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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

裁判官の憤りがこもった袴田事件 静岡地裁再審決定書

2014年03月29日 | 平和憲法
  《江川紹子さん寄稿 【東京新聞朝刊】》
 ◆ 捏造疑惑誠実に対応を


 これほどまでに、裁判官の憤りがこもった書面を読んだことがない。その怒りのほどは、たとえば次のような表現からうかがえる。
  〈刑事司法の理念からは到底耐え難い〉
  〈耐え難いほど正義に反する〉
 決定書によれば、DNA型鑑定の結果と、証拠開示によって明らかにされた袴田巌氏に有利な証拠の数々で、裁判官たちは無罪を確信したことがうかがえる。
 そして、有罪の決め手となった重要証拠は、警察が捏造した以外に考えられないと、これも確信に近い疑いを持ったようだ。検察官が捏造疑惑を「空想の産物」とこき下ろすのを、決定書は「あり得ないなどとしてその可能性を否定することは許されない」と強い論調で批判した。
 捏造された証拠によって、間違った裁判が行われ、その結果、重大な人権侵害が起きている。それが見えてきたことで、裁判官の正義感に火がついたのだろう。
 疑惑を向けられているのは警察だけではあるまい。
 証拠隠しを続けてきた検察にも、捏造の隠蔽に加担したのではないかとの疑念が生じている。向けられた疑惑に、検察は誠実に対応しなければならない。
 異議申し立てをするなどして、これ以上確定判決の死守に汲々としたり、先輩たちをかばい立てたりするのではなく、今なお隠している全証拠を開示し、真相解明に協力する。これが、「公益の代表者」として検察がなすべきことだろう。
 証拠改ざんの不祥事が発覚後、検察は改革の一環として、倫理規定「検察の理念」を自ら策定した。その中に、次の一文がある。
 〈権限行使のあり方が、独善に陥ることなく、真に国民の利益にかなうものとなっているかを常に内省しつつ行動する、謙虚な姿勢を保つべきである〉
 本件に関わる検察官は、あらためて熟読してもらいたい。

 また、裁判所にしても、もっと早く証拠開示が実現できなかったのか、なぜ捏造が見抜けなかったのか、という点について検証や反省は必要だ。
 それを現在行われている法制審議会特別部会の議論にも生かし、早い段階から全面的に証拠開示を行う制度へと変えていくべきだろう。
『東京新聞』(2014/3/28【朝刊】)

※「検察の理念」(東京高等検察庁HP)
http://www.kensatsu.go.jp/kakuchou/h_tokyo/img/rinen.html
※日本語版
http://www.kensatsu.go.jp/oshirase/img/kensatsu_no_rinen_japan.pdf
※英語版-The Principles of Prosecution
http://www.kensatsu.go.jp/oshirase/img/kensatsu_no_rinen_english.pdf
※仏語版-Principes du ministere public
http://www.kensatsu.go.jp/oshirase/img/kensatsu_no_rinen_french.pdf
※独語版-Die Prinzipien der Staatsanwaltschaft
http://www.kensatsu.go.jp/oshirase/img/kensatsu_no_rinen_germany.pdf
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