるいは疲労して体力が弱った人などに集中する。
 健康な大人であれば、いたずらに恐れる必要はない。

 また通常のマスクはウイルスの小ささに対応できず、通過してしまう。
 しぶきを飛ばしウイルスを拡散するのを防ぐことはできるため、拡散防止には役立つものの、自分を守ることはできない。
 現代社会が経済を優先し、グローバル化を推し進める以上、拡大を止めることはできない。これからも新型のウイルス登場によって、人間社会は脅かされ続ける。
『週刊金曜日 1267号』(2020年2月7日)

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